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最弱属性魔剣士の雷鳴轟く  作者: 相鶴ソウ
第一章 学園編

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24話 〈術式解除〉

「お疲れ様、クロト」



 医務室に向かうと、ガイナ、レイグ、マナが寝かされており、その三人を看病するように傍らにはイザベラさんが立っていた。



「イザベラさん!」


「アラン達、龍騎士団(ドラゴン・ナイツ)は運営に。私達、天馬騎士団(ペガサス・ナイツ)は裏方の補助に回ってるの。私は医務室担当なのよ」


「三人の様子はどうですか?」


「不思議なほど綺麗に気絶させられてるわね」


「綺麗な気絶……?」


「学生同士の戦いってね、実戦を知らない子同士の戦いだから命に関わるような怪我のさせ方をしちゃう事もあるのよ。勿論アランが審判兼止め役も担ってるから、実際に何かあったって事はこれまで無いんだけど、こんな余計な怪我も無く戦闘不能に追い込むのってそんなに簡単な事じゃないのよ。対戦相手のレベルの高さがうかがえるわ」



 シリウスチームのリアって言ったか。確かにあの強さは異常だったな。三人がかりで倒せないんだから、俺やエヴァも危なかったのかもしれない。



「試合は見てたわよ。いい戦いだったわ。エヴァちゃんが作戦を立てたって聞いたわ、将来は智将なんて呼ばれちゃうかもね」


「兵士になるかはわからないですけど……」



 えへへと嬉しそうに笑うエヴァは満更でも無さそうだ。



「さてと、二人の具合も診ちゃうわね。明日が本番だもの、しっかり準備しないとね!」


「はい! よろしくお願いします!」



 イザベラさんの治療を受け、目を覚ましたガイナ達とお互いを労い、隣の部屋で治療を受けていた人魚の涙(マーメイド・ティア)の面々と健闘を称え合った。

 正直この時は楽しいが勝ってて、明日への不安なんて微塵も感じないほどだった。





「ふぅー……」



 闘技場へと続く廊下。そこで五人共が準備を整え、開戦の時を待っていた。言葉は無く、全員が全員、集中力を高めている。作戦は死ぬほど考えた。それが通じるのかどうかはやってみないとわからない。特訓も吐くまでやったんだ。準備を怠ったつもりは無い。大丈夫、俺達なら……



「勝てるよ、クロト」



 エヴァが声を掛けてくれ、ずっと地面を凝視していた目線を上げる。

 エヴァだけじゃない。ガイナも、マナも、レイグも。大丈夫だと背中を押してくれるように頷いている。



「さ、呼ばれてるよ! 行こう!」



 仲間と足を揃えて闘技場へと足を踏み込む。

 視界が一気に明るくなり、会場を埋め尽くす観客の数と、轟く声援に昨日とは別次元だなと実感する。それもこれも、イーニアスの効果だと思うと少し腹は立つが、この試合が終わる頃にはこの声援は全て俺達の物になっているんだ。そう考えると、悪い気分はしないな。

 イーニアス達は既に闘技場内に入場していて、俺達を待ち構えていた。



「来たね、クロト。……それに悪魔とレイグ」



 私達も居るんですけど! と、マナは憤慨しているが……

 イーニアスとちゃんと対面するのは入学してすぐの時に揉めて以来だ。結構久しぶりだが、あんまり変わって無さそうだな。



「まさか君達がここまで勝ち上がってくるとは思わなかったよ。シリウス君のチームにはエルスティア伯爵家の子も居たはずだしね」



 ここでもリアの話か。そう考えると本当にすごい人だったんだな。



「でもここに立っているのは俺達だ。イーニアス、入学の時の事を覚えてるか?」


「勿論だよ。あの時の君からは鮮明なほどに強い意志を感じたからね」


「その時に、エヴァに言った言葉を覚えてるか?」


「いや? 君が鮮烈過ぎて、そこまでは記憶に残ってないね」


「……そうか。『彼女は悪魔だ』、『……チームなんて組んだら君や君の仲間まで死んでしまうよ』だ。でも、今ここに俺達はチームとして、仲間として協力し、戦って勝って、そうしてお前の前に立っている」


「……ああ、そうだね」


「俺達が勝ったら、エヴァに悪魔と言った事を謝ってもらう」


「君達が勝てるとも思わないけど、いいだろう。……勝負を始めよう」



 アラン団長の毎回恒例の説明を挟み、俺達はそれぞれ位置に着いて試合開始の合図を待つ。



「あんなに意地にならなくてもいいのに……でも、ありがとう。嬉しいよ、クロト」



 エヴァが小声で俺に話しかけ、俺も黙って頷く。この勝負は、勝たなきゃいけない理由が多い。俺が強くなる為、この化物チームに勝ちたい。エヴァを悪魔と呼んだ事を訂正させたい。皆と一緒に、こいつらに勝利した姿が見たい。

 どれもこれも俺の勝手な願望だけど、絶対に勝ちたいって、心の底から思うんだ。



「試合……開始ィッ!!」



 アラン団長の合図で試合が始まる。俺達はイーニアス用に考えた布陣を展開し、攻撃に備える。昨日と違って人数は同じで、無理に攻勢に出る必要も無い。だが、人理限界の物量なんて受け切れるわけはない。防戦一方も避けなきゃいけない。



「皆、頼むぞ!」



 ガイナが最前線を務め、エヴァ、マナが両翼を担う。その中心にはレイグがどこにでも補助出来るように準備万端で構えている。その後ろには俺が。これで作戦通りなら受け切れるはずだ。



「アース、いつも通りだ。クロト達がこれを越えてこれないなら、それまでだ」


「了解」



〈土術 大地崩壊〉



 アース。イーニアスのチームで最も身長が大きく、強力な範囲攻撃を持つ。人理限界は『大地との融合』であり、地面がある場所ならどこでも発動出来る。融合出来る範囲は決まっているが、土術の威力、範囲を大幅に上昇出来る他、本体を融合した大地のどこにでも設定する事が出来る。倒す手段が最後の最後まで確定しなかった男だ。



 アースの発動した土術は大地震を起こし、俺達の陣形を大きく揺さぶる。これに関しても対策法は思い付かなかった。だから、もう諦めた。これに関しては受けるしかない。

 ここまで強力ではないが、ガイナも小さな地震ぐらいは起こせる。なので、俺達四人はその地震の中で魔術を発動出来るよう、ある程度は訓練してきた。

 そして問題なのは次。



「アイズ」


「……」



〈水術 大瀑布〉

〈爆炎術 炎怨龍鬼桜(えんおんりゅうきろう)



 やっぱり定石で来た。ここを当てられるかどうかが勝負の鍵だった。

 アイズは両手から炎と水の魔術を発動させる。大質量の水が押し寄せ、上空からは炎の龍が獲物を求めて飛んでいる。



「ガイナ!」


「わーってる!」



〈土術 羅生門〉



〈結界術 展開防御壁・二〉



 ガイナが土を盛り上げて壁を作り、その両側を補強するようにマナが結界術を展開する。この結界術はイザベラさんが見せてくれた聖域(サンクチュアリ)と同じように魔方陣が展開され、膨大な質量を誇る水術を俺達から守ってくれる。

 俺達を纏めて飲み込むほどの規模があった水術は羅生門と結界に阻まれ、二手に分かれて俺達の後方へ流れていく。これで水術の対処は完了。残るは上から俺達を狙っている炎の龍。



〈雷術 雷砲〉



〈氷術 氷の大砲(アイス・キャノン)



〈水術 水鉄砲〉



 俺とエヴァ、レイグが同時に魔術を発動し、アイズの炎術にぶつける。三人がかりの攻撃でやっと相殺に至り、イーニアスのチームで最も強力な魔術使いの初撃を耐えきったという事になる。

 一昨日の試合ではすぐに決着がついてわからなかった情報だが、アースの〈大地崩壊〉もアイズの〈大瀑布〉も、効果時間はあまり長くない。イーニアスの定石を打ち破った今、力比べに持ち込む事が出来る。



「よし、反撃を……」



〈術式解除〉



 突然視界が真っ黒に染まり、上下左右の間隔が曖昧になる。

 この攻撃は恐らく四人目の皇子直属の護衛、ヨルの人理限界。闇属性を持つ少女で、人理限界『術式解除』は魔術の「術」の部分を解除、つまりは排除し、闇という純粋な性質を引き出せる。それは、人理限界であると同時に人類の築き上げて来た魔術と言う文化の完全否定だとレイグは言っていた。

 フロリエルが使ったような〈衝撃(インパクト)〉や〈破壊(ディストラクション)〉のような性質を持たない純粋な闇は、目くらましという活用法から、闇に沈め、一人を完全に孤立させるという搦め手にまで使える。そしてレイグが言っていたこの闇の最も脅威である部分は、人間の五感を殆ど機能させなくする事が出来るという点。おまけにヨルはこの闇の中を自在に移動出来る。もしこれが実戦ならば、次の瞬間ナイフで心臓に刺されて殺されてもおかしくはない。



『じゃあそんなの対処のしようがないんじゃないか? 闇の中でヨルを捉えられるのか?』


『別に実体を消せるわけじゃないから、可能か不可能かで言えば勿論可能だよ。でも、アースの本体の自由設定のように、ヨルの闇は複数個所で出した場合、闇の中が繋がるという特性を持っている。簡単に安全圏に逃げられてしまうだろうね』



 作戦会議でレイグが共有したヨルの情報に、俺達は頭を抱える事になった。超技能を持つパトリックや、エヴァのように二属性を持ち、更に同時に発動出来るアイズ、魔術の威力と範囲を大幅に強化出来るアースに比べて、このヨルの人理限界は魔術と言う枠組みから外れてしまっている。



『言うなれば、ヨルだけが干渉出来る別空間に飛ばされるようなものだ。無理に出ようと足掻いても、その足掻きに合わせて闇を膨張させれば出る事は不可能。かと言っても外からの干渉は闇に引きずり込まれて、ミイラ取りがミイラに。ってね』


『本体を叩くしかないのか?』


『ヨル自身が気絶すれば闇は自動的に消滅し、中に囚われていた人も吐き出される。有効な手だけど、ヨルはこの人理限界とずっと向き合って来ている。当然僕達の攻撃が当たる所で姿を出したりはしないだろう』


『ほんとに強すぎじゃねーか! これで初手に全員闇の中でおしまいか?』


『それはどうかな? 確かに私達全員を閉じ込めたらかなり有利になるとは思うけど、ヨルって子は決定打に欠けるからナイフを武器として使うんでしょ? てことは闇の中で味方を有利に出来ない以上、全員を闇に入れたら逆に向こうも勝負を決めれなくなっちゃうんじゃないかな? 試合って形式上、殺すわけにもいかないだろうし』


『エヴァリオンの言う通り、この試合において最も有効な使い方はやっぱり分断だろうね。相手から見て最も厄介な者を一人戦場から消せるとしたら、計り知れない恩恵になるからね』


『レイグ、そろそろ教えてくれない? 勿論対処法がわかってるんでしょ?』


『単純ではあるけど、この中で出来るのは多分クロトとマナだけ。もし他の三人が対象になった場合は、クロトかマナが闇に飛び込んで助けるしかない。で、その方法だけど……』



 この闇の中でヨルの識別も、捉える事も俺達では出来ない。だが、この闇そのものへの対処法ならちゃんと用意してきた。



「集中しろ……」



〈雷術奥義 雷化・天装衣(ラスカディグローマ)

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