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最弱属性魔剣士の雷鳴轟く  作者: 相鶴ソウ
第一章 学園編

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23話 氷の姫vs人魚の涙

「試合、開始!」



 アラン団長の合図と共に両チームが一斉に動き出す。

 こちらの作戦は至ってシンプル。斧と大剣を使うガイナ、レイグを前衛とし、後衛にエヴァ。更にその後ろに俺とマナが布陣する。マナは唯一の光属性なので、むやみに前線には出さず、チームの要として最後尾に置いている。

 相手のチームの情報はあまり無い。名前、使う武器、魔術の属性ぐらいは共有されているが、実際に戦いを見るのはこれが初めてになる。どんな戦術を使って来るのかまでは情報が手に入らなかった。



「アレックス、前衛の二人を相手してくれ。フィオナ、カイル、エリナは本陣の守りを固めつつ、前衛の補助。リアはアレックスの後ろに付いて臨機応変に対応してくれ」



 シリウスの素早い指示で各員が動き始める。アレックスは赤髪のアフロで、両手に斧を持っており、明らかに前衛タイプ。フィオナと呼ばれた少女は自身の身長以上もある大盾を装備しており、恐らくはシリウスを守る最後の砦だ。カイルが弓を使う遠距離担当。エリナはうちのマナと役割は同じだろう。あのチームの要とも言えるので、早くに倒せれば勝利に一気に近づける。そして最後のリアは槍を使う前衛タイプ。

 シリウスの作戦はリーダーであるシリウスを守りつつもアレックスとリアの二人の前衛でこちらを迎え撃つというものだろう。



「エヴァ!」


「わかってるよ」



〈氷術 氷の雨(アイス・レイン)



 開幕、エヴァが大技を惜しみなく発動し、空から降り注ぐ氷柱の雨を発生させる。これにより範囲内に居るシリウスたちは防御を余儀なくされ、こちらへの攻撃にまで手が回らなくなるだろう。その隙にガイナとレイグはアレックス、リアの両名を止める為、一気に前線に駆け上がる。

 本来ならこちらも守りに入り、相手を迎え撃つ作戦を取りたいが、数的不利で籠城戦は危険すぎる。ここは一か八かでもガイナとレイグに道を切り拓いてもらうしかない。



「カイル、アレックスに向かう氷を射貫けないか?」


「無茶言うなよ。俺の射撃制度じゃアレを全部打ち抜くなんて無理だ」


「仕方ないか。なら術者を止めよう」


「はいよ」



 フィオナの盾と、エリナの結界術で氷の雨(アイス・レイン)を防ぎながら、カイルが矢を番えて後方のエヴァに狙いを定める。



「アレックス、私が氷は何とかする。お前はそのまま突っ込め!」



 リアは人間にそんな動き出来るのか?と疑いたくなるほど機敏に動き、アレックスに当たるであろう氷柱を的確に槍で捌いていく。アレックスもリアを信頼しているらしく、一切上の様子を気にせずにガイナ、レイグと肉薄する。

 三人が衝突し、ガイナとレイグは猛攻を仕掛ける。しかし、アレックスは両手の斧でそれを完璧に受け切り、二人の同時攻撃を完全に捌いている。



「私も出るね」



 エヴァに魔力の大量消費を伴ってでも開幕で氷の雨(アイス・レイン)を使ってもらったのはこの術は発動後も効果が残るからだ。最初に込めた魔力分の雨が降り注げば術は終わってしまうが、それでも相手に負荷をかけ続けられるというのはアドバンテージに成り得る。



〈氷術 氷の弾丸(アイス・バレッド)



 いくつかの氷柱を出現させ、そのままアレックス目掛けて発射される。氷柱は綺麗にガイナとレイグを避けてアレックスを狙うが、アレックスに到達する前に全ての氷柱が砕け散る。



「あの槍使いが厄介だな。エヴァの氷の雨(アイス・レイン)を捌きながら今の攻撃にも対応してくるか……」


「エヴァ! クロト!」



 マナに思いっきり引っ張られ、首が閉まりながらも後ろに倒れると、さっきまで俺達の立っていた場所に矢が突き刺さっている。シリアスの近くでずっとこちらを狙っていたカイルの仕業だ。



「ガイナ、合わせてくれ! バラバラに戦ってもこの布陣を崩せない!」


「お前が合わせろ!」


「全く……仕方ないな」



 徐々にガイナとレイグの息が合ってくる。最初はアレックス一人に捌かれていた二人の攻撃も、段々と連携が取れはじめている。

 恐らくこのチームで最も強いのは槍使いのリアだ。アレックスの補助に徹しているとは言えエヴァの攻撃を完全に防いでくる。もし攻勢に回ってくれば脅威になる。であればアレックスに苦戦している今は最も避けないといけない状況だ。



「作戦の第二段階に移ろう。クロト」


「ああ、そうだな」


「カイルの攻撃は私がどうにかするから、クロトは何も心配しないで作戦通りに」


「ああ、頼んだ。エヴァ」


「マナちゃんもお願い。あの二人と一緒にリアの相手をして欲しい」


「わかったわ」



〈雷術 雷装衣〉



 雷装衣を発動し、雷を纏う。テンペスターを抜き、ここでようやく俺も攻勢に出る。

 俺がガイナ、レイグと共に前線に出なかったのはこのチームで最も瞬間火力が出るのが俺だからだ。前線で消耗しながら戦ってはじり貧になってしまう。なら、ここぞという時まで温存し、俺自身が突破口になるほうが有効的だ。



「ガイナ、レイグ! 横に飛べ!」



 ガイナとレイグには既に作戦の第二段階は説明してある。俺の合図で一時的に戦線から離れてもらう事になっている。しかしこの場合厄介になってくるのは……



「アレックス!」



 突然二人が退いた事で状況が読めなくなったアレックスは茫然としており、そこに俺が一直線に突っ込んでいく。それを邪魔するようにリアが立ち塞がり、カイルの援護もあって俺はアレックスに近づけない。やっぱり俯瞰的に戦場を見ているこの二人には俺の奇襲は簡単に対応されてしまう。



〈氷術 氷の盾(アイス・シールド)



 エヴァが出現させた氷の盾が俺の目の前で展開され、カイルの矢から守ってくれる。同時にリアと俺の間に障壁を隔て、一瞬ではあるが視界を遮る事が出来る。

 リアはこの状況が不味いと悟り、すぐに氷の盾(アイス・シールド)を槍の横薙ぎで砕き、俺に狙いを定める。しかし、その時既に俺はそこには居ない。雷装衣は俺に雷の属性を付与する。それには様々な恩恵があるが、その一つは雷の速度の付与だ。当然雷と同じ速度、つまりは光速に達するわけでは無いが、それでも俺の速度は著しく上昇している。

 過信は当然出来ない。速いと言っても肉眼で捉えられないわけじゃないし、対応される可能性は十分ある。それを補うのがエヴァの氷の盾(アイス・シールド)。一瞬であるが俺が視界から消え、そして目の前に現れた氷を無視出来ない。



〈雷帝流 雷鋼剣〉



 アレックス、リアから見て右斜め後ろへと移動し、そのままアレックス目掛けてテンペスターを振るう。完全な奇襲にアレックスはおろかリアすらも対応出来ず、俺の攻撃は見事にアレックスを斬り裂き、そのまま戦闘不能にまで追い込む。



「く、おのれ……ッ!」



 リアが俺に狙いを定めようと振り返るが、そこへガイナとレイグが再び攻撃を仕掛け、リアはそちらの対応をせざる得なくなる。

 このままここでリアを倒せれば、もうシリウス達に勝ちの目は無くなるだろう。



「……ッ!」



 何かが空を切る音が聞こえ、ほぼ反射的にテンペスターを後ろに向けて横薙ぎに払う。激しい金属音が鳴り、テンペスターによって弾かれた矢が宙を舞う。リアに集中はさせてくれないって事か、シリウス。



「クロト! 私と一緒に一気に本陣まで! ガイナ、レイグ、お願い!」


「おうよ!」



 現在リアの精密過ぎる槍捌きに、ガイナもレイグも翻弄され、マナの回復と結界が無ければ勝負はすぐについていたかもしれない。エヴァの氷の雨(アイス・レイン)も丁度効果が切れ、アレックスもやられた為にリアは補助ではなく完全な攻勢に出ている。かなり危険な相手だが、ここは三人に任せよう。



「彼女は強いだろ?」


「ああ、何者なんだ?」



 俺とエヴァは初期位置から動いていないシリウスの所まで辿り着く。シリウスは勿論の事、正確な狙撃で常にこちらに圧力を掛けて来たカイル。そしてシリウスを守るフィオナとチームの要であるエリナ。この四人を同時に相手するのにエヴァと二人と言うのはかなり危険だが、リアがこちらに駆けつけてこないように、一対三で足止めする状況は必須だった。



「彼女は皇子直属の護衛に選ばれる可能性があったエルスティア伯爵家の一人娘でね。人理限界持ちがこの年にこんなに居なければ、選ばれたのは間違いなく彼女だったと言われてるよ。まぁ彼女曰く、そんなのに選ばれるくらいなら死んだ方がマシだと言っていたけどね」



 おいおい、酷い言われようだなイーニアス……と、少し同情しそうになるが、まぁイーニアスだししょうがないかと思い直す。



「どおりで強いわけだ。そんな話を聞いたら、尚更こんな立ち話をしてる場合じゃないな。マナ達の為にも、さっさとお前を倒してこの試合を終わらさせてもらうぜ」


「二人で挑んでくるだけはあるな。だが、リーダーは俺達が全力で守らせてもらう」



 カイル達がシリウスの前に出て、守りを固める。



〈雷帝流 稲妻剣〉



 テンペスターに雷を流し、シリウスに斬りかかる。が、フィオナの大盾に阻まれ、テンペスターはシリウスに届かずに止まってしまう。



「私達のリーダーには手出しさせないよ」



〈聖術 聖なる一撃(ホーリーロッド)



「うちらにたった二人で挑んできたのが間違いだね!」



〈雷術 雷拳〉



 エリナの持つ杖に聖なる光が付与され、そのまま殴りつけてくる。それを雷拳で受け止め、稲妻剣と雷拳で両手を塞がれる。



「射貫く!」


「させない!」



〈氷術 氷の大砲(アイスキャノン)



 カイルの矢とエヴァの氷の塊がぶつかり合い、それを合図に俺達も力の拮抗が崩れて両チームともに後方に下がって睨み合いが始まる。



〈雷術 雷砲〉



 両手を向かい合わせにして雷丸を生成し、雷砲を発射する。シリウスを狙ったものだとフィオナが判断し、シリウスを守る様に大盾を構えるが、雷砲の軌道はシリウスよりも少し下を狙っており、大盾には届かず、直前の地面に着弾して砂煙を巻き上げる。



「勝負を決める」



〈黒帝流 打上剣狼〉



 砂煙の中を一直線に進み、視界が塞がってろくに状況も読めていないフィオナが構える大盾の下にテンペスターをねじ込み、力の限りで上に跳ね上げる。しかし、フィオナの身長以上もある巨大な盾を吹き飛ばせるほどの力は出なかったので、上に跳ね上げるのみに留まる。

 だが、盾が持ち上げられ、生身を晒したのは致命的だろう。



〈雷術 雷拳〉



 「ごめんな」……心の中で謝罪ながら、フィオナの腹に全力の拳を叩き込み、そのまま吹き飛ばす。これでシリウスチームの盾は戦闘不能だろう。そして盾の向こうに居るのはシリウス。周囲の状況は砂煙でわからないが、目の前にシリウスが居るのは見える。あの盾のおかげでこちらにまでは砂煙が及ばなかったんだろう。



「勝負だ、クロト!」


「望むところだ」



〈雷帝流 稲妻剣〉



〈神明流 同力剣〉



 二人の剣がぶつかり合い、力が拮抗する。神明流は相殺や受け流しを得意とし、相手の力を利用して斬る技が多い。故に勝負は常に受け身で自分から攻撃するのは苦手なはずだ。つまり、勝負のタイミングや、技の選択が出来るこちらが有利。この程度の実力帯なら特にな。



〈黒帝流 絶剣狼〉



「……クッ! カイル! エリナ! そっちはどうなってる!?」



 俺の攻撃に技を合わせる事が出来ず、シリウスは技の威力にジリジリと後退させられる。砂煙も収まり、周りの状況が見えてくるが、これは……



「リーダー、すまない……」


「……うちらじゃ敵わないよ」



 カイルとエリナは体が氷漬けにされており、既に勝負ありと言ったところか。



「まさか、ここまで強いなんてね……」


「まぁな」



〈雷帝流 雷鋼剣〉



〈神明流 剣流し〉



 俺の上から叩きつける雷の斬撃を、刀身の上を滑らせる事で受け流される。だが、相殺や受け流しは神明流使いと戦う上で当然警戒している。だから、この技自体がブラフ。本命はこっち。



〈雷術 雷拳〉



 全力の拳をシリウスの腹にねじ込み、残った全魔力を爆発させる。

 イザベラさんの聖域(サンクチュアリ)を破ろうとした時も使った手法だが、雷拳の様な術なら発動後に魔力を込めて爆発させるという二段攻撃も出来る。まぁ、殆どの魔力を持って行かれるからむやみやたらには使えないがな。



「やったね、クロト」


「ああ!」



 シリウスはそのまま意識を失い、リーダーが戦闘不能になった事でこの試合の勝敗が決まる。



「間に合わなかったか。強いんだな、お前達は」



 背後から声が聞こえ、振り返るとリアが居た。……いや、待てよ。リアが居るって事は、ガイナ達は負けたって事か……?

 可能性はあるかもと思ってたけど、三人がかりで勝てないってどれだけ強いんだ。



「お互い、ご苦労さん。試合はこれで終わりだ。勝者は氷の姫(イエロ・プリンセッサ)。エルスティアがもう少し早く到着していたら、結果は変わってたかもな」



 アラン団長がやってきて、正式に試合が終わりを迎える。



「これから怪我人を運び出す。お前達は自力で歩けそうだし、自分達で医療室に行ってくれ。ほんじゃ、頼むぞ」



 勝利の余韻も無く、そのまま医療室に向かってその日は終わってしまう。

 明日はいよいよ決勝戦。イーニアスのチームと戦う事になる。これまで以上の激戦になるはずだ。しっかり準備はしないとな。

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