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最弱属性魔剣士の雷鳴轟く  作者: 相鶴ソウ
第一章 学園編

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18話 魔族

 俺の放った雷槍はバチバチと音を立てながら結界に衝突したが、向こう側には貫通する事は無く、衝突と同時に一際大きく轟音を響かせて爆散した。一直線に放たれた火柱も同じく結界を打ち破る事無く衝突し、そのまま霧散。

 一つの結界に二つの魔術がぶつかった衝撃波は凄まじく、辺り一帯が砂煙に覆われる。



「な、なんだ……」


「うわぁ、目に砂が……」


「え、え?」



 周りにいた生徒たちは砂煙を予測出来ずもろに食らっていた。



 砂煙が少しずつ収まり、俺を含めて三人のシルエットが露わになる。

 俺とアイリーンの間に割って入った人物の髪は綺麗なエメラルドグリーンで、腰には薔薇の装飾で飾られた剣。全身に纏った白い鎧と赤いマントにはペガサスが描かれている。



「き、貴様は……」


「イザベラさん!?」


「ふふ、久しぶり……でもないか」



 そこに居たのは俺の恩人であり師匠でもあるイザベラさんだった。ほんの短い間しか離れていなかったとは言え、かなり久しぶりな気がする。



「また腕を上げたのかしら? 良い威力を出せるようになってきたわね」



 イザベラさんが俺の方を向いてニコッと笑顔を向ける。そして背後に居るアイリーンに向き直る。



「さてと、アイリーン。さっきクロトとエヴァリオンさんは魔術学科を受ける資格が無いと言ったけど、学園側から許可はちゃんと出てるわよ? でなければここには居ないもの」


「くっ……だったとしてもだ! 雷属性(最弱)と悪魔に教える事など一つもない」


「俺も、あんたから教えてもらう事なんて一つもない。行こう、エヴァ」


「う、うん」



 俺は売り言葉に買い言葉で突っぱねると、エヴァと共に第二演習場から出ようと出口に向かう。折角仲裁してくれようとしたイザベラさんには申し訳ないが、もしアイリーンが折れて渋々了承したら、それはそれで頭に来る。

 スタスタと出口に向かう俺とエヴァの後ろから、駆け足のこちらに向かってくる足音が聞こえ、振り返ると後ろからマナ達が追いかけて来ていた。



「私達を置いて行かないでよ。仲間でしょ?」



 三人共口々にアイリーンの悪口を言いながら、五人で一緒に第二演習場を後にする。仲間達の存在に感謝しつつ、俺達はそのまま学園を出る。決してプラスに働く出来事ではなかったのだろうが、演習場を出るときの気持ちは清々しく、この先に起こるであろう不利益すらもどうにか出来る気がした。きっと四人が一緒に居てくれるおかげだろう。仲間とは、不思議な存在だなとしみじみと噛みしめる。



「クロト、顔がお爺ちゃんみたいだよ」



 エヴァがツッコミ、みんなが笑う。そういえばイザベラさんには何も言わずに来てしまったが、よかったのだろうか。今から演習場に戻るわけにもいかないし、後で家まで尋ねてみようか。

 そんな事を考えつつもしばらく黙々と歩いた後、マナが話し始めた。



「はぁ、それにしても、真っ向から反抗するなんてどういうつもりよ」


「な、何だよ急に……さっきの感動的な感じはどこに行ったんだよ」 


「冷静に考えると、って事よ」


「いいじゃねぇか。その方がおもしれぇ」


「面白くはねぇよ。しかし皆は良かったのか? 学園で一切魔術を学べないなんて、周りから大きく離される事になる」


「私は……まぁなんとかするわ」


「俺は問題ねぇよ。元々親父にだいぶしごかれてたからな。今更あんな高慢女に習う事もねーよ」


「僕も大丈夫だ。ずっとイーニアスを護衛するために訓練していたからね」


「そうか、ありがとうな。……で、これからどうする? 午後からはいつも通り総合学科があるから午前中時間を潰さないと」



 四人の頭から?が出てくるのが目に見えるようだ。そんな顔してる。



「ふふ、あんなに真っ向から啖呵切って出て行ったのに、その後の事を何も考えてなかったの?」



 不意に後ろから話しかけられる。



「イザベラさん!」


「私がせっかくフォローに入ったのに、そのまま出て言っちゃうなんて……ま、積もる話もある事だし、とりあえず私の家にいらっしゃい。そこで話しましょ」



 心の中でごめんなさいと謝りつつも、イザベラさんの後に続き、イザベラさんの家へ向かった。





「さて、ガイナ君にマナちゃん、エヴァリオンさんとレイグ君ね。私は天馬騎士団(ペガサス・ナイツ)、団長のイザベラよ。クロトがお世話になってるわね」



 イザベラさんが四人に挨拶すると、四人もそれぞれ挨拶を返す。四人の表情がどこか不思議そうで、どうしたのかと首をかしげると、レイグが痺れを切らしたように切り出す。



「その、どういったご関係で? 初対面と言う感じはしませんが、僕達の事も知っているようですし……」


「ん? クロトから聞いたのよ……って、まさかクロト言ってないの?」


「あ、そういえば言ってませんでした。実は……」



 特に隠していたわけではないが、言う機会が無かったので説明してなかったのだ。

 俺は一年前のミノタウロス事件の事や、その後イザベラさんに助けられたこと等を手短に話した。エヴァは前に話していたのでそうそう、と一人自慢げに頷いている。



「なるほどなぁ、お前の世間知らずな理由がなんとなくわかったぜ」


「雷属性なのにそこまで強い理由もね。イザベラさんに鍛えられたのなら納得だ」


「ま、てなわけだ。そんな事より、つい流れでイザベラさんの家に来ちゃったけど、これからどうする?」


「魔術の授業はもう受けられねぇんだから、ひたすら自主訓練するしかねぇだろ」


「幸いなことにある程度の知識はあるからね。自学自習でもなんとかなるだろう。もし行き詰まれば魔術書を漁るのもいいかもしれないな」


「んー……あ、そういえばこの中に光属性の子はいるの?」



 俺達が意見を出し合う様子を見ながら黙ってお茶を飲んでいたイザベラさんが思い出したように口を開く。



「あ、私! 光属性です!」



 そういえば、マナは炎と光の二属性だったな。すっかり忘れてた。



「おっけー、じゃあマナちゃんは私が鍛えてあげるわ」


「え、いいんですか? 騎士団長が直々に……?」


「気にしないで、クロトの事だって一年鍛えたわけだし、アランなんて授業もしてるじゃない」



 手をひらひら振りながら軽く言うイザベラさん。でも実際の所、アラン団長を例外としても騎士団長レベルの人から鍛えて貰える事なんてそうある事じゃない。



「じゃ、俺達は自主練と行くか」


「おう!」


「…………ん」


「ああ」





 そしてそれから一ヶ月経ち、今に至る。



「ん……クロト。これ」


「ん?」



 総合学科の授業が終わり、さぁ帰ろうかという時、エヴァが何かを見つけた。

 学園の入り口に置いてある掲示板。普段から連絡等が貼られているのでこまめにチェックしておかないと明日の授業内容すらわからないなんて事がある。故に学園に来た時と帰る時は確認するようにしているが、やっぱり忘れる事もある。逆にエヴァは毎回ちゃんと見ているようで、かなり助かっている。



 そしてエヴァが指さしたのは一枚の指名手配兼注意喚起が書かれた紙だった。



「んーと、なになに……」



――


 現在、国民区および騎士団区において、夜間に市民を襲撃する自称「魔族」を名乗る謎の人影が確認されております。

 これまでの被害者は既に三十名以上となり、執拗に『心臓』を狙う残忍な犯行です。


 この非常事態に対し、国王陛下のご命令により、夜間外出禁止令が直ちに発令されました。民間人の皆様には、夜間の外出を厳禁とし、身の安全を最優先に行動してください。

 また、これに違反する行為は、自ら命を危険に晒す事になりますので、決して軽視しないよう強く警告いたします。



――



「……か」


「……ん」


「なぁエヴァ、魔族って……」


「種族学の授業じゃまだちゃんと魔族の事はやってないもんね。この大陸よりさらに北にある大陸に、魔物の上位に立つ種族が居て、それが魔族……人間より多い魔力を持ち、一人一つ必ず異能っていう特殊能力を持っている。見た目は人とそんなに変わらないよ」


「異能って言うのは?」


「人理限界みたいな感じ? でも人理限界は言わば才能みたいなもので、私は二属性を複合させる人理限界を持っているのであって、氷術という人理限界を持っているわけじゃないんだよ。でも、異能ってのは特殊な能力その物を指すから、この場合は氷術そのものの事だよ。簡単に言えば常軌を逸した力を一人一つは必ず持ってるんだよ」


「なるほど。全員が必ず持ってるって、魔族ってのは強力なんだな。……とりあえず夜出歩くのはやめておこう」


「……うん!」



 俺達は魔族を気にしながらも遭遇する事は無いだろうと、どこか他人事だろうと高を括っていた。



 まさかこの魔族のせいで、俺達の運命が大きく変わるとは夢にも思わず。

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