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最弱属性魔剣士の雷鳴轟く  作者: 相鶴ソウ
第四章 傷痕編

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102話 形態変化

 さっき、リンリの斬撃食らったアンノウンの反応を見て気づいた事が二つ。

 一つ目は部位による再生速度の違い。人間の急所である頭や胴を弾き飛ばした時と末端の腕や脚とでは再生の速度が違う。

 そして二つ目。こいつに火は効果がある。こいつの体はのっぺりしていて雷に打たれても弾けるだけで焦げたりはしない。にも関わらずリンリの斬撃で燃えているということは弱点とまではいかなくても有効打である可能性は高い。

 加えて今までは切断したとしても切断面同士を伸ばして再生していたのにリンリの炎剣で斬られ、分離した部位が燃えた時はそれらを繋げるのではなく、その部位を捨てて新たに再生させていた。そして地面に落ちた奴の体の一部は燃えて再生出来ていない。



「少しずつ見えてきたぞ。お前の能力」



 少しでもリンリ回復の時間を稼ごうと思った矢先、アンノウンに変化が訪れた。今まで大きな目が一つだけだった顔に大きな亀裂が入ったからだ。目のすぐ下に一本の亀裂。口の様に開いた亀裂の中は血が通っているかのように真っ赤で鋭くとがった白い牙が見える。唾液のような粘着質の液体も垂れている。



「ガ……ガ……グガ……ガ…………」



 声を、発しているのか……? だがその声色も実際の人間とはかなり違う。

 あれだけの再生速度、加えてあのパワー。そんなものを持っている奴が明らかに今までとは違う挙動を見せている。警戒しない理由はない。だが、起こる前に潰す事が出来たら……



〈雷帝流 稲妻剣・獄〉



「ダ……ダイ、第……二」



 一気に飛び上がり頭を狙う。が、焦り過ぎたせいか、少し右に逸れた。だが今更止められない。このまま肩を狙って振り下ろす。



「……ケイ……形態」



 次の瞬間、再びアンノウンに大きな変化が表れた。赤黒い筋の入った肉がアンノウンの全身を包み込む。

 大きな一つ目や口は変わらないが、肉は白い体を完全に覆い隠し、体格すらも大きく変えた。

 今まではひょろっとした背格好だったが、今はマルスに引けを取らない体格だ。そしてこの姿……昔本で読んだ、人間の皮を剥いだ姿によく似ている。つまりは筋肉だけの状態。

 そして俺の振り下ろしたシュデュンヤーは、変身したアンノウンに大したダメージを与えられず、浅く斬れただけ。筋肉のようなものを纏った瞬間に硬度が桁違いに上がった。だが再生速度は健在らしく、その傷もすぐに塞がる。



「……マジかよ、本当にどうなってんだお前」


「行、く……ぜ……?」



 まだ途切れ途切れではあるがついに喋るようにもなった。

 正直白い一つ目の時もかなり不気味だったが、こっちはこっちで不気味だ。



「……ッ!」



 アンノウンが拳を突き出すと、二の腕や上腕の部分が伸びて迫ってくる。シュデュンヤーを斜めに構えて流したが、パワーはさっきよりも上がっている。

 唯一の救いは速度が若干落ちた事ぐらいだろうか。



雷化・天装衣(ラスカティグローマ)



「……続けて獄気硬化!!」



 雷化に加えて両手を硬化させ、アンノウンに対抗する。

 あの速度と力、それと対抗出来るだけの雷化・天装衣(ラスカティグローマ)。こいつの能力は不明点が多いが、先程の状態でも弱点があった。となればこの筋肉の様な姿にも弱点はあるだろう。十分やり合えるはずだ。



「行くぜ……アンノウン」


「……ガ」



 雷化の伸縮性を利用して拳を飛ばし、アンノウンの肩に当てる。が、その体格は見せかけだけではないらしく、簡単に弾かれる。腕をすぐに戻して次の攻撃に移ろうとするが、相手の拳が二本飛んでくる。

 ギリギリまで引きつけて(かわ)し、アンノウンに接近する。腕が二本とも伸びてる状態じゃこれは受けれないだろう。



〈雷帝流 雷撃一閃・獄〉



 横薙ぎ払いの一撃を繰り出すが踏み込みが浅かったのか、アンノウンが後ろへ避けたのか、首を切断するまでには届かず、浅く斬っただけで終わる。

 もう一撃食らわせようと踏み込んだ所で俺の体が複数の衝撃で貫かれる。雷化しているのでダメージは無いが、飛んできた攻撃を見て更に冷や汗が流れる。

 飛んできたのは腕だった。だが、その飛んできた場所に問題がある。肩から生えていたのだ。三本目、四本目の腕が。

 瞬時に上空へ逃げ、体を戻す。

 よく考えればあいつは背中から大量の触手を生やしている所を目撃されている。この程度予想しておくべきだったか。



「やば……」



 アンノウンの背中から生えてきた大量の腕が空中へと伸び、俺の体を貫いたのだ。

 殆ど原型がなくなったせいで、シュデュンヤーを手から離してしまう。一旦離れた位置に体を再生させ、見失っているアンノウンへ狙いを付ける。



神鳴(かみなり)術 神鳴放電砲(しんめいほうでんほう)



 片手で作り出した雷丸へ魔力を注ぎ込み、爆発的なエネルギーを持った雷丸を創り出す。そして雷丸を突き出し、まさにレーザービームの如きキャノンを打ち込む。真っ白な雷がアンノウンの腹を貫通、そのまま増幅し、全身を消滅させる程の威力で大爆発を引き起こした。



「はぁ……はぁ……勝った、か……」



 爆発は暫く視界を塞いだが、徐々にそれも収まる。神鳴放電砲により、アンノウンの姿ごと消滅したはずだ。目の前の地面は抉れ、奥の木々も倒れたり焦げたりと、その爆発の威力を示していた。

 辺りからは物が焦げたような匂いが立ち込めており、見渡す限りアンノウンの姿もない。欠片も残らず消滅した場合、どうなるかは知らないが、再生出来るとしても少しの時間はあるはず。俺は雷化を解き、足元に転がっていたシュデュンヤーを拾う。



「第三形態……ふぅ、危なかったぜぃ。坊主」



 突然声がし、まさかと思って勢いよく振り返るとそこには一人の男が立っていた。赤いズボンだけを履いた上裸の金髪男。第三形態という言葉とこのタイミングでの出現……こいつがアンノウンの正体なのか。



「誰だ、お前」


「人に尋ねる時はまず自分からだ」



 突然、強烈な殺気を感じ、ほぼ反射でシュデュンヤーを振り上げたが、既に視界から奴は消えており、シュデュンヤーも俺の手から落ちていた。

 驚いて持っていた右手を見ると赤く叩かれた様な跡があり、じわじわと痛み出す。あの瞬間に剣だけを叩き落とした。しかも速さのあまり痛みが遅れて来るほど……



「遅いなぁ、坊主」


「お前の能力は一体……」


「俺の事ぁいいじゃねーかよぉ。まぁ気になるってんなら話してやるけどよぉ」



 存外よく喋る奴だ。だがラッキーと考えよう。対策を考える時間が出来る。



「俺の異能は段階的な体質変化でよぉ。第一形態は物理的な攻撃は完全防御、魔術も火を除けば全てを防ぐ。体を吹き飛ばされても瞬時に再生出来る代わりに知性がねーんだなぁ。本体である俺も形態変更程度しか関与はできねぇ」




 真っ白な不気味な状態のアレか。火が効くってのはおおよそ当たりだが、それだけ聞くとまるで弱点がない。

 完全無敵の段階が第一形態ってのもおかしな話だ。



「第二形態は物理も効くし魔術も全て食らう。だが防御力が第一形態とはケタ違いだ」



 あの筋肉に覆われた姿の時は確かに硬かった。シュデュンヤーと雷撃の組み合わせでも少しの切り傷しか出来ず、高火力で押しつぶすしかなかった。



「力も強くなるが、如何せん再生能力がかなり低いからさっきみたいな超火力で押されるとだめだァな。坊主の状況判断や技のチョイスはかなりのもんだぜ。姿はバレたくなかったが思わず第三形態まで使っちまったよ」



 今の状態は限りなく人間に近い。

 異能、という言葉を使っていたと言うことは魔族なんだろう。だったら不気味真っ白や筋肉ダルマの時と違って“殺す”事が出来るはず……



「拾えよぉ、坊主」



 アンノウンは顎でシュデュンヤーを指す。

 拾ってる間に不意打ちする気か……いや、あいつのスピードなら攻撃そのものが不意打ちみたいなもの。

 わざわざ拾わせる意味が見当たらない。



「俺ぁよぉ、二度も殺されかけた相手を何もわからねぇまま殺すなんて事はしたくねぇわけよ」


「……なに?」


「第一形態でも殺されかけ、第二形態でも殺されかけた……こんな屈辱はねぇぜ。坊主」



 筋肉ダルマの時はまだしも、不気味真っ白の時は手も足も出なかった。それとも知らず知らずのうちに致命傷を与えていたのか……?



「わかった」



 俺は警戒しながらもシュデュンヤーを拾い、アンノウンに向ける。

 こいつが仕掛けてきた時、俺はおそらく見えない。だが、速すぎるが故に無音での移動は不可能。

 耳に全神経を集中させて捉える。来い……



「……ッ」



 一瞬で姿が消えたその瞬間、俺の腹にアンノウンの足、しかもつま先が食い込んでいた。そのまま蹴り飛ばされ、俺は木々に衝突。背中を強打したが、なんとか意識を失わずにアンノウンを視界に捉える。

 音は聞こえた。だが体が全く反応出来ない。速すぎる。



「やっぱり必須か……」



雷化・天装衣(ラスカティグローマ)



 雷化と共に駆け出し、アンノウンの死角に入り込む。地面を滑りながらもブレーキをかけ、シュデュンヤーを振り上げる。

 今の俺は訓練のお陰もあって集中していれば音速での戦闘が可能だ。アンノウン、お前はどうだ? 人の形で音速について来れるか。



〈雷帝流 稲妻剣・獄〉



 アンノウンの脳天を見ながら黒剣を振り下ろす。まだ俺に気づいた様子はない。行ける、斬れる。

 シュデュンヤーはアンノウンの体を捉え、斬り裂いた。だが致命傷じゃない。アンノウンはギリギリで避けた。恐らくは適当に避けただけだが、それでも致命傷は回避された。

 シュデュンヤーはアンノウンの左腕を二の腕の部分で斬り落とす。確かに一撃では仕留められなかったが、十分な有効打だ。



「なんだ、坊主……はぇーじゃねーかよ」


「今の……適当に避けたのか?」


「まぁな、坊主が視界から消えた瞬間、俺を狙いに来る事は容易に想像出来た。だからとにかくその場を離れたんだが……くっはっはっはっ……残念だったな。俺はしぶといぜ?」


「だが、こっちにも収穫はあった。その姿はお前の本来の姿……つまりは第三形態とは言っているがオリジナル。不気味真っ白や筋肉ダルマみたいな無茶苦茶な性能は持ってない。せいぜいその速さぐらいだろ?」


「よく見てやがる……くっ……ははは……気に入ったぜ、お前には特別に見せてやろう。俺の最大速度」

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