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第1話【イケてるヤツからすれば全然イケてないから相手にされないけどイケてないヤツからすればまぁまぁイケてるから避けられてるという説】

ここで一言でも口説いていれば、

結末は少し変わっていたかもしれない



「あのさ、初恋の相手って覚えてる?」


 沈黙を切り裂く雷光一閃の質問だった。

 今日何食べた?とか、好きな本は?とか、そういうのじゃなくていきなりコレ。


「ホワイト・マジック・ガールですね」


 俺は2秒で答えた。


「ホワイト…え、何?」


「遊撃王のカードです。遊撃王ってかっこいいドラゴンとか強そうなモンスターがメインなんですけど、女性キャラってほとんどいなくて、いてもちょっと不気味な雰囲気なんですよね。そんな中でめっちゃ可愛い魔法使いの女の子が突然出てきて心奪われましたね」


「はぁ、もういいよ……この話おしまい」


 最初は真剣だった純奈さんの表情が2秒で呆れ顔に変わる。



 仕事終わりにカフェでまったり。しかも純奈さんと2人だけ。このシチュエーションにあの質問だ。


 雰囲気ぶち壊して、雷光一閃はどっちだ。

 もしかしたらとんでもない事やらかしたんじゃないか?


「えっと、なんでそんな事聞くんですか?」


 最初はふざけてたけど2秒で真剣に変えて聞いてみた。


「もういいって」


 マズった。自分のやらかしを2秒で反省した。後悔先に立たずだ。

 せっかく出してくれた助け舟だったのに、その上で暴れてしまって降ろされた感じ。航海だけに。


ーーしかし


「うん、合格」


 一瞬考えてその言葉を発した純奈さんは、意外にも満足そうだ。


「ここで普通の事を言えたら不合格だったね。ある意味で私の期待通りの回答だよ南条君」


 意味が分からねぇ。2秒考えたけどどう言う事だ。


 いや2秒じゃ短いか。



「お褒めに預かり光栄でございます。お嬢様」


 なんかよく分かんなかったけど、とりあえずスカした味変ギャグを濃厚イケボで添えてみた。


「ふっ……ふふっ、あはは!」


 ウケた。やったぜ。


「なにそれっ!本当に気持ち悪いな南条君は!あはははは!」


 これはさすがに分かる。褒められてない。

 でもなんか楽しいぞ。今日ずっとこんな感じなら最高なんだけどな。



「あ、今もしかしてさ……ウケた!やったぜ!って思った?」


 純奈さんが2秒で素に戻った。


「え?ま、まぁそうですけど……」


 あまりに切り返しが早くて、俺らしくもない普通の反応をしてしまったか。




「だから……オトせないんだよ」




 え?




 なんて?




 純奈さんは続けた。


「恋愛の基準ってさ…二種類に分けるとするなら、相手がイケてるかイケてないかだと思わない?」


「まぁ4kmくらいあると思います」


「南条君と話してると本当に退屈しないし、素直に面白い。もっと話したいと思うよ」


「マジですか!素直に嬉しいです!」


「けど、さっきのホワイトなんとかの話とか、今の変な小芝居とか、それがウケて嬉しいとか、4kmくらいってのは…それ一理って事だろうけどさ、南条君の発想は"全然イケてない人"のそれなんだよ」


「なるほど…けど"イケてない事"ってのは"いけない事"なんでしょうか?」


「そういうところ!」


ーーバァン


 純奈さんが机を叩く。


「キミの頭の回転の速さはスゴいな……スゴすぎて最早キモいよ」


 なんかスゴすぎて最早キモいやつ。


(すごきも…)


いや、言おうとしてやめた。純奈さんは更に続ける。


「イケてる人はイケてる人同士、イケてない人はイケてない人同士で恋愛するんだよ」


「はい。なんとなく分かります」


「多分ね南条君」


「はい」


「キミはイケてる人からも、イケてない人からも"おもしろいけど自分とは違う人種だ"って思われてるよ」


「はい?」


「イケてる人はそんな考え方はしない、イケてない人はそこまでうまく話せない」


「あの……つまりそれって……」



 俺は息を大きく吸い込んだ。そしてさっきまでとは比べ物にならない程の雷光一閃をぶちかました。



「イケてるヤツからすれば全然イケてないから相手にされないけどイケてないヤツからすればまぁまぁイケてるから避けられてる、って事なんでしょうか!?」




 2秒で言った。




「……」




 体感2分くらい経った。なにこれ地獄?



「うん、本当に期待通りだよ」



 純奈さんが口を開いた。



「やっぱり合格!一芸入試で特待合格だ!」


 それは天国のような満面の笑みだった。


 しかし、さっきも言ってたけど合格って……一体俺は何に合格したんだろう。

 とりあえず叫んでもイイですか?って言おうとしたけどやっぱりやめた。



「ふふっ、今のは南条君みたいに言ってみた」


 ちょっと恥ずかしそうに笑う純奈さん。叫べば良かったか? というかめっちゃ可愛いな。

 マジでずっとこんな感じなら最高なのにな。



ーーそう思った直後に、純奈さんの放った一言



「本当に……叩き直す甲斐があるよ」



 それは今日一番の雷光一閃だった。





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