第二十八話①
「やっぱり怒ってるよね。あんな事言っちゃったんだもん……」
去り際にその様な言葉が聞こえてくる。
あんな事とは、俺が無理にでも魔族のアジトへ向かうと言った際に、ニナが俺に放った言葉だろう。
あの言葉を口にされた時、正直俺の心は傷つきはした。 だがそれは、ニナにその様に思われたのが心苦しかったわけではなく、心優しいニナにその様な言葉を使わせてしまったのが申し訳なかったから、心に傷をおったのだ。
その事を訂正してあげたい気持ちはあるが、俺と言う人間と、これ以上思い出を増やすべきではないだろう。
それに、俺の存在は魔族達に知られてしまっているからな。
この場に長いもしていられない。
魔族達が奴らのボスであるギンギラに、ルビニスターが討伐された事を伝えられれば、直様俺は狙われの身となる。
そうなって仕舞えば、俺の近くにいるもの達にも被害が及ぶだろう。
これからはなるべく、魔族の近付く可能性のある場所は避けながら進まなければならなくなる。
この先の冒険がとても難しいものになるなと、重い足取りで先に進む。
するとここで、予想外のことが起きた。
ギュッと、誰かに服を引かれたのだ。
この場において、俺を引き留める人物など1人しか存在しない。
だがそれは、彼女が取るはずのない行動でもある。
俺は確認の意味を込めて、後ろを振り向くと、俯いた姿でニナが俺の服の裾を引っ張っているのがわかった。
ニナはこのように、私的に誰かを引き留めたりなどはしない性格のはずだ。
俺が魔族の元へ向かう際に、立ちはだかった事はあるが、それは俺の為の行動であり、ニナ自身に何ら影響のないものだ。
けれど今回は違う。俺を止める理由など、私的理由以外はあり得ないのだ。
ニナが自分の意思を、子供らしい我儘を貫いて俺を止めたとでも言うのだろうか。
確信は持てない。だがこの行動が、俺はとても嬉しく思えたのだ。




