第二十七話③
愛も変わらずニヤけた面を見せながら、ルビニスターは呼吸を止めて、そのまま地面へと倒れ込んだ。
どうやら息を引き取ったみたいだ。
魔族とはいえ、やってきた事が悪だったとはいえ、直前まで会話をしていた者の命を奪ったという事実は、重苦しいものだ。
俺は思っていた程勝利の喜びを感じられぬまま、アジトから抜け出した。
外へ出てみると既に火は消火されており、少ししてから魔族達の雄叫びが聞こえてきた。
ルビニスターの亡骸を確認したのだろう。
今まで散々村の方達を苦しめておいて、堂々と泣き声を上げる魔族達に、怒りを感じながらも罪悪感を覚えた。
このままやるせない気持ちを抱えながら旅を続けていくのかと、スッキリとしないながらに森を進んだところで、見知った顔に出くわした。
「お兄さん……」
こんな場所で出会う筈のない人物の出現に、俺は目を丸くして驚きを見せた
俺は今、ローブが焼き焦げて体がむき出しとなっている。この姿を見て俺をお兄さんと呼ぶのは、彼女しかいない。
ニナ……。
どうしてここにいるのか、そんな疑問がふと頭をよぎったが、そんな事少し考えればわかる話だ。
彼女は優しい、俺が出会ってきた中でもここまで純粋でいて優しい人物は、片手で数える程しか出会えていない。
だからこそ、命の危険があるにも関わらず、俺のところへ足を運んでくれたのがよくわかる。
ニナの足は小刻みに震えている。
ここに来るだけでも、とても怖く、足がすくんだのだろう。
「……」
勝利の報告、生存の報告、あらゆる事を伝えようと考えたが、俺は何も言わずにニナの横を通り過ぎた。
その際のニナの俯いた姿は何とも哀しみを感じさせて、思わず「心配をかけてすまなかった」と頭を下げそうになった。
だがそれらをしてはいけない。
彼女に合わせる顔なんて、とっくに俺は持ち合わせていなくなってしまったのだ。




