第二十五話③
ゆっくりと体を回復させて、俺は踏ん張りながらも立ち上がる。
「ケヒャヒャ! 回復して見せたところで、何度でも俺がめちゃくちゃにしてやるよ!」
ルビニスターは声を荒げてそう言い放ち、俺をまるでムチを扱うかの様に、地面に叩きつけては持ち上げるを繰り返す。
地面にぶつかる音が室内に響き渡り、生々しい骨が折れる音がかき消される。
何とか気が失ってしまわぬ様に、必死に自我を保とうとするが、それはつまりこの痛みから逃れることなく味わい続けなければならないことになってしまう。
気を失ってしまう方がいくらか楽ではあるのだろう。
何度もその様な言葉が頭に浮かんだが、それを受け入れる事はなく、痛みを受け入れ続けた。
気がついた頃には、再び体が動かせなくなっていた。
俺の手足は地面に転がり、残された右腕をルビニスターは掴み、持ち上げて俺を壁へと投げつけた。
壁にぶつけられる際に、遂に頭蓋骨が砕けるのを感じた。
痛みはもはや耐え切れるものではなくなっており、俺は流れる筈のない涙を流している感覚に陥りながら、嘔吐する感覚を同時に感じる。
限界だ。身体的にではない、体なんていくらでも治す事はできるのだ。
ただ、心はどうしようもできない。
肉体ではなく、心が悲鳴を上げている。
だがそんな目に見えた思いとは裏腹に、俺は再び立ち上がった。
もう戦える筈がないと思いながらも、体を回復させてルビニスターの方へ視線を向ける。
「…何故そこまで本気になるのかわかれねぇ。数日前にあの村に来ただけのお前が、そこまでする理由が本当にあるのか?」
「お前なんぞに分かるはずがないだろ。思い入れがなくとも、困っている人は助ける。関係を持ってから日が浅くても、助けて上げるべき人間がいたら助けてやる。それが英雄としての、人間としての生き方なのだ」
「ケヒャヒャ…英雄ってのは成果あってこそのものだぜ。ここで死んだら、英雄どころか無駄死にの大馬鹿ものだ」
「成果か…ならばお前を殺せばそれを得られるというわけだ」
「ケヒャヒャ! 気合いだけは認めてやるよ! だがな、分かりきった未来を受け入れられないお前は俺には勝てねぇぞ!!」
「分かりきった未来などないから、今まで人間は散々足掻いて勝利を手にしてきたのだ。俺はまた、その一例となってやる」
俺はそう言いながらルビニスターの元へと一気に突っ込んでいく。
まるで制御の効かなくなった列車の様に、考えなしに突っ込んでいくこの様は、ルビニスターにとっては滑稽でしかないだろう。
それでいい、何とか俺の作戦に気がつがなければそれでいいのだ。




