第二十二話③
「ニナ、厳しい事をいうがな。それは、父親の死に対する冒涜だと思うぞ」
俺はニナをじっと見つめながら会話を始めるが、ニナは涙を流したまま、こちらに視線を向けようとはしてこない。
「ニナにとって、父親の死が受け止めきれない程の苦痛だったのはわかる。だが、それに臆病になって、助けの手を払いのけるようになってはいけない。それではまるで、父親が死んだせいで、ニナは臆病になったのだと、今の不幸は父親のせいだと言ってるみたいじゃないか」
未だ涙を流すニナに、そのように伝えた。
ニナはまだ若い、本来は我儘に助けてと叫んでもいいのだ。ここまで追い詰められるべき存在ではない筈だ。
俺の話を聞いて直ぐ様ニナは立ち上がり、俺の方へ視線を少し向けた後に、その場から走り去っていった。
「お兄さんの……馬鹿……」
走り去る際に、俺にそのような事を言っていた。
心優しい彼女にこんな事を言わせるとは、自分が嫌になる。
勿論、子供相手に酷な話をしてしまった自覚はある。
ここまでいうつもりはなかったが、こうでもしないとニナは俺が先へ進む事を止めに来ただろう。
それを避ける為にはこうする他なかった。
いや、他にやり方などいくらでもあったのかもしれない。だが俺にはあの子を傷つけずに、この場から離れさす方法を思いつく事は叶わなかったのだ。
彼女が傷ついてしまったのだとしたら、それは俺の責任だろう。当然だ。
「すまないな……うちの村の娘が……本来は感謝すべきだろうに」
「そんな事はない、これは俺が勝手にやっている事だ。寧ろ俺は、彼女に何度も謝罪をしたいくらいだ」
そんな言葉を交わしながら、遅れを取り戻すようにアジトへと急いで向かう。
だが音はたてず、慎重かつ丁寧にだ。
俺は問題ないが、村人たちが息を切らし始めた。もう既に立っているのもやっとだと思われる人物もいる。
「少し……ペースを落とすか?」
「そんな事……言ってられませんから、大丈夫です」
「だが、お前たちはアジトについた後、すぐさま村に戻らないといけないんだぞ? 体力を残しておけ」
恐怖を与えてしまうと思い、村人たちには告げなかったが、ペースを落とした理由は他にある。
万が一にでも、今この場で魔族からの襲撃にあった場合、俺は全員を守る事は出来ない。
その為、彼らには逃げてもらう他ないわけだが、その時に彼らの体力が無くなっていれば、逃げる事すら叶わずに魔族に殺されてしまう。
それだけは避けたい。それが故に俺は、間に合わなくなる事を承知で、進む早さを遅くしたのだ。




