第二十二話②
「お兄さん……嘘ついてるでしょ。お兄さんは、私を払いのけて先へ進むようなことは、しないし出来ない人でしょ?」
「…それがわかっているのなら、出来ればそこを退いて欲しいのだがな」
ニナはやはり、何処か人の気持ちを察するのに長けたところがある。
俺の考えなど、直ぐに気がついてしまっていたみたいだ。
「退けないよ……それに、皆んなはどうしてお兄さんを魔族の元に向かわせようとしてるの? お兄さんは村の人じゃないんだよ。それなのに、命を賭けて戦ってもらうなんて……」
「俺が自分から言い始めた事だ。寧ろ村の人たちは、俺の為に力を貸してくれている」
「力を貸しているのは、そもそも村の為なんだから…え? …村の為、なんだよね?」
俺は直ぐに「その通りだ」と口にしたが、それがまた怪しさを出してしまったみたいだ。
ニナは顔を曇らせながら、こちらへと近づいてくる。
「私のためなの……? お兄さん?」
違うと否定したところで、それを納得はしてくれないだろう。どうも俺は嘘が苦手みたいだ。ニナの察しが良すぎるのもあるが、俺が動揺しているのも関係している。
「私の為に……もしそうなら、私は大丈夫だからここを離れて。お兄さん冒険者なんだよね? なら、他の村か国にいってよ」
「大丈夫には……見えなかったんだ。だからおれは……」
「なら、私のような人をこれから見つける度に、助けて先へ進むの? そんなことしてたら、命が幾つあっても足りないよ、もっと自分のために使うべきだよ」
「俺はきっと、ニナのような者を見る度に手助けしてしまうだろう。そしてその行動こそが、俺の目指す者への近道であると信じている。だから、それで例え命を落としてしまったとしても後悔はない」
勿論、命を落とすつもりなど微塵もないわけだがな。
言葉を淡々と返しているうちに、遂にニナは涙を浮かべ始めた。
ニナから言わせれば、俺という人物はなんて聞き分けがない人なのだと思っているだろう。
傷つく人を見たくないから、やめて欲しいとニナは言っている。つまるところこの行動は「余計なお世話」なのかもしれないし、これはもはや、俺のエゴでしかなくなっているのかもしれない。
だが、それでも俺は先へと進む。
ニナが自分から助かろうとしないのであれば、俺が勝手に助けてやる。いつかそれが、彼女の幸せに繋がると信じているから。
「先へ進ませてもらうぞニナ」
そう言って前に進むが、目の前で腕を広げてニナは進行の邪魔をしてくる。
「私のお父さんの話はしたよね……どうしてわかってくれないの!?」
「あー覚えているとも、優しい父親だったのだろ?」
「うん……優しい人だった。……私にとって、ヒーローみたいな存在で……でも、私を守ろうとして死んじゃった。……もうこんな思いをしたくない。もう大事な人が死んじゃうのは、嫌だよ……」
そう言ってニナはその場に蹲り、ポロポロと涙を流し始めてしまう。




