第二十二話①
「こんなところで何してるの…? お兄さん」
姿を現したのは、魔族やましてや魔獣などではなく、見知った顔で、最もこの場で出会したくはない人物だった。
「すまない…ニナ」
俺は堪らず謝罪の言葉を溢した。
ニナは悲しそうな顔を浮かべながら、ゆっくりとこちらへと近づいてくる。
「謝るって事は…やっぱり私との約束、破っちゃうんだね」
「…その通りだ。許してくれとは言わないし、言えるはずもない。ただ、この先を進ませてもらう」
「どうしても? 今なら…今ならまだ! 見なかった事にも出来るよ…」
か細い声で、ニナはそう叫ぶ。
この言葉を受け止めてやりたいと、約束を果たすために引き返してやりたいと、そのようには少したりとも思わなかった。
ここで引き返せば、俺は嫌われる事なく、ニナとの関係も良好なまま、旅を続ける事ができる。
だが、それの何処が良いといえるのだろうか。
俺自身はニナに嫌われることなく幸せになるかも知れない。だが、ニナは、村人たちは皆、魔族の支配下に置かれ、やがては殺されるかも知れない。
ならば、それを防ぐためならば、俺はニナに嫌われてみせよう、悪役になって見せよう。
1人の人間に裏切られたという傷を合わせてしまっても、その先にある幸せの為進んでもらうために、俺はこの行動を止めることは出来ない。
そのような決心が、俺の中に固く出来上がっていたのだ。
「お、おいニナちゃん。いいから村に戻ってな」
「ごめんなさいおじさん…今はお兄さんとお話させてほしいな」
「ニナ、話す事なんて何もないぞ。俺はこの先を進む、邪魔をするなら無理にでもどいてもらうぞ」
心が痛む。悪役の行動とはこれであっているのだろうか。
わからない。わからないが、それでもバレてしまった以上、俺は嫌われ者に徹するほかない。
中途半端に優しさを見せてしまうよりも、厳しくして、俺の決心を見せつけてやるべきなのだ。




