第二十話④
少しばかり時が流れた後、天気が乱れ始めた。
もう直ぐ雨が降ってくるかもしれない。
俺は手を空に向けて軽く伸ばして、雨粒が掛からないかを試す。
どうやらまだ降っていないみたいだが、そろそろニナを村に返した方が良さそうだ。
俺は雨に濡れたところでどうにもならないが、ニナは風邪を引いてしまいかねないからな。
すると後ろから「出来た!」と元気な声が聞こえてきた。
どうやらニナの作っていたものが、遂に完成したらしい。
「良かったな」と背を向けながら声をかけたところで、ニナはこちらに近づいてきて、何かを頭の上に乗せてくる。
「はいお兄さん、これ上げる! とっても似合ってるよ!」
そう言いながら、ニナは俺の頭に花冠をプレゼントしてくれたのだ。
子供の頃、俺自身は作っていなかったが、周りにいた同年代の子たちは作っていた為存在は知っていた。
何とも懐かしく、そしてプレゼントを貰った時に感じる、何とも小っ恥ずかしく、それでいて嬉しい気持ちに包まれた。
「ありがとう……ニナは優しいな」
曇り空の下、太陽のような笑顔を向けるニナにお礼を告げて、その冠を下から覗き込む様にして見てみる。
綺麗に編み込まれているのもそうだが、どれも枯れていない綺麗なものばかりを選んで作ってくれたみたいで、軽く花の香りが辺りを包み込む。
俺の姿を見ても、嫌悪感を抱かずにこうして接してくれるのだから、素直に感謝しなければならない。
「何かお礼をしなくてはならないな。何か欲しいものはあるか?」
「ううん。私は何もいらないよ」
愛も変わらずに、少女は眩しい程の笑顔を向けた。
そんな中、空は空気を読むことが出来ないのか、遂に雨が降り始めた。
雨が額や体についても尚、ニナは笑顔を続ける。
「……お礼はする、絶対にな」
「でも本当に…」
「俺が渡したいんだ、ダメか?」
「じゃあ…貰っちゃおっかな?」
そう言って笑顔向けてくる。
俺はニナが雨に少しでも濡れない様に、ニナの頭の上で自分の手を屋根代わりにして話を続ける。
「君が大きくなった後に、また俺の冒険譚を聞かせてやる、その中で見つけた最も美しい花を君に添えてな」
「……うん! 楽しみにしてるね!」
記憶に残る中で、俺がニナの笑顔を見たのは、これが最後となった。




