第二十話③
思考を回しているうちに、あっという間に時は流れて、気がついた頃には日が上っていた。
眩しさを覚える程の朝日に、目を細めようとしたところで、自分には瞼がない事を思いだし、手で影を作って空を見つめる。
ニナにはバレない様に、砂に書いた作戦を足で消す。
万が一バレて仕舞えば、悲しませてしまうからな。
復習するかの様に何度も書いたものに目を通しながら消していき、全て消し終えたところで、ニナの元へ向かった。
向かうと言っても殆ど距離は離れておらず、数歩進んだだけでニナが寝ている大きな木が見えてきた。
だがそこにニナの姿は見当たらない。
俺のローブが綺麗に畳まれて置かれているのを見るに、誰かに攫われただとかではなさそうだ。
ひとまず安心を覚えたが、少し心配になりニナを探しに行く。
朝とはいえここは森だ。迷子になるかもしれないし、魔獣に会う可能性もゼロではない。
大きな木のあった場所から少し村から離れる様にして歩いていくと、小規模ではあるが、辺り一面が花で満たされた場所にたどり着いた。
白い花びらのついた、小さな花達が数えきれない程に咲いている。
強くはなく優しい花の匂いが鼻を通り、程よい心地よさを感じさせる。
「ここにいたのか、ニナ」
その場の中心に、ニナの姿があった。
花のあまり咲いていない箇所に座り、花を摘んで何かを作っている。
「おはようお兄さん。ごめんね、何も言わずにあの場所を離れちゃって」
「ニナのことだ。俺が考え事をしているのを察して、声をかけなかったんだろ?」
ニナは頷く代わりに笑顔を向けて返事を返す。
「夜も開けたんだ。流石に大人達も会議を終えているだろうし、村に戻るか?」
「少し待って、もうすぐ完成するから」
そう言って花で何かを作っているが、ニナは自分の体でそれを隠して、俺に見せないようにしている。
何を作っているのかわからないが、見られたく無いのであればと、俺は背を向けてその場に座り込んだ。
作戦で張り詰めた緊張感が少しばかりほぐれる程、この環境は落ち着きを与えてくれる。
この場で何泊かしたいとさえ思えてくる心地よさに、眠れはしなくとも、心の疲れが癒えていくように感じた。




