第二十話①
「ありがとうお兄さん。……でも、そんな事、しちゃダメだよ」
「そんな事」、ニナは自身が悲しむことを、そう言ってのけたのだ。
そんな事とは、どうでもいい事と言う意味合いではなく、その様な行いをするべきではないと言った、まるで悪い事かの様に言っているのだ。
「どうしてダメなんだ? ニナだって悲しい事くらいある筈だ、それを露わにする事を、誰も責めたりなんかしないと思うが…」
「うん……確かに誰も怒ったりはしないと思う……皆んな優しいから」
「ならば、どうして悲しみを隠しているんだ?」
「怒りはしなくても、皆んなが悲しんじゃうからね。みんなはもう辛いで一杯なのに、これ以上それを増やしちゃ……ダメでしょ?」
そう言ってこちらへ笑みを浮かべてくるが、俺はこの言葉を受け入れてやることはできなかった。
それは意見が気に食わないと言うよりも、これを肯定することは、ニナがこれからも悲しみを堪え続ける事に、賛成しているかの様に思えて、決して頷けはしなかったのだ。
「ならば……せめて俺には話してくれないか? 村からすれば、俺は部外者なんだ」
「ううん。大丈夫なの、私は笑顔でいる方が皆んなに喜んでもらえるから、それでいいの」
「皆んなが喜んでいる事が、ニナにとって幸せなのか?」
「うん!」
元気よくニナはそう答えた。
ニナは、皆が悲しまない為に悲しみを見せずに、皆が喜ぶ為に笑顔を浮かべていると、そう答えたのだ。
本人がそれでいいのなら、無理に意識を変えるように言うつもりはない。
所詮俺は、偶然村へやってきただけの人間に過ぎないのだから。
だが、彼女の優しさに触れたものとして、俺の魔物同然の姿を受け入れてくれた事への感謝として、最大限の恩返しはしようと思う。
彼女が悲しいを口に出したくはないと言うのなら、悲しい気持ちの元凶を壊してやればいい。
胸の内に抱える苦しみを聞いて上げるではなく、根本からその苦しみを無くしてやればいいのだ。
それはやはり、ルビニスターなどの魔族を倒す事につながる。
「暗い話ばかりして悪かったな。これからは、楽しい話をしよう。今後も忘れることのないほど、愉快な話を」
万が一命を落とす事になっても、ニナの中に残る俺の記憶が、綺麗なものである為に、、、
ニナはいつも以上笑顔で返事をしてくれ、俺もそれに笑みを向けて返す。
こんな姿での笑顔など、不気味で仕方がないかもしれないが、ニナは気にする様子を見せずに会話を始めた。
夜だと言う事を忘れてしまう程に活気よく会話は進み、俺たちは暫く時間を忘れて笑い合っていたのだ。




