第十九話③
慌ててフードを再び被り、深く顔を隠したが、今更こんな事をしたところで、もう手をくれなのだろう。
「お兄さん……?」
「ニナ……見たんだな?」
「うん……多分……」
俺の顔を見てしまったと言うのに、不思議とこの場から逃げていかない事を不思議に思い、俺はわかりきった事を質問してしまう。
だがやはり答えは予想していた通りのもので、ならばどうしてここから離れないのかわからない。
「怖くないのか? 俺の姿が……」
「んーと、どうだろ。……お兄さんは魔物なの?」
「いや、それは違う、人間だ。ただ色々あってな……こんな姿になってしまった」
「そっか、大変だったね」
そう言って、ニナはフード越しに俺の頭を優しく撫で始めた。
この見た目をまさか受け入れてもらえるとは考えていなかった俺は、たまらなくなりその場からさっと離れてニナに問いかける。
「何故その様に接する事が出来るんだ。俺はニナの感情がわからない…恐怖などを感じないのか?」
「…ごめんね。本当なちょっぴりお顔を見た時はびっくりしちゃった。……でもお兄さんはいい人でしょ? 私は優しい顔をした悪い人は苦手だけど、怖い顔をした優しい人は好きだよ」
俺は何だか自分を情けなく感じてしまう。
こんなにも心が綺麗なニナに、俺は何故自分から姿を晒さなかったのだろうかと、何故信用せずに、ニナは俺の姿を見れば離れて行ってしまうと思っていたのだろう。
その全てが情けない。
とは言えやはり、ニナの前で骨の姿を晒すことは出来なかった。恥ずかしい話ではあるが、フードを被ったまま会話を続けた。だが、常日頃持ち合わせているフードが捲れてしまう心配は、今は無くなっていた。
俺の自分の姿の話をするつもりはなかったのだが、何があったのかを知りたがったニナの為に、今に至るまでの経緯を話した。
話を聴きながら、ニナは悲しそうな顔をし始める。
同情して欲しいだなんて考えていなかった。だが、自分の為に涙を流しているニナを見て、少しばかり心が軽くなったのを感じた。
「ニナは人の事になると、そうやって悲しい顔をしてくれるのだな」
「うん。だって悲しいんだもん……」
「それは悪い事ではない、寧ろ誰かの為に涙を流せるのは、良い心を持った証とさえ思う」
そして何よりも、俺がニナに伝えたい事は他にある。
「……ただ俺が言いたいのは、自分の為にも、ニナ自身の為にも、涙を流して上げてもいいのではないかと…そう思うのだ」
ニナは自分の為には涙を流さない。それにはきっと理由があると、俺は考えている。
高々数日関わりを持っただけの俺だが、ニナの表情にはいつも違和感を覚えていた。
心優しい子であることは間違いないだろう。
だが、いつも彼女の身に何か悲しい事が起きても、ニナは無理して笑顔を作ろうとするのだ。
涙を堪えるのはまだわかる。
だが、何故直ぐに笑顔を向けているのかとずっと疑問に感じていたのだ。




