第十九話②
「ニナ……本当にすまない。もうアイツらに挑む様な真似はしないと……約束する」
「うん……約束ね」
ようやくニナは涙を止めて、ゆっくりといつもの笑顔へと戻っていく。
人によっては、寧ろ「助けて欲しい」と言って泣いてしまう子もいるだろう、ニナは本来無関係な俺の身を案じて、戦いには出ない様にと涙を流してくれた。
そんなこの子の気持ちは非常に暖かく、優しさを感じるのだが、この子はやはり父親の死を引きずっているのだなと深く感じた。
魔族相手に勇敢にも挑んだニナの父親は、命を落とした。それが今も尚トラウマとなっており、魔族に挑む者は不幸になるといった心理が働き、こうして止めてくれているのだろう。
考えとしては間違ってはいない、魔族に挑むなど自殺行為だと言う者たちもいる。人間とは分かり合えない、醜く力強い生き物、それが魔族だ。
だが、ニナの考えは正解ともいえない。
危険だからと魔族からの侵略を受け入れていれば、その先に待つのは破滅のみだ。
自分たちの村のことなのだから、自分自身の事なのだから仕方がないと、ニナは考えているのかもしれないが、まだ幼いこの子がそんな責任を背負うことはないのだ。
本当は、もっと頼って欲しいと正直なところ思っている。
だが、ニナにはそんな事を伝えることは出来ない。きっと、納得はしてくれないからな。
だから約束をしたのだ。
俺は次の戦いで魔族を倒して、何も言わずにそこを立ち去る。そうする事が出来れば、村人たちは救われて、誰が倒したのかすらバレない為、俺が約束を破った事も、ニナには知られずにすむ筈だ。
そうすればニナは、肉体的にも、精神的にも傷つくことはない。
「それで、ニナはこんな夜遅くに何をしていたんだ? 村の近くとはいえ、この付近には魔物が出る筈だぞ」
「うん。でもよっぽどの事がない限りは現れないよ、ここは人間と魔族が住んでいる場所の中間地点だから、出るとしてももう少し向こうのほうだよ」
「だとしても、夜に村を出るのは危険だ。ついて行ってやるから、村に帰るんだ」
「それがね。おじいちゃんに言われてここにきたの、何かはわからないけど、大人達だけで話す事があるみたいで……」
恐らく魔族関係の話だろう。魔族に目をつけられた親子を逃すといった話も出ていたからな、その後どうするかの打ち合わせか何かだろうか。
「それでは共にここで待っていようか。1人だと暇だろうしな」
「ほんと!? ありがとう! ……えへへ、またお兄さんと話せるなんて思ってなかったから嬉しいな」
愛想のある事を言う子だなと和んだ最中、突然強い風が吹いた。
風が全身を包み込んで、ニナの長い髪が激しく靡く。
いつもの事で、大した対策を直ぐにとらなかった事が間違いだったのだ。
こんな事になるならば、直ぐにこの場を去るべきだったと深く後悔さえもした。
「……お兄さん?」
突如吹いた風によって、俺の被っていたフードが捲れてしまい、骨の身をニナの前で晒してしまったのだ。




