第十九話①
暫く考え込んでいるうちに日は沈み、時刻はあっという間に深夜となった。
もう夜になった為、眠りはしないまでも体を横に向けて、空眺めている。
名案などは簡単に生まれる事もなく、未だに俺は悩みに悩み抜いていた。
すると何やら、川から音が聞こえてきた。
勿論川は無音ではない為、音が聞こえるのは当たり前なのだがそうではない。
川の流れる音や、魚が跳ねる音などではなく、動物か何かが水辺を通るかのような、そんな音が聞こえてくるのだ。
俺は武器を握ってその場へと足を運ぶ、万が一にでも魔物だった場合、先手を打たれる前に仕留めなければならないからだ。
音の発生源まである程度近づき、茂みに隠れてゆっくりと更に距離を積める。
そして一気にその茂みから飛び出して武器を構えた。
「わっ! ……びっくりした」
予想外な事に、そこには見知った女の子の姿があった。
俺は武器を下ろしてじっと彼女を見つめる。
「ニナ、こんなところで何をしているんだ?」
そこには、川に足をつけて空を眺めているニナの姿があった。
何やら思い詰めた顔を浮かべていたが、俺の存在に気がついた途端、少し体を浮かして驚きを見せていた。
「こんなところにって……それは私のセリフでもあるよ。ねぇお兄さん、どうしてここにいるの?」
「それは……次の目的に向かう最中だったんだ」
「嘘。今朝出ていったのに、まだこんなところにいるだなんて可笑しいもん。ここから村まで直ぐなんだよ」
どうやら俺は、魔族のアジトから離れながら、村に近づいてしまっていたみたいだ。
「何してたの?」
「……考えごとだ」
「違うでしょ。魔族のところに……いってたの?」
妙に鋭い。それに、いつもの笑顔を見せる事なく、真剣に俺の方へと視線を向けている。
そんないつもと様子が違う彼女の圧に負けてしまい、俺は真実を語ることにした。
「ルビニスターに挑んできたんだ。……負けてしまったがな。…すまない」
俺はそういって頭を下げた。
こんな自分が情けない。これが勝利の報告であれば、ニナにこのような顔を向けさせることもなかった筈だ。
これらは全て、俺の不甲斐なさが原因だ。
「違うよお兄さん。……謝るところはそこじゃないよ」
そういってニナは俺の元へ近づいてきて、そのまま腕を掴みながら目を合わせてきた。
「魔族のところに言っちゃダメだって……約束したよね! こうして生きてこれたからよかったけど……もしかしたら、死んでたかもしれないんだよ!」
そう言いながら、ニナは大粒の涙を目から流した。
いつも笑顔の彼女を泣かせてしまうとは、英雄にはまだまだ……いや、それを目指しているものとして、恥ずかしいばかりだ。




