第十六話②
何もない平坦な道を進む事数10分、まだ1時間も満たないうちに、視界の前に広大な自然が姿を現した。
この森を抜けた直ぐ先に、魔族のアジトがあるみたいだが、ここから村までの近さに恐怖を感じた。
こんなにも近い距離に、自分たちの命を脅かす者たちがいる事を知っている村の者たちは、正気を保てているのだろうか。
俺ならばストレスから眠ることが困難になってしまいそうだ。
尚のこと早く魔族たちを討伐してやりたくなった俺は、汚れなどを気にせず大胆に森に入り込んだ。
何処もかしこも草や木が生えており、人が進めるように整備された道は見当たらない。
奴らは何処を進んでやっているのかと考えたが、恐らく空を飛んできているのだろう。
人間ではかなり珍しいが、魔族の中では空を飛ぶ事自体は珍しい話ではない。
幸いな事にこの森に生物がいる痕跡は存在せず、魔族との戦闘前に力を使う事はなさそうだ。
……とはいえ、果たして本当に俺が魔族たちと渡り合えるのか、そんな考えがようやくはっきりと俺の中に湧いてきた。
勝てる勝てないではなく、あんな非道な事をする魔族を討伐しなければならないといった思いから、無我夢中で進んでいるわけだが、勝機はどれほどあるのだろうか。
魔族たちが何体いるのか、その魔族の力はどれほどなのか、そして何よりも、ボスであるルビニスターの実力はどれほどなのか。
俺はまだ戦闘スキルを磨き始めてから1ヶ月かそこらしか経っていない。
痛みを感じず、代償無しで身体を回復できるといった、ふざけた程に強力な力を持ってはいるものの、だからと言って相手を倒せるほどのパワーや経験を持っているとは決していえない。
ひとまず俺が警戒すべき事は、袋叩きに合う事を避ける事だろう。
村で一斉に襲われた時は、死ぬ気はしなかったものの、あの場で逆転出来る可能性はなかった。
なんとか戦うにしても1から3人同時までを限度にしたい。
そして何より、ルビニスターとは一対一で戦いたいものだ。
数多く存在する魔族の中で、高い地位を築けているという事は、それ程の実力があるという事だ。
第一、力が全ての魔族の上の地位にいるという時点で、弱い筈がないのだ。
理想としては下級の魔族たちを全て倒した後に、ルビニスターと対決をしたい。
そうでもなければ、ルビニスター含む複数体の魔族と戦うと言った、勝ち負け以前に殺されかねない状況に落ちてしまうだろうからな。




