第十六話①
「ワシとしては……いや、村の者達としては、有難い話ではあるのは事実じゃ。村の為に戦ってくれるのだからな……」
どうも含みのある言い方だ。
ご老人は、どの言葉も言いづらそうにしながら口にしている。
「だがの、若い命が犠牲になるかもしれないと言うことは……何とも耐え難い事でな……」
「大丈夫だ。その事なら安心しろ、必ず生きて戻ってくる。そしてまたこの宿に泊まらせてもらうつもりだ」
俺は不安を見せるご老人に、そのような言葉をかけてみせた。
単なる強がりでしかないが、こう口にする事で相手を安心させながら、俺自身も鼓舞しようとしているのだ。
するとご老人は少しばかり強張った顔を緩めて、話を続ける。
「……そうか。その時は、格安で泊まらせてやるからの」
「それは有難いな。だが、どうせならただにしてもらってもいいんだぞ」
お互いに、今まであまりみせて来なかった笑みを見せた事を最後に、俺は明日の為の支度を始めた。
早速明日には村を出てルビニスターの元へ行く、支度といっても荷物は殆どないが、兎に角作戦などを立てておきたい。
何としてでも勝ってみせる為に…。
――
翌日、俺はまだ皆が寝静まっている中宿を出た。
俺からすれば緊張の1日が始まったと言うのに、空は陽気に晴れている。
日差しを遮るように、改めてフードを深く被ってみせた後、俺は進み始めた。
「お兄さん!!」
後ろからそんな事が聞こえてくる。俺をお兄さんと呼ぶのは彼女しかいない為、振り向かずとも相手が誰かは理解した。
「それではニナ。元気でいるんだぞ」
「……うん。お兄さんもね!」
ニナの立場からすれば、いつ魔族が攻めてくるかもしれない場所に止まり続けるのだ。
それなのに、この村から離れていく俺を笑顔で見送ってくれる。
この村の為とは言わずとも、ニナの為のみでも魔族と戦える気がしてくる。
俺は手を挙げて大きく振りながら、別れの言葉をかけると、こだまするようにニナも同じ言葉を掛けてくる。
何だか心が温まった事を感じた後、闘志を燃やして俺は進み続ける。
ルビニスターの居場所は、この先南に進んで森を抜けた所にあると言う。
いつのまにか俺の服の中にそのような地図が挟まってあった。
恐らくルビニスターの手先の仕業だろう。
余程俺を自分の元に招待したいみたいだ。
その思惑が何なのかはわからないが、そんなことは関係ない。
俺は奴らと話し合いがしたいのではなく、討伐する事が目的なのだから…。




