第十五話③
この子もこんな表情をするのだなといった驚きと、こんな悲しい表情をさせてしまった罪悪感から、心の中は醜い程に掻き乱された。
謝罪を述べるべきなのか、直ぐにこの村を去るといってあげるべきなのか、最善の行いが何なのか、俺の人生経験からでは正解が見つけられない。
「ごめんね……こんな言い方しちゃって……」
涙ぐみながらも、いつもの笑顔に顔を戻していくニナの態度は、何とも悲しいものでとても見てはいられなかった。
「すまないなニナ……心配させてしまったみたいで……明日にでも出ていくよ」
俺はニナにそう伝える。
勿論逃げ帰るつもりはないが、ニナにはそういって上げないといけない気がしたのだ。
するとニナは、少し悲しそうな顔をしながらも、安心したような、緊張が解れたかのような態度を見せてくれた。
「じゃあお兄さん。今日はいっぱい遊ぼうね」
「あー……そうしよう」
これで最後だからといった言葉は、お互い口には出さなかった。
あたかもこんな日常が続いていくかのように、ただ単純に話したり、村を回ったりするなど、側から見れば下らない事をして遊んだのだ。
――
「聞いたぞ。明日村から離れるんだって?」
宿に帰宅してから暫くして、ニナが眠りについた後に、ご老人がそんな事を俺に問いかけてきた。
恐らくニナが伝えたのだろう、俺は今回の件をご老人には詳しく伝えておく事にした。
俺が1人で奴らのアジトに赴く事、そして出来る事なら奴らを討伐しようとしていることを話すと、ご老人は難しい顔を浮かべながら口を開いた。
「そうか……単身で乗り込むつもりなのだな……。無謀だとは思わないのか?」
「……思うとも、無謀というよりも、馬鹿だなと自分でも思う」
「ならば何故向かう。お前にとってこの村など、偶然立ち寄った場所でしかないのだろ?」
「……それはそうだ。だが、偶然とはいえ、俺はこの場所に立ち寄った。関わりを持ったのだ。それだけでも俺からすれば、十分守るべき理由になる」
複雑な顔を浮かべるご老人に、俺はある事を問いかける。
「そこで聞きたい事がある。アイツらが支配してあるのは、この村だけなのか?」
「いや……他にも10程の数、村や町を支配していた筈じゃ……それがどうかしたのか?」
それは悲惨なことではあるのだが、同時に安心できることでもあった。
何と言っても、奴らを仮に倒す事が出来たとしても、次に待ち受けているのは奴らのボス、名を確か『ギンギラ』といったか……そいつが確実に報復にやってくる。
この村しか支配されていないのであれば、この村の奴らがルビニスターを討伐したとして、ギンギラは報復にくるだろう。
だが、10以上の数支配されているのであれば、この村が討伐に関わっていると、まずバレる事はないだろう。
そもそも討伐に向かうのは部外者である俺なのだから、そんな考えを持つことすら気にしすぎだと言ったものだ。




