第十四話①
子供を狙った刃が今にも振り翳されそうになっている最中、それを止めようとする母親の悲鳴と、それを嘲笑う魔族の声、その音に紛れて俺は動いた。
逃げ遅れた子供を抱えながら、魔族の攻撃を避けてみせた後、魔族の喉元に攻撃を仕掛けた。
直ぐ側に置いてあった物干し竿を剣に見たてて突いてやったのだ。
「うぐがぁっ!!」と醜い声を上げた魔族を尻目に、俺は子供を村人の元へ預けた後、魔族の方面に体ごと振り向いた。
「見ているだけのこちら側でさえ、気分を害す程の愚行……あまりにも、目に余るな」
抵抗する者などいないであろうと思っていたのか、一部の魔族は俺のようなイレギュラーな存在に動揺を隠さないでいる中で、ルビニスターは高笑いをしながら俺の元へとゆっくり近づいてくる。
「お前は……この村の人間じゃねぇな、何もんだ? ケヒャヒャ」
「単なる冒険者だ。この村に偶然立ち寄ったわけだが、何だ村人に対するこの仕打ちは、虫唾が走る」
「部外者の人間なら、今回ばかりは逃してやっても構わなねぇ。今の俺の仲間に対する不敬な態度も見ずに流すさ。どうする、決めるのはお前だ」
「そうした場合、先ほどの親子はどうなる?」
「無駄な問いかけだな。当然殺すさ」
「そうか……ならばそうならないうちに、お前らを仕留めるとしよう」
俺は先ほどに引き付き、物干し竿を剣のように見立てて構えながら、相手をじっと睨みつける。
「やめておけにいちゃん! 勝てるわけがねぇ!!」
そんなことはわかっている。だがこのままではあの女性も連れ去られ、子供も殺されてしまう。
ならば俺がコイツらを止める他選択肢は存在しない。
「ケヒャヒャ……そう言った態度は嫌いじゃねぇ。あまりにも無謀な戦いを仕掛ける、勇敢な姿勢……まるで英雄みたいだな」
それを聞いた魔族は高らかに笑って見せた。
本気で英雄だなんて口にした訳ではない、単に俺を馬鹿にしているだけだ。
こいつらの言う通り、今の俺は英雄には程遠い。
だが、ここで黙ってみていられるほど、俺は賢くはないのだ。今は英雄の真似事であろうと、俺はこの状況を見捨てるような真似はしたくない。
「喋ってばかりで構えすらとらないとは……笑っては見せても、内心は恐れているのではないか」
「ケヒャヒャ……ウゼェなお前。……お前ら、コイツを殺せ、英雄気取りを沈めて、この村に希望などない事を、再度この村に覚えさせろ!!」
その声を合図に、辺りにいた魔族全員が束となってこちらへ向かってきた。
それぞれが大剣や拳を振り回して、俺に攻撃を仕掛けてくる。
それらを全て避けることは当然出来るはずもなく、俺は攻撃を受けながら、必死に相手に向かって攻撃を仕掛けた。
あまりダメージを与えられていないのがわかるが、それでも続けるほかない。
その中で隙を見せた剣を扱う魔族に、俺は攻撃を集中して与えて、その剣を奪ってみせた。
握り心地の悪い安物の剣だが、物干し竿と比べれば十分と使える。




