第十三話③
「……あの者達は、あそこに住んでいるわけではありません。自分たちの家は別にあり、しっかりそこの家の前には貢物を置いていました」
「ほぉ、そうか。ならばアイツらの住んでいる自宅とやらを教えろ。そこが本当に品物を用意してきたのかを確認する」
「……」
「どうした村長? まさかとは思うが…嘘なんてついてねぇよな?」
村長は沈黙を続けるが、相手の意見を否定しない時点でそれは、嘘をついた事を認めているのと同意となってしまっていた。
「……今回だけだぞ。おいお前ら! その人間を捕えろ」
「やめてー! お母さん!!」
「その子には何もしないで!! 私が行くからその子は離して!!」
「オメェがついてくるのなんて当たり前だろ? 餓鬼連れて行ったところで何の役にも立ちやしねぇ」
そう言って子供を払いのけて、女性の肩を掴みながら、荷台へと投げ込んだ。
子供は泣きながら親の元へ駆け寄ろうとするが、それを魔族は無慈悲にも邪魔しにかかる。
「いいかお前ら、改めて覚えておけ!! 俺たちに献上する品物が用意出来ない場合、その一家のうちの1人を我が軍の奴隷とする! いつ家に返してやるかなんてわからねぇ、それが嫌なら必死に品物を揃えろ!!……ケヒャヒャ」
皆が怯えて震える中で、先程の子供は魔族の隙をついて親の元へと駆け寄った。
「嫌だお母さん! 行かないで!!」
「コラッ、こっちに来たらダメよ! お願いだから村の人たちの側にいて!」
「いやだ行かないでー!!」
子供は母の元へと走り、それを捉えようとする魔族の事をポカポカと殴り続ける。
次第に魔族の眉間に皺がより初めて、次第に子供を払いのける力が強くなっていく。
「おいコラ餓鬼! いい加減にしねぇとお前も母親のところに連れてくぞ!!」
「そうして! 私もお母さんと一緒がいい!!」
「……ケヒャヒャ。お嬢ちゃん、お母さんの所へなんて行かない方がいいと思うぞ」
するとまるで仲裁に入るかのように、ルビニスターがその子供の前へ中腰になって話しかける。
「……どうして?」
「お母さんはこれからな、ずっと俺たちの為に働かなくちゃいけないんだ。女は繊細な作業に長けているから軽作業を繰り返してもらうことになる。長い時間続けていれば指の皮は捲れ、痛みが走り、骨にもガタがきてしまうだろう。それでもやめられないんだ、耐えられないだろ?」
慰めるように無情な言葉を吐き捨てるルビニスターに、魔族たちは楽しいそうにしながらケタケタと笑って見せた。
だが子供の意思は強いようで、そんなルビニスターにも屈せずに言葉を口にする。
「でもお母さんと一緒がいい! 離れ離れなんて嫌!」
「そうか……」
するとルビニスターは急に顔を曇らせて立ち上がり、その場からゆっくりと離れていく。
「ルビニスター様、どうして餓鬼なんざ庇うんですかい?」
「庇ってなんかねぇよ。餓鬼なんて連れてくつもりはないから、何とか言うことを聞かそうと思ったんだが……無理そうだな。殺せ」
その言葉を、ルビニスターは躊躇することなく口にした。自分の言葉の重みを知らぬ愚か者のように、軽く言って見せたのだ。
その言葉に従うように、魔族の1人が大剣を構えて子供にそれを振り翳そうとする。




