第十三話①
翌日、まだ朝になって間もないというのに、村人はやけに慌ただしく動いていた。
「早く荷物を外に運び出せ! もう直ぐにあの方がお越しになるんだぞ!」
「急げ急げ!! 何をちんたらしているんだ!!」
昨日は忙しくも温厚に見えた村人達は、慌ててしまっているからか、荒くれ者のように声を荒げて作業をしていた。
昨日ご老人から聞いた通り、皆も村を支配している『ルビニスター』への貢物を用意している様子だった。
各々家の前に大量の食料や衣服など、これでもかと積み上げて置いている。
「お兄さん何しているの? ここじゃなくて家にいた方がいいよ?」
宿の前で村人を観察していると、ニナが俺の元へとやってきて、そのように忠告をしてくれた。
俺はニナの頭を軽く撫でながら返事を返す。
「ありがとうニナ。ただ何の集まりか気になってな、このまま少し村の様子を見ていこうと思う」
ニナには魔族へ挑もうとしている事は伝えずに、俺はその場を離れようとした。
けれどニナは慌てた様子で、俺の袖を引っ張って行く手を阻んでくる。
「待って、本当にダメなの! 今日は宿にいて……お願いだから……」
何とも悲しそうに話す彼女だが、愛も変わらず表情は笑顔を崩さないままだ。
俺はいよいよ彼女のその行動に違和感を覚えながら、袖を掴む彼女の手をそっと退かした。
「すまないニナ。実は事情は知っているんだ……そこで少し調べてみたい事がある。俺は大丈夫だから、心配しないでくれ」
心配そうに向ける彼女の視線を払いのけて、俺は急いで村の中央へと足を運んだ。
ここには多くの人が大きな道を開けるように並んでいて、ここに『ルビニスター』が通る事は粗方予想はついた。
「おいそこの者、ルビニスターはいつくるんだ?」
「おい!! ルビニスター『様』だ!! 絶対にあの方の前では口にするなよ!!」
「……お前は外から来たものか? 今直ぐこの場から離れるんだ。何をされるかわかったものではない」
皆は俺にこれでもかというほど視線を集めた。
その視線のどれもが俺を心配するような弱々しい瞳であり、これからくる者の恐ろしさを物語っていた。
「いらっしゃったぞ!! 皆頭を下げろ!!」
皆は声を聞くと同時に、大慌てで頭を下げた。
それに合わせるように俺も頭を下げる。
それと同時に耳障りな音楽がこの村の門から聞こえ始めた。
弦楽器を乱雑に弾いたような、何とも聞くに耐えない音を響かせて、雪駄を履いた長髪の男を筆頭に、そいつらは現れた。
皆は床に額を擦り合わせるようにしながら、激しく震えており、何とか奴の気に触らないようにしているのか、身を丸めてなるべく存在感を消していた。




