第十一話②
あの旗……間違いない。
仲間と冒険を繰り返す中で、何度もこれに似た旗は見てきた。
魔族を現すかのような角に牙などの紋章、そして背景は黒を煮詰めて抽出したかのような、ドス黒く禍々しい色彩。
俺が今まで見てきた『魔族の旗』の特徴と一致している。
魔族の旗と言えど、種類は様々だ。
直接対峙したことは数える程しかないが、魔族にも派閥があるという事を戦いを通して知る事が出来ていた。
今まで2つの種類の旗を見てきたことがあるが、これはまだ見た事がない。
つまりは3つ目となり、3つ以上の派閥がある事が新たにわかった。
さて、どうしたものか。
魔族といえど、強さは様々だ。
俺でも勝てる相手なら戦ってこの村を救ってやりたいと思うが、強さが分からない以上安請け合いは出来ない。
それに村を一つ占領し、デカデカと旗を立てるようなものが弱いとは考えにくい。
本来ならば逃げる事が最も賢い判断なのだろう。
だがそれは英雄の取る行動と呼べるのだろうか。
せっかく生きながらえた命、貴重に使いたいものだが、そんな考えが脳をよぎる。
「お兄さん!」
すると旗を眺める俺の後ろから、彼女の声が聞こえてきた。
もう誰の声なのか判断がつく程なのだと思いながら振り向くと、やはりそこには宿にいた女の子が立っていた。
荷物を抱えながらいつもの笑顔を向けて、手を振ろうとしているのか体を揺らしている。
「何をしているんだ、お使いか?」
「うん! おじいちゃんにお願いされたからそこまで行ってきたんだ」
その子は子供1人が抱える量とは思えないほどの荷物を両手に抱えている。
中には大量の野菜などの食材が入っており、これ程までに買い込むとは、余程お買い得だったのだろうかと疑問がよぎる。
「今から帰るところだったんだ、持つぞ」
そう言って手を差し出すが、彼女は体を振ってそれを拒否する。
「ダメだよお兄さん。お兄さんはお客さんなんだから、私の手伝いしちゃダメなんだよ」
「そうか? なら手伝いではなく、俺がそうしたいからならどうだ。俺は体を鍛えていてな、それが持ちたくてたまらないんだ」
「えー、嘘だー」
「嘘じゃないとも」
「うーんとね……なら、半分こしよ!」
彼女の提案にのって、俺は荷物の入った袋を半分手に持った。
彼女は何が楽しいのか、笑顔をこちらに度々向けてくる。
こんな笑顔を向けられて仕舞えば、俺の中からこの村を助けないと言った選択肢がなくなっていくではないか。
けれど、それも不快な感じはせず、俺は彼女と宿に向かって歩いていた。




