第十一話①
「だが、俺の頼みを聞いてくれたら、特別に半額にしてやる」
「半額に……一体何を頼むつもりだ?」
あまりに割のいい話に、俺は少しばかり相手に対して警戒心を向けてしまう。
けれどそんな事は失礼だったと思う程に、相手からは優しい提案を告げられたのだ。
「簡単な事だ、お前外から来たんだろ? ならあの子に目いっぱいその話をしてやってくれ」
「あの子……さっきの女の子のことか?」
「そうだとも、いい子だったろ…?」
「あー、笑顔を絶やさずに向けてきてくれて、話していて楽しい子だった」
何を要求されるのかと思えば、あの子に外の話をしてほしいなどといった、まるで子供や孫を思いやる父性を感じさせる言葉に、俺は先程までの警戒心が恥ずかしく感じてしまった。
すると店主は、何故だか悲しそうな顔を浮かべながらあの子について語り始めた。
「あの子はな、村から一度も出た事がないんだ。だから外の世界の楽しさも悲しさも、何も知りゃしねぇ、今年で12だってのに……それはあんまりだとは思わねぇか?」
「……ならば外に連れて行ってやればいい、話すよりもそちらの方が……いや、違うか」
「そうだとも、それが出来ねえから頼んでんだ」
村の事情は分からないが、何か問題を抱えている事は察しの悪い俺でも分かるほどに明確になっていく。
「どうする? 俺の話を飲むか飲まねえのか?」
「……飲むとも、元から外のことについては聞かれていたのでな、言われずともやるつもりだった事を聞くだけで安くなるのなら、その方がいい」
「感謝するよ……」
断る理由など少しもない俺は、躊躇う事なく頷いた。
そして何か問題があるのなら、あの子の為にも少しばかり力を貸してやりたいとも思い、事情をあの子から聞ければいいなとも考えた。
――
「完璧に仕上げるのには3日はほしい。他にも武器の手入れの依頼はきているからな。最短でもそれくらいはかかる」
「わかった、ならまた3日後にここにくる。その間に約束も果たしておく事にする」
「あー助かるよ」
手続きも終わり、俺はその店を後にした。
武器を預けてしまった以上、ひとまず魔獣との戦闘は叶わなくなった為、俺はこの村を見て回る事にした。
一周するのに数十分もあれば余裕で回れる程の小さな村で、来た時の印象と同じくあまり栄えている様子はない。
ただ歩いているうちに一つだけ気がついた事があり、これが皆の苦労している原因だと確信した。
何やら見覚えのある旗が、村の中央に建てられていたのだ。
それも違和感を感じるほどに、村のものと比べて綺麗でそれだけが丁寧に扱われている事がわかった。
これは紛れもなく、魔族の旗なのだ。




