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REBORN  作者: ソラニヤマイ
序章 最後の時
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第一話④

 ダンジョンの中へ入ってから、どれほどの時間が経過しただろうか。

 明確な時間は計れていないが、今で恐らく10時間近くは経っている筈だ。


 普段もこれ程の時間がかかる事はよくあることだ。

 だがそれは、ダンジョンで出現する魔物などを討伐するなどしていて時間がかかるからであり、単純なダンジョンの距離の長さで、ここまでの時間がかかる事は今まで一度としてなかった。


「一体どこまで続いてんだよ……魔物も1匹も見当たらねぇし、つまんねぇ……」


 ただ先へと進むだけの作業にイラつき始めたのか、キズナはブツブツと独り言を垂れ始める。


 だが確かに妙だ。本来ダンジョンというものは、定期的に魔獣などが現れ、それらを狩って先へと進むもの、これ程までの距離で1匹も魔獣に遭遇しないダンジョンは初めてだ。


「リーダー1つ聞きたいんだが、ここの情報は『地獄の門』の話以外は何もないのか?」

「そうだな。私が聞いた話はその話と、最奥にダンジョンボスがいる事だけだ」

「何だ!? ここにはボスがいるのか!! そういう事は先に言えよリーダー!!」


 ダンジョンボスの話を聞いて、キズナは先程まで怒っていたのが嘘のように上機嫌になる。

 

 ダンジョンには時折ボスと呼ばれるものが存在していることがあり、そいつを倒せば希少な素材や、多くの経験値を獲得することができる。


 その為俺自身も、普段はダンジョンボスと聞けば気分が上がるのだが、今はそんな気分でもいられない。

 リーダーでさえも、このダンジョンの異変の正体を知らないとなると、警戒心を最大限まで強めないわけにはいかなくなるからだ。


「私のレベルは今でようやく79になる。ボスを倒せば、ようやく80の大台に突入できるかも知れない」

「アタシも70レベルが見えてくるぜ!!」

「だが大量の経験値を得られるかも知れない代わりに、それ程までの相手と戦うことになるんだ。気を引き締めて行かなければ」

「ったくわかってるよ。いいな、既に80過ぎてるやつわ、余裕があって」


 そんなつもりで言ったのではないが、どうやら怒られせしまったみたいだ。


 長年積み重ねてきたものではあるから、自分のレベルを誇らしく思う事はあるが、別にレベルのことを自慢しようだとかは思った事がない。


 それに俺はレベルが高いだけで、皆のように戦えやしないからな。

 魔力が無駄に高いだけの、見せかけの高ランカーでしかない。


「おっ!? ボスはあそこにいるんじゃねえか?」


 キズナが指をさした先には、大きな扉があった。

 キズナのいう通り、あのような場所にボスがいる事は多い、その為あの扉は慎重に開かなくてはならない。

 開いた瞬間ボス戦が始まる事になるからな。


「少し休んでから行こう、私はもうクタクタだ」


 扉を発見して直ぐに、リーダーはその場に座り込んだ。

 俺としてもここで一度休んでからボスには挑みたい。もう体力的にも、極度の緊張により精神的にも限界だ。


「つまんねぇ事言ってんじゃねぇよリーダー。休憩なら、ボスを倒してからでも出来るだろ?な!!」


 キズナは圧をかけるように話すと、リーダーは面倒くさそうにしながら立ち上がり、仕方がなさそうに早速向かう事を許可した。


「良かったのかリーダー? キズナは兎も角、俺たちはもう体力の限界だぞ?」

「だったらお前から説得してくれ。あいつは一度言い出したら聞かないじゃないか」

「それじゃあ行くぞー!!!」


 キズナは叫びながら扉へ向かう。確かに会話が出来そうにない事を理解して、俺たちも渋々扉へと走った。


「……ヒロさん。万が一の事があっても、私は回復しなくて大丈夫ですからね」


 走っている途中、急にスズナはそんな事を言い始めた。

 どうしてしまったのかと思っている間に、キズナは俺たちに確認もしないまま、早速扉を開けてしまう。


「お前ら会話は後にしろ。…始まるぞ」

 

 これから始まる戦闘のために皆は構えをとったが、扉の中を見て、皆はその構えを一瞬にして緩めてしまう。


「……何だこれは?」


 扉の先には、大きくそしてドス暗い、不気味な渦が蔓延っていた。

 重力が捻じ曲がったかのような歪なうねりに、皆は冷や汗を流しながら息を呑んだ。


「あ?ボスじゃねえのか?」

「何をしているキズナ!! 早く扉を閉めろ!」


 何も考えていないようにキズナはボーっとしながらその渦を眺めていたが、リーダーの指示により、仕方がなさそうに扉を閉めようとする。


 だが、勇者の叫びも虚しく、キズナが扉を閉めようとしたところで、扉はそのまま渦に飲み込まれてしまった。


 その瞬間、皆がこの渦はものを引き寄せる性質である事を理解したのか、その場から離れるようにものに掴みかかるなどをして、その渦に引き込まれないよう行動を起こす。


 その咄嗟の判断は正しかったらしく、もれなくして、その渦は辺りのものを吸収し始めたのだ。


「お前ら気をつけろ!! 引きずり込まれるぞ!」

「そんな事わかってんだよリーダー! 早く解決策を考えてくれ!!」


 服は渦の方へと引っ張られ、足を踏ん張っている為耐えれているが、片足でも上げて仕舞えばそのまま渦に引き込まれそうになってしまう。

 

「ひとまずこの場から離れるしか方法はなさそうだ。申し訳ないが、リーダーとキズナは、俺とスズナのサポートをしてくれ、俺たちの筋力では長くは持たない」


 勇者であるリーダーと戦士であるキズナは、徐々に強くなりつつある渦の引き込む力に軽々と対応できているが、俺とスズナはそうはいかなかった。


 今でも引き摺り込まれそうになっており、俺はなんとか壁にしがみついて耐えているが、地面を掴んでいるだけのスズナは、今にも渦に引き込まれてしまいそうだ。


「仕方ねぇなぁ。ほら! 早くアタシに捕まれ!!」


 そう言ってキズナはこちら側に手を伸ばしてくれたが、まだ届きそうな位置ではない。


「届くなら、とっくに掴んでいる。もう少しこちら側に来てくれ」

「ったくしゃあねぇな!!」


 キズナは慎重にこちら側まで来てくれ、俺の手を掴んでくれた。

 流石というべきか、手を握られた途端、渦に引き込まれかけていた感覚すら忘れるほどの安定感を得た。

 どれ程までのパワーがあるのだろうか、本当にそこがしれない。


「後はスズナだ。私の手を取ってくれ」


 勇者はそう言って腕を伸ばすが、スズナは中々勇者の手を取れずにいた。未だ2人の距離が遠いのが原因だ。

 俺とキズナの位置からでは到底届くはずもなく、俺たちはただ2人を見守ることしかできない。


「すみません……私……もう」

「大丈夫だ。もう少しだけ手を伸ばせ」

「はい……」


 必死にスズナは手を伸ばした、けれど2人の手が触れかけたその瞬間の事、スズナの片足が渦に引き込まれたのか浮いてしまい、そのまま渦の方へと吸い込まれてしまう。


「スズナ!!」

「ちょっと何やってんだヒロ!」


 俺は何が出来るかもわからないのに、キズナの元から離れて、スズナの元へ飛び出した。

 渦の元へと身を乗り出したからか、感じたことのない速さで体は吸い込まれていき、スズナの体を守るように抱きしめた後、何とか床にしがみつく。


「スズナ……大丈夫か!?」

「ごめんなさい……また私……」

「お前ら、すぐこちら側に戻れ!!」

「吸い込まれちまうぞ!!」


 2人の叫びに応えようと手を伸ばすが、あまりに離れてしまったこの距離では届くはずもなく、その後間も無くして、俺たちは容易く渦の中に飲み込まれてしまった。

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