第十話③
「俺は冒険者でな、ここからは随分と離れた場所からやってきたんだ」
「凄い、お兄さん冒険者なんだ! 外から人が来るなんて珍しいから、私びっくり!!」
そう言って大袈裟なリアクションをとった姿は何とも愛らしく、子供のあるべき姿だと思うほどに無邪気なものだった。
「外から人が来るのは珍しいと言う事は、君はこの村出身なのか?」
「うん、私ずっとここにいるから外の事は知らないんだ……。だから、外の話聞かせてよお兄ちゃん!」
「それは構わないが、する事があってな。その後でもいいなら……」
「うん! 楽しみにしてるね!」
今日は少し早めに修行を切り上げなければならないな。
ここで俺は鍛冶屋に用がある事を思いつき、この子に聞いてみることにする。
先程のご老人と違って答えてくれるだろう。
「君、鍛冶屋が何処にあるか知らないか? 武器の手入れをしたいのだが……」
「かじ……や?」
「えっと、武器とかを取り扱ってるお店のことだ」
「えー……あっ! 思い出した、武器をいっぱい持ってる人の家なら知ってるよ!」
「本当か? ならそこまで案内してくれないか、礼はするぞ」
「いいよ別にお礼なんて、ついてきて」
ご老人と違って謙虚なものだなと思いつつ、そう言った態度を取られて仕舞えば尚のこと何か礼をしなければと考えてしまう。
彼女についていくと、5分ほどで目的の場所についた。
「ここだよ、お兄さん」と彼女の指差す方に目を向けると、外装が黒く汚れた建物が立ってあった。
煙突からはもくもくと体に悪そうな煙が立ち上っていて、それらは隣の屋根を黒く染めていっている。
「ありがとう。鍛冶屋で間違いなさそうだ、助かったよ」
「どう致しまして、それじゃあ私は家に戻ってるから、帰ったら外の話聞かせてね!!」
そう言って手を振りながら、小走りでその場を去っていった。その際も彼女は笑顔を絶やすことなくこちらに向けてきていて、本当に元気な子だなと、何だか元気を貰えた気がした。
「おいあんちゃん、外から来たのかい?」
すると中から作業服を見にまとった中年男性が、顔についた汚れを拭いながら外へと出て話しかけてきた。
「えー、冒険者なもので」
「そうか……ひとまず入んな、後ろに背負ってる武器の手入れだろ?」
俺は言われるがまま中へと入り、その際に武器を相手に手渡した。
店主は被せてある布を丁寧に捲り、じっくりと観察する。
「上等なものだが……あんちゃんこれ、長いこと手入れしてないだろ?」
「やはりわかるのか? 入手した時期とあまり変わっては見えないから手入れを行っていなかったのだが、差は出るものか?」
「勿論出るとも、それも圧倒的な差だ。いくら力を入れようともきれなかったものが、力を入れずとも切れるようになる事もあるくらいだ」
そんなにも差が出るものだとは知らず、俺は少し恥ずかしい気持ちになった。
自分は戦ってはいなかったとはいえ、仲間の活躍を見ていながらそれすら知らなかっとは、何とも情けない。
「少し時間を貰う、それから完全に仕上げるのなら金もかかるな……」
「……いくらだ?」
「30万ゴールドはほしいな」
「30もか……」
予想していたよりもはるかに高い、武器の手入れの為なら仕方がないと出したいところではあるが、手持ちが足りないのだ。
一体どうしたものかと頭を捻られせていると、店主はこんな提案をし始めたのだ。




