第九話④
ただひたすらに走り続けて出口を目指し、その際に何体かの魔獣に出くわしたが、特に手こずる事もなくそのまま先を目指した。
数十分程が経過したのかもしれないが、体感としては一瞬で出口へと辿り着いた。
5階にいた魔物はオーク亜種を除き、既に殆ど弱っていた為、逃げるのに手こずる事はなかった。
そして下の階層の魔獣は、元から然程強い魔獣でもない為、逃げるだけなら容易なものだった。
俺はゆっくりと扉を開いて、勢いよく飛びだした。
高々数時間ぶりではあるのだが、閉鎖的かつ敵しかいない空間からようやく抜け出すことが出来て、感じたことがないほどの解放感に当てられた。
既に日は落ちていて夜が訪れており、肌寒い程の風を感じたがそれすらも愛おしい。
俺はゆっくりと塔の方へ振り向いて、思いを馳せた。
俺にとって初めてのクエストクリアとなるわけだが、課題は山積みだ。素直に成功を喜びたい気持ちもあるが、それよりも反省の点が多く見えた。
だが、一度のクエストでこれ程までに反省するべきところや、自分の長所や自己分析が出来たのは大きなことだ。
もっとこのような事をこなせば、俺はある程度の高みを目指せるかもしれない。
いや、目指すのだ。
ある程度ですらなく、俺の目指す英雄と言った高みへ。
俺は夜空を見上げて月を探した。
見つけた月の位置からするに、まだ深夜とまではいかない時間帯のようだ。
これなら今から依頼主に会いに行っても嫌な顔はされないだろう。
俺は先日依頼を受けた人数の少ない通りを目指して歩き始めた。
――
「驚いた……失礼な発言だとは思うんだがな。いやぁ……驚いた。正直生きて帰ってくる可能性は限りなく低いと思ってたからな」
依頼主は俺を見るなり、幽霊を見るかのように驚いた反応を見せていた。
実は依頼主はあの後、どうせ俺は帰ってこないと思い、他の冒険者にも依頼をしたのだという。
何とも失礼な話ではあるのだが、相手の驚いた顔を見ると、何だか見返せたかのような優越感に浸ることが出来た為、特に何も言わないことにした。
「これが依頼の品だ。確認してくれ」
「……あー、間違いなく俺の頼んでいた薬草だ。それもこんなにとはな。報酬には色をつけておく、詫びの意味も込めてな」
「手持ちがあまりに少なかったからな、感謝する」
俺は依頼完了の手続きを簡単に済ませて、報酬を受け取った。本来適切な書類などに依頼完了の記載をしないといけないのだが、これは正規のルートの依頼ではない為、そのような堅苦しい手続きは存在しないみたいだ。
「それではなにいちゃん、感謝するぜ。案外人の実力は見た目じゃねぇって気づかせてもらったからな」
「俺も見返してやるという事は、随分と気持ちがいい事を気づかせてもらった。感謝するぞ」
そんなやり取りを最後に、俺はその街から離れていった。
正規のルートではない依頼を受けた足がつかないようにする為もそうだが、何よりも俺は1つの場所に長い事止まるつもりはない。
俺には目的があるのだからな。




