第八話③
そして、この魔獣の種族は一体何なのか。
俺は自身の知識を最大限まで活かして考えてみたが、コイツに該当する魔獣は今まで見たことがないし聞いたこともない。
強いていうのならオークだろうか。だが俺の知るオークは単眼ではなかったし、何よりここまで重量はなかったはずだ。
だがここは一旦仮にオーク亜種として考えよう。
そのように考えた場合、やはり動きは素早くないのだろうか。そして従来のオークなら一撃の攻撃があまりに重く、直接攻撃を受けて仕舞えばただでは済まないものとなるが、やはりこいつもそうなのだろうか。
いや、こいつの威力は並のオークでは敵わないものだろう。俺の骨は一撃の攻撃で全て粉砕されてしまうかもしれない。
そうなれば回復するまで時間がかかり、どうなってしまうのかわからない。
すると突然「グググググルルゥゥゥゥゥ」と、何処からか鳴き声が聞こえ始めてきた。それはこちらへとゆっくりと近づいてくる。
恐らく先ほどのゴブリンリーダーか何かだろう。
もう動けるようになったのかといった驚きもあったが、それよりもこちらに向かってきているのはあまりにも不味く、それによる動揺が湧いてきていた。
ここで戦うことになればオーク亜種は目を覚まし、俺の存在に気が付いてしまう。そうなればコイツと戦わずにクエストを完了させると言った目標が早速達成出来なくなってしまう。
正直コイツが目覚めて仕舞えば勝ち目はないどころか、逃げることすら難しくなってしまうだろう。
俺は慌てて先ほどの位置へ戻ろうとした。この近くで戦うわけにはいかないと思ったからだ。
けれど物事はそんなに上手くはいかないようで、向かおうとする俺の背の方から、ズシリと動く何かの音が聞こえてきたのだ。
俺は恐る恐る後ろを振り向くと、先程まで横になっていたオーク亜種が、毛だらけに立ち上がっているのだ。
それも片手には岩で出来た棍棒を持ち、グッと背伸びをしながらあくびをかいている。
俺は咄嗟に部屋の隅に身を寄せた。何とか視覚に入ってくれと願いながら息を殺す。
オークはゆっくりとこちらに向かって歩いてきた。やはりゴブリンリーダーの鳴き声で目を覚ましたのだろう。
そちらに目掛けてゆっくりと歩いていっている。
オーク亜種の体温を感じる、それ程まで今近くにいるのだ。
歩くたびに響く足音と、微細な揺れに動揺しながらも、オークが過ぎ去るのをじっと待つ。
少しして、ゴブリンリーダーの鳴き声がピタリと消えた。
その代わりに何かを引きちぎるような音が聞こえてきたが、今はそんな事を気にしている時間はない。
今この場にオーク亜種はいない。俺は部屋の隅から離れて先程までオークがいた部屋へと足を踏み入れた。
今なら薬草を採取できる。
戻ってくる可能性はあまりにも高いが、どの道今しか薬草を採取するタイミングは存在しないだろう。
俺は慌てて薬草をひたすらにむしり取り、全てマントの中の収納スペースに収めていった。
するとここで、再び足音が近づいているのを感じた。
俺は先程と同じく部屋の隅に隠れようとしたが、一足遅かった。
部屋の入り口には、俺をじっと見つめながら、ゴブリンリーダーの亡骸を喰らうオーク亜種の姿があったのだ。




