第八話①
狭い通路ということもあり、本来こう言った中での対人戦なら、相手は味方に当たってしまう事を恐れて通常の実力での攻撃を仕掛けることが困難になるだろう。
だが、コイツらは知能を持った人間じゃない。魔獣なのだ。
コイツらは群れになっている事から敵同士でない事は分かるが、それと同時に味方同士でもないのだ。
敵でもないから群れていても気にはしない。そんな関係性だから、同種に攻撃が当たってしまうことよりも身の保身を優先して、攻撃を進めてくるのだ。
敵は皆、周りに同種がいることなど気にも止めずに、無作為に俺に攻撃を仕掛けてくる。
俺が避けた攻撃は見事に他の魔獣に当たり、俺が攻撃を受けてしまったとしても、相手は攻撃の際に同種に攻撃を当ててしまっている。
俺自身の攻撃は殆ど通じていないが、奴らは満身創痍とはいかないまでも既にボロボロになってきている。
敢えて敵のすぐ側で攻撃を仕掛けて、攻撃を受けて仕舞えば回復をする。
それだけの事をただひたすらに繰り返し、奴らの中からとうとう立っていられなくなった者が現れた。
散々同種からの攻撃に直撃しており、額や体から大量に血を垂れ流している。魔獣でも貧血を起こすみたいだ。
その後暫くして、次々に魔獣達は地面に膝をつき始めた。皆は既に傷まみれだが、それと同時に体力の方も限界がきているらしい。
俺はこれ以上の攻撃をやめて、そのまま先へと進んでいった。
俺自身の攻撃では相手にダメージを与えることは出来ない、その為相手の攻撃を利用して戦っていたが、相手が攻撃を繰り出せなくなった時点で、俺があの場でやれる事は無くなった。
それでも、もう十分なほど相手を弱らせる事に成功しただろう。
妙に上手くいって気分が上がっているが、これは運が良かっただけだ。
調子に乗ってはいけない。
俺はそんな事を考えながら数十メートルにも及ぶ距離をひたすらに走っていった。
すると、他の階では階段があった位置に、1つの部屋が見えてきたのだ。
扉などはなく、何もせずとも部屋の中を直ぐに覗けるようになっている。
何か独特な、鼻を刺激する酸っぱい匂いがそこからは放たれており、俺は無意識に鼻のあった位置を押さえこんだ。
今日俺は初めて、この先へ進む事を躊躇してしまっている。先程から何度か先へ進む際に覚悟を決めたりなどをしたが、今回は何処か違う。
崖へ自ら飛び込むかのような、そんな自ら死ににいくかのような行動を起こそうとしてる気分になるのだ。




