第七話③
その後先へと進んだところで、先程の俺はとても運が良かった事に気がついた。
先へ先へと進むほど魔獣の数は増え、それも先程俺が苦戦したゴブリンリーダーやその格上のゴブリンボス、そしてスライムリーダーなどが複数体群れて行動しているのだ。
この状態で戦う事になっていたら、俺はなす術なく逃げるしかなかっただろう。
いや、もしかしたら逃げることすら叶わなかったかもしれない。
数としては見たところ10には達しておらず決して多くはないが、個々の力が強大な為、今の俺ではまず勝てないだろう。
そうなれば今回ばかりは戦うことをせずに、ボスのエリアまで急ぎ、薬草を採取しようか。
だがそんな事は叶うのか?
この数を潜り抜けて、そして見事ボスエリアまで辿り着き、そのボスともまた戦わないように薬草だけを採取する。
あまり現実的とは思えない。
俺はクエスト失敗を視野に入れるべきだと考え始めていた。
だがこれは俺にとって始めての個人で受けるクエストだ。
出来れば最初のクエストは成功を収めて終わりたい。
……仕方ない。一度戦ってみるとしよう。
あまりに馬鹿げた事だとはわかっている。
戦うと言っても、勝利を収めるつもりもなければ敗北するつもりもない。
ただ適度に相手にダメージを与えて身動きに制限をかけた後、ボスのエリアへと向かう。
そうして追っては来れなくなった奴らに気を取られる事なく、薬草を採取してこの塔から脱出するのだ。
あまりにも無謀だ。俺らしい行動とは思えない。
恐らく初めて1人で受けるクエストという事と、早く強くなりたいと言った焦りからこんな馬鹿げた行動を取ろうとしているのだろう。
理解はしているが、それを制御できない。
そして何よりそれを、今の俺はあまり悪い事だと考えいないのだ。
闘争心に似た無骨な何かが心を満たし、俺は敵の前へと姿を現した。
「大して広くもない道で群れるなど、そんなにも1人が怖いか? 魔獣ども」
言語が伝わるはずもないが、相手は俺が喧嘩を売っているという事を瞬時に理解した様子を見せた。
ゴブリンリーダーが3体、ゴブリンボスが2体にスライムリーダーが3体、馬鹿げた数が目の前に群れをなしている。
その中に俺は体を放り投げるかのようにして飛び込んだ。
密集した中に飛び込むなど自殺行為に思えるかもしれないが、生憎そんな事をするつもりはない。
これはれっきとした俺の作戦なのだ。




