第七話②
地獄に落とされた際に、スズナは天井を崩して攻撃を仕掛けた。
俺もそれに似た、地の利を生かした方法を試す他ない。
今の俺の攻撃手段には限度がある。
その為身の回りのものを何とか利用する形で戦わなければ、自分よりも強大な敵に勝利する事は難しいだろう。
魔獣では出来やしない、知恵を使って俺は勝利を収めてみせるのだ。
相手は再び攻撃を開始した。
大きな棍棒をまるで木の枝を振り回すかのように軽々と俊敏に、そして的確に俺を狙ってくる。
相手もそろそろ決めるつもりなのだろう、先程よりも攻撃の質が上がっている。
俺は後ろへ大きく下がりながらも、相手の攻撃の隙を探す。
ここで俺の視界にあるものが映り込み、咄嗟の判断でそれを利用する事にした。
何とか思いついた事を実行させる為に、相手を上手く誘導させながら俺は地道に後ろへ下がっていく。
そしてようやく隙が見えたその瞬間、俺は行動に移った。
俺が誘導していた場所は、自分がこの階まで登ってくるのに利用した螺旋階段だ。
そして今、相手はその階段に足を踏み入れながら、足を大きく踏み外したのだ。
無理もない、俺が直前まで相手の位置からでは階段が見えないように、壁際をはって進んでいたのだ。
相手は突然現れた階段に驚いた顔を見せながら、重心を大きく乱れさせながらふらつき、今にも倒れてしまいそうになったところで、俺は体に掴み掛かった。
相手の足を蹴るようにしながら、体を階段方面に向けて、重心を掛けて飛びつく。
それにより、相手の大きな体は階段側へと吸い込まれるかのように傾いて、一気に転がり落ちた。
重く、巨大なその体は、落ちるだけでも物凄い音を上げており、螺旋になった階段をとてつもない勢いで下っていく。
体に飛び乗った俺の体はそれに巻き込まれていき、壁や階段にぶつかる度に骨は砕けていった。
だがそんな事は問題ではない。
4階まで落ち切った時、ようやくその体は動きを止めた。
ゴブリンリーダーがその場に横たわる中、俺は堂々と立ち上がった。
相手は身体中をあざだらけにして、ピクピクと動くだけで直ぐには立ち上がれそうにはない。
そしてこんな巨大に巻き込まれながら階段を落ちていった俺だが、既に女神の力を使い、万全の状態まで回復し切っていた。
この戦いを通して、俺は1つ気がついたことがある。
今の俺の最も効率的かつ、有効的な攻撃手段は、このような捨て身の技だ。
捨て身の技といえば、自らが怪我などを負うリスクを負いながらも、相手にダメージを与えるものとなっているが、今の俺にはそのリスクが殆ど存在しない。
つまりは相手にダメージを与えるのみで、俺自身はこうして立ち上がることが出来る。
今の俺ならこのような反則じみた行動をとることが出来るのがわかった。
これは俺にとって、大きな進歩となるだろう。
「それでは……すまないが終わりにさせてもらおう」
俺は相手に止めを刺すために、既にむき出しになっている首近くの傷跡に目掛けて、勢いよく剣をつきたてた。
それも一度では貫くことが叶わないため、何度も何度も繰り返し同じ行為を行い、ようやく相手が息を引き取る事を確認すると、俺は行動を止めた。
あまりにも残酷で、決して綺麗な勝利の収め方とは言えないやり方だ。
誰かに誇れるような勝利とは言えないだろう。
だが、こんな戦いをしなければならないのは今だけだと自分に言い聞かせる。
あの物語のような、勇ましく誇らしい、そんな勝利をおさめられる人間になる為の行動なのだと。




