第七話①
先に動きを見せたのは相手からだった。
俺という存在を警戒していないのか、読み合いのような事はしようとせず、大ぶりの攻撃をいきなり仕掛けてきたのだ。
そんな馬鹿にしたような攻撃にも、俺は恥ずかしいことに腕を掠めてしまう。
巨大な体をしているが思いの外動きは素早く、今の俺では対処しきれなかったのだ。
ひとまず俺は回復をする素振りを見せないで再び構えを取る。
回復する程の怪我を負っていないと言うのもあるが、ここで回復して仕舞えば相手は警戒をしてしまうと考えたからだ。
相手が俺を舐めている今こそが好機なのだと、改めて気合いを入れる。
俺はじっと相手を見つめて、攻撃を仕掛けるタイミングを見計らう。
相手は適当な攻撃を度々仕掛けてくるが、これ程の攻撃なら致命傷になるほどのダメージは負いそうにない為、気にせずただ一点に相手を見つめる。
そして相手が攻撃を外し、壁に武器をめり込ませたその瞬間俺は飛び出した。
足をバネのように弾ませて、勢いよく相手の首に目掛けて剣を突き刺したのだ。
だがあろうことか、致命傷を負わせたはずの俺が、次の瞬間には壁に突き飛ばされていた。
一瞬のことで何が起きたのか判断しかねたが、どうやら相手の首をまともに刺せていなかったらしい。
相手が俺を舐めているように、俺自身も相手を舐めてしまっていたみたいだ。
下で散々やり合ったゴブリンよりも、少し硬い程度の外皮だと思っていたが、それは見当違いだった。
ゴブリンリーダーの皮膚はゴムのような強い弾力性があり、並みの力では剣で傷つける事は、ましてや突き刺すことなど叶わないみたいだ。
俺は悩みながら体を回復させる。
体が動かない程のダメージを負ってしまった為、仕方がなくの行動だが、これをきっかけに相手に大きく警戒されてしまうかもしれない。
相手はまだ事態を理解できていないのか、不思議そうにこちらを観察しているが、時間の問題だろう。
俺は回復しきった体を、あえて辛そうにして立ち上がる。
なるべく相手に自分が万全の状態まで回復したと思わせてはならない。
相手が本気を出せば、俺は遂に手も足を出せなくなってしまう。
そうなって仕舞えば、いくら回復しようと永遠と体を破壊され続ける無限地獄のような事態に陥ってしまうのは目に見えている。
「さて…どうしたものか」
急所を狙っても効果がなかった事を知ったわけだが、これからどうしたものか。
俺は一度冷静になり、存在しない脳を回転させる。
俺自身の力は並の人間よりかは少し強い程度、剣も未だレベルは初期値のままだ。
こんなステータスでどうやって相手にダメージを負わすことが出来るのか。
情けのないことに、思いついた事はただ1つだけだった。
そして俺はじっと壁や天井を見つめたのだ。




