第六話③
あれからまだ、数体しか倒していない。
それなのに、もう2階へ進む階段が見えてきたのだ。
今まで1人で魔獣と戦った事など殆どなかった俺が、こんなあっさりと1階を達成出来る事に.あまりにも違和感を覚えていた。
あまりにも簡単過ぎはしないだろうか?
俺はまだこのダンジョンに入ってから、一度も神の刻印を使用していない。
本来の自分の力でここまでやる事が出来たのだ。
そう言った自分の頑張りを本来なら少しは褒めてやりたい気分になるが、達成した事と自分の頑張りの度合いがあまりにも不釣り合いで素直に喜んでもいられない。
こんな難易度が本当に4階まで続くのだとすれば、5階も簡単だろうと思ってしまうのにも納得がいく。
俺も5階からはレベルが変わってくると言った話を聞いていなければ、そう思っていた筈だ。
何せその情報が本当に正しいものなのかと、疑い始めているのだから。
――
俺はその後も現れる魔獣を全て討伐しながら先へと進み、あっという間に4階まで辿り着いた。
掛かった時間はおよそ1時間程度だろうか。
5階まで続くダンジョンで、4階に到達時点で1時間程しかかからないというのは、かなり稀な事だろう。
通常のダンジョンならば、難易度と広さによっては、日を跨ぐこともあるのだ。
結局最後までゴブリンやスライムと言った下級の魔獣しか現れる事はなく、体力を消費したが攻撃など殆ど受ける事はなかった。
さて、ここで一旦気合を入れ直さなくてはならない。
今のままの気分で5階に挑めば、慢心により足元を掬われる事になるだろう。
ここまでは前座だ。
恐らくダンジョン側が仕掛けた罠のようなものだろう。
あえて下の階を簡単にして5階へとおびき寄せ、油断させた隙をついて狩るといった、何とも単純でいて利口な手口だ。
俺は神の刻印を使用して体力や細かな傷も全て癒し、心を落ち着かせた上で5階へ続く階段へ足を踏み入れる。
階段はこれまでのものと変わらず、幅は人が4人ほどなら並んで歩けるほどの広さで、螺旋状の形状になっており、次の階は登り切らないと全貌がわからなくなっている。
階段を登っている時が、このダンジョンの中で最も警戒し、そして緊張してしまっている。
先が見えない恐怖もさることながら、何よりここで挟み撃ちにでもあったらと思うと、気が気でいられなくなる。
足場も悪ければ、広さもあまりない。
ここでの戦闘は非常に困難となってしまうだろう。
そんな恐る気持ちと共に足を進めていくうちに、ようやく5階の姿が見え始めていた。




