第六話①
町から歩くこと約1時間、ようやく目的のダンジョンが見えてきた。
体力的な面では神の刻印があるが故に疲れはしないのだが、何もない道をただ1人で単調に進むという行動は、精神的な面で気疲れしてしまう。
流石の神の刻印でも、精神的なことまで回復する事は出来ず、俺は何とも沈んだ気分でそのダンジョンを見渡した。
ヒロとして俺が入ったダンジョンとは違い、洞窟のような構造ではなく5階建程の塔となっており、そのダンジョンの全貌が外からでも目視で確認できるようになっている。
それはあまりに大きく、入ることすら萎縮させられてしまうほどの迫力で、全面灰色となっているのもまた、可愛げがなく恐ろしく感じる。
当然中を見ることが出来るような窓や穴はなく、中がどうなっているのか、どのような魔獣が存在しているのかもわからない。
ただ、依頼主曰く4階までは低級の魔族しか出ないようになっているらしく登るのは簡単だと言っていた。
だが問題は最上階である5階、そこにはそれまでとは比べものにならないような、格上の魔獣が生息しているそうだ。
そんな事を知らない冒険者などは、4階までの難易度が続くと思いそのまま5階を目指し、命を落とすといった事が頻繁に起きているらしい。
そんな難易度だというのに、俺の収穫せねばならない薬草は、その中でも特に強いボスモンスターのすぐ近くにあると説明された。
正直そこまではっきりとした説明を聞いた後に、やはりやめておくと言いたくもなったが、その言葉を俺は苦しみながらも飲み込んだ。
自分の実力を試すには、何よりも早く成長するにはこうするのが得策のはずだ。
俺は背負っていた剣を取り出して、グッと力強く握りしめる。だが決して緊張から体が固くならないように心を落ち着かせて、ゆっくりと呼吸を整えた。
「……行こう」
俺は塔の扉を開いた。
ただ軽く触れただけだというのに、ダンジョンは歓迎するかのように扉を勢いよく開かせた。
一説によれば、ダンジョンというものは人間の挑戦を待ち望む心のようなものが存在すると言ったものがあるが、今のはまさしくそれを感じさせた。
中は何も見えずこのまま先へと進んで大丈夫なのかと不安になったが、俺は決意を曲げぬようにそのまま塔の中へと入り込んだ。
それと同時に扉は勢いよく閉まり、途端にそこらにあった松明が1人でに点灯し始める。
先程まで何も見えていなかった空間が、一瞬にして全貌が見えるようになったのだ。
そこは廊下のような何もない空間で、それがカーブを描いてずっと先へと続いている。
壁にはまだらにタイルが貼られており、床には少し古びたカーペットが敷いてある。
それらを観察していると、ずっと先の方で獣の鳴き声のような図太い音が聞こえてくる。
先程ついた灯りと共に目を覚ましたのだろうか。
俺はこの人間が整備しているかのような環境と、先程の鳴き声に戸惑いを感じながらも、先へと向かい歩き始めた。
こんなところで立ち止まっているわけにはいかないからな。




