第四話(回想)①
「こんなところで何をしているんだ?」
太陽の光が肌を突き刺す昼下がり、中庭で昼寝をしていた俺の元に、偉そうな面をしながらギルドマスター『ブレス』さんは叱るようにしながら睨みつけてきた。
「どうかしましたかブレスさん。僕は何もしていませんよ」
「それを叱りにきたのだ。他のギルドメンバーは皆、クエストやダンジョンなどを攻略し、今も尚実力を磨いている。それなのにお前はどうした?こんなところで呑気に昼寝か?」
マスターの説教はあまり好きじゃない。
俺のこう言った態度をよく思わなかった連中は皆、自分の素晴らしい考えを聞かせてやるというように、言いたいことを言った後は、満足したような顔でこの場を去っていく。
そう言った奴らの話は右から左へ受け流して、聞かなかったことにすることができる。
それなのに対してマスターは、俺に注意をする時はいつも悲しそうな顔をしてくるのだ。
いつも何かを言った後は、また俺を動かせなかったと後悔するようにこの場を去り、再び日を空けてこの場にやってくる。
本当に俺に向き合おうとしてくれているからこそ、正直やりづらい。
「…マスター。僕はなるべくダンジョンやクエストなどは受けたくないんですよ。最低限でいい。ただ生きていくのに困らない程度の稼ぎが出来たらそれでいいんです」
「確かにそう言った人間もいる。それを否定したりはしない。だがな、お前はそう言った人間ではなかった筈だ。このギルドに入って間もない時は、絶望にも立ち向かうように、瞳の奥で燃え上がっておった」
「……もう遅いんですよ」
俺は吐き捨てるようにそう口にした。
あまり良い態度ではなかった筈だ。
「…そんな事はない。お前はまだ10代、まだまだ若い。余生はまだ半分以上も残ってあるのだ」
あまり良い態度を取らなかった。それは今日に限った事ではない。何日も、何週間もそんな反抗期のようなみっともない態度を取り続けているのだ。
それなのにどうしてまだそんなにも優しい言葉をかけてくるのかと、俺の中を複雑な気持ちが駆け巡る。
「…見えますかこの傷が?これは『神の刻印』を使った際に現れたものです。一説ではを神の刻印持つものは三十路すら迎えられない口にしています……それでも貴方は…」
俺は今、意地悪な質問をしようとしている。
あまりにも返答に困り、何を言おうと「不正解だ」と言いつけることができる。そんな無粋な質問をマスター相手に投げかけたのだ。
後悔の気持ちが頭を満たす。
このようなことを本当に口にしたいと思っているわけではないのだ。
だがどうしても、俺の中にある封じ込めた気持ちを、開いてほしくはないのだ。
「ヒロ。改めて聞こう。お前の夢は何だ?」
するとマスターは予想だにしない言葉を口にし始めた。




