第三話④
「すまないが今立て込んでいてな。放っておいてくれないか?」
「さっきから余裕かましれやがって……舐めてんじゃねぇぞ!!」
相手は怒号を上げながら、こちらへ勢いよく身を寄せてくる。
自身の体に触れられないように慌てて下がると、相手はそんな俺の動きを馬鹿にするような顔を浮かべ出す。
「何だビビったのか?いざ来られると何もできねぇとは、情けねぇな!!」
そう言って相手は、引き連れた仲間全員と下品に笑う。
少し不快ではあるが、今はそんな事を気にしている場合ではない。
兎に角この場から去って、今後どうするかを考えなかければならないのだ。
俺は無言でその場から離れようと、彼らがいる逆方向へと進んでいく。
すると、急に肩を掴まれてしまった。
慌てて身を引いたが、相手は首を傾げながら困惑したような顔を浮かべていた。
「おい何処行くんだよ……そう言って声を掛けようとしたんだが……何だお前?体に鉄でも仕込んでんのか?」
まさか直に骨に触れたなどとは思っていないらしく、相手は的外れなことを言い始めた。
「……そんなところだ。気を悪くしたのなら悪かった。本意じゃないんだ」
そう言ってその場から急いで離れようとする。
だがそう上手くはいかず、相手は面倒なことを言い始めた。
「おいお前ら、あいつのローブ引っ剥がせ。何か隠してやがる」
男の指示に従うように、3人の冒険者がこちらに寄ってきた。
俺は慌ててそこから逃げようとしたが、現役冒険者の力を、下級魔獣の身体能力では敵うわけもなく、取り押さえられるようにして、地面に押さえつけられてしまう。
「何のつもりだ?今すぐ離せ」
「さっきまでの威勢はどうしたんだ?随分と焦ってるみたいだが、そんなに見られたくないのか?」
ニヤニヤと悪人顔で俺を見つめる顔を睨みつつ、俺は何とか取り押さえる手を振り解こうとするが、体は少しも動かない。
「お前ら、そのローブを剥がせ」
「ですが兄貴……なんかこいつの体変ですぜ」
「あー何つうか、見たくねぇ」
「ガタガタ言ってねぇで早くしろ!!そんなことも出来ねぇのか!!」
男の罵声を浴びされると、皆は慌てて俺のローブ捲り上げた。
自分か見たがっていたくせに、俺の姿を見るなり男は大声を上げて、尻餅をついた。
俺を取り押さえていた男達も驚いたのか、直ぐに壁に身体を打ち付ける勢いで後へ身を引いた。
「何だお前…魔族?いや魔獣か!?どうして人の言葉話してやがんだ気持ち悪りぃ!!」
「寧ろ俺が知りたいと思っているんだがな。お前らに害を与えるつもりはない。早くこの場から消えてくれ」
俺の提案を聞いて男は一度、その場から素直に立ち去ろうとしたが、先程と同じく悪役じみた顔を浮かべ始めた。
「いや…ここで引くのは勿体ねぇな」
「何言ってんですか!!早くいきましょう!何をされるかわかったもんじゃねぇ!!」
怯える周りの連中とは対照的に、男は名案を思いついたような、自信に溢れた顔を浮かべていた。
「何も出来やしねぇさ。さっきもお前ら相手に手も足も出てなかったんだ。こいつ、とっ捕まえるぞ」
「そんな事して何になるんですか!!」
「こんな珍しい魔獣そうそういやしねぇ。どっかに売っぱらえば金になるはずだ」
「で、でもよぉ」
「いいから早く捕まえろ!!逃したらお前らから金むしり取ってやるからな!!」
男達は震えながらも、俺よりも男の方が余程怖いらしく、こちらの元へ急いで向かってきた。
相手はそれぞれ、短剣、大剣、そして拳銃を所持している。
こんな相手、戦闘職ではなかった元の俺の姿でも、勝てやしなかっただろう。
俺は錆切った短剣を取り出して、相手の攻撃に対抗しようとするが、相手引く気配を見せない。
俺よりも恐るべき相手がいる為、引くに引けないみたいだ。
すると相手の1人が、大剣を大きな振りかぶって斬り掛かってきた。
回避が間に合わず、まともに喰らってしまったが、不思議とその感覚が得られていない。
気が付かないうちに避けたのか?そう思って斬られたと思われる箇所を確認すると、肩から肋にかけて、深く切り傷がついていた。
俺は相手の攻撃を何とかさばき、避けながら現状起こったことを理解しようと頭を回す。
だが答えは1つしか浮かんでこない。
信じがたい事だが、俺は痛覚が無くなってしまったらしい。




