第八話 速度の破壊者
消費MP100、効果時間たったの三秒の大技。
効果時間に対して圧倒的に多いMPの消費量。
だがこれはアプデで失った『人体ブースト』の代わりには十分どころか大きすぎるくらいのものだった。
「『アクセル』」
ただまずはこれから。
いかに『超魔法』が優秀であろうと使い所を間違えればただのMPの浪費だ。
だからこそ、まずはしっかりと距離を詰める。
ところでせっかくだから俺も各種魔法の名前を決めた。ただいいのが思いつかなかったのでとりあえずそのままだが。
「『ハイ』『ハイ』『ハイ』『ハイ』『ハイ』『ハイ』『ハイ』『ハイ』『ハイ』『ハイ』『ハイ』『ハイ』!!!」
まぁこれにも弱体化が来ていたようで。
その内容は〈二文字以上かつ同じ文字、同じ母音の文字禁止〉というものだ。
つまり前のように『あ』の連打とか『はあ』とかで限りなく近いものもできなくなった。
まぁ結果がこれだが。
これあんまし弱体化の意味ないだろ。
「『クイック』」
以前は殴ると言う動作を設定していた『クイック』だが今回の見直しでそれを変更した。
その動作はジャンプ。
この『クイック』、前の調整で強化と弱体化の両方が入っていた技でもある。
簡単に言うと〈動作の限定化〉と〈さらなる加速〉の2つ。
動作の限定化は本当に決めた動作のみしかできなくなるということ。
以前のように殴る、と大雑把に決めて角度とかを自由に決めたりができなくなった。
本当にこの動作をこの角度でと決めたらその通りの動きしかできない。
その分その動作における加速は通常の加速魔法の中ではトップクラス。
角度は六十度。迫る『ファイアボール』と距離をおいた場所から踏み込む。
飛び立つ。
あぁ、この時この瞬間感じるこの風、圧。
今俺は最高にこの仮想現実に生きている。
そう思うのはほんの一瞬。
またしても迫る火。今度は『ファイアアロー』。
今度はギリギリまで引き付ける。
「『火が灯り、あらゆるものを照らす。』」
斜め下に向けて踏み込もうとすると既に詠唱が始まっている。
地面は既に一面火で埋め尽くされている。
だがその火が放つ『ファイアボール』は今の俺には遅い。
「『アクセル』」
地面につくまでの間にもう一度『アクセル』をかける。
ここからは一方通行。戻ることは出来ない。
ただひたすらにアクセル全開で。
ブレーキなどかけない。
さぁ。
ここからの三秒間は、
俺だけの時間だ。
「『超加速魔法・ハイ・スピードブレイカー』ァァ!!!」
加速魔法において、他の魔法のような派手な演出もエフェクトも効果音も無い。
だがこれだけはある。
使用した瞬間自分の目の前の空間が割れる。
まるでガラスを叩き割ったかのようなエフェクトが広がる。
だがその効果音も、エフェクトも。
感じるより速く。
その限界を超えて加速した体はエフェクトや効果音を感じる頃には既に銀河の体を殴り飛ばしている。
吹き飛ぶ間にも一歩一歩超高速で踏み込みながら拳を打ち込む。
ただの0.1秒の隙すらも許さないほどの圧倒的速度。
二秒が経つ頃には本来のエリアである草原を超えて森林エリアまで差し掛かる。
ラスト1秒。
木すらも足場とすることによる攻撃のさらなる加速。
右、左、前、後、上、下すらも使い、ただひたすらにラッシュを叩き込む。
腕、足、時に頭すらも使って。
最後の一撃は頭上から。
〔勝者:風見鳥〕
圧倒的なまでの速度。
これが新たなスタイル。
速度特化ビルド。
ポイントボーナスをによる魔法命名は初期魔法のみです。
超魔法や極限魔法は無理です。