2-quiet:帝国の裏で蠢く者達
さーせん。今回も時間の関係で閑話です。
ネアリア王国は、元々はもっと大規模な超大国だった。
それこそ、大陸の支配が目前というほどまでに強い世界有数の国家なのだ。
だが、それも何世紀も前の話。
各地でネアリア王国の政治に反対する者が現れ、次第にそれは巨大な一大勢力となり国中―――主に王都から遠く離れた西側で反乱が起きた。
大規模になりすぎたネアリア王国にそれを完全に無力化する術は無く、結果的に反乱が収まったのは"勇者召喚"を行い争いを沈めた時だ。だが、時既に遅し。領土の三分の二を奪われ、その奪われた領土のいくつかは分裂して小さな国となった。
その中でも特に巨大な国家となったのがこの国、"エルドガル大魔帝国"だ。
そしてこの場所...城塞都市、"シルヴァン"は、元々はネアリア王国随一の資源地帯だった。
今ではその内のいくつかは鉱脈が枯れてしまっているが、今でも大半の鉱山にはまだまだ鉱石が眠っている事が分かっている。
数々の金銀財宝や希少金属とされる"魔銀"や重硬銅、果てには聖霊金なども採掘され、その量は大国を何世代も豊かに富ませ続けられる程だ。この鉱石達のおかげで、帝国は王国との戦争を続けられていた。
それだけでなく、不思議と鉱毒による汚染は見られなかった大量の清水が流れ出ているからか、大量の水資源があることも特徴的だ。シルヴァンの街にはエルフやドワーフなど大地の精霊に好かれやすい種族が多数居住しており、必然的に豊かな実りが約束されている。
そのため、シルヴァンは資源の宝庫とも言える。帝国の多くの資源はここをアテにしているのだ。
―――それはつまり、王国からの侵略の的にもなるという事だ。
その為シルヴァンは鉱山と街そのものが要塞と化しており、王国の侵攻だけでなく魔獣など知性を持たない魔物などの被害も抑えられている。
だが、そうして守られている平穏ももう終わることになる。
少なくともこの場にいる者達は全員、そう考えていた。
彼らは表向きはシルヴァンを管理する役人だが、実際は裏からネアリア王国と通じている者達。
要するに、単なる裏切り者である。
彼らは笑う。自分達はネアリアでの地位と金を約束されている為に、将来が安泰だと考えているのだ。
だが、それを一人眺めて嘲笑っている誰かがいた。
「...」
だがその一人も、ただ眺めるだけでその内に何処かへと行ってしまった。
王国がこの街―――城塞都市"シルヴァン"に攻め込むまで、後一週間。