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いずれ最強になる異端勇者  作者: Am_Y/221
Chapter-1_一つの異形を殺す為に
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2-eighth:EPILOGUE

濃霧。

それは次第に晴れていき、川が現れる。

手前には自分、そして反対側には死んだはずの祖父の姿。


「じい...ちゃん...?」


泣きそうになるのを堪え、川を渡りだす。


「じいちゃん!」


慣れた呼び名を発し、川をかき分けかき分け...


「―――」

「え?」


その口が開いたと思うと、何かを喋りだした。

川の音で聞きづらかったが、恐らくこう言ったのだろう。

―――まだこちらに来るな、と


その瞬間、莉の意識は遠ざかっていき...


...


足に湿り気。なのに他は妙に綺麗だ。

いや、湿っているというよりも何か粘性のあるモノがくっついたような感覚に近い。

目の前にある川の水を掬い、顔を洗う。

...川の水は血だった。

それどころか、死体の数々で埋もれており、自分の手の平は真っ赤に染まっていた。


「ん...ぁー...?」


後頭部の温かく、そして柔らかい感触で目が醒めた。

ガタ、ゴト...と揺れる音と振動で、妙に気怠いながらも急速に意識が活性化する。

ふと見上げると、涙目になってこちらを見つめているリィハがいた。

そしてようやく、今自分はリィハに膝枕をされていることに気づいた。


「起きたん...ですね...!」

「あ...ああ...悪いな、おはよう、リィハ」

「心配...したんですよ!」


立ち上がろうとすると、抱きつかれてしまった。

...まったく敵わないな。

そう莉は思い、そしてリィハの頭を優しく撫でた。

胸の辺りに湿り気が帯びてきて、微かに嗚咽のような声も漏れている。

よほど心配してくれていたらしい。嬉しいものだ。


そうして。

少し経ち、落ち着いてきたところでふと周りを見ると、皮のような布で囲まれているような風景。

そして後ろは吹き抜けとなっている。

その瞬間、莉はこれは馬車だな、と理解した。

そして泣き止んだリィハが顔を上げる。


「にしても、大丈夫だったんですか...?レイさん、血まみれで森の中に倒れていて...」

「あー...そうだったかな」


リィハによると、なんとあれから丸一日経っていたらしい。丸一日も寝ていたのか....

それで、なんとか急いでシルヴァンの街へ着いて、軍にいた父に頼み込み馬車でここまで来た...というなんとも大変そうなものだった。


「え、じゃあ今ここにリィハの親父さんがいるのか?」

「ええ、今馬車を運転しているのがそうですよ。父さん!」


そうリィハが呼ぶと、馬車が止まり布が捲られる。

...出てきたのは、いかにも軍人、という感じの大男が現れる。

あまりに大きい身体つきをしているので、かなり威圧感が凄い。

だがその目は酷く揺れており、優しそうな目をしていた。


「一応確認するが...君がその、レイ・タチバナ君で合っているか?」


またもや軍人を思わせるような声と口調だが、とても優しい雰囲気で問いかける。


「ええ、そうです。僕が莉ですね」

「そうか...そうか...!」


すると、その大男―――リィハの父は、莉の手をしっかり握り、感謝を告げる。


「ありがとう、本当にありがとう...!君には感謝をしても仕切れない...!」

「い、いえいえ...僕は偶々通りかかった所でリィハを助けただけで...」

「それでも、だ。妻を亡くした私には愛娘しか...リィハしか居なかったのだ...本当に、娘を助けてくれてありがとう...!」


ここで変に謙遜するのも野暮というものだろう。素直に感謝を受け取ることにする。


「...ええ、どういたしまして。こちらこそ、リィハと過ごす時間はとても良いモノでした。」

「...そういえば、名乗っていなかったね。私の名前は"シドルア・アイゼルト"。気軽にシドと呼んでくれ。」

「分かりました、シドさん」


そうしていると、シドは莉の事をリィハと似た眼つきで不思議そうに見つめる。


「リィハから聞いたよ。君は人間の持っている魔族への差別意識が無いようだね...そして、こことは別の世界から来たとも。」

「ええ...自分にも理由はよく分かっていないのですが、事故か何かでこの世界に迷い込んでしまったんです」

「...嘘を言っていないように見えるからね。それにリィハの言う事だ、私は信用しよう。―――ただ、これが他の者達に信じてもらえるかどうかは謎だ。下手に吹聴して国から目をつけられたくなければ、あまり気軽に話すのはお勧めしないよ」

「...肝に銘じておきます」


下手に話して実験施設に連れて行かれる、なんていうテンプレ展開はごめんだと莉は考え、口を固くしようと心に決める。

そうしてまた進んでいる内に、ついにやって来た。

リィハが大きな声を出して叫ぶ。


「見えてきました!あれが城塞都市、"シルヴァン"です!」


ついに、最初の目的地である"シルヴァン"の街が見えてきた。


これからまた一波乱あり、苦労していくことを、この時の莉はまだ知らない―――



と、いうわけで、第一章は短かったですがこれで終わりです。ありがとうございました!


第二章では城塞都市、"シルヴァン"が舞台です。

これからも気まぐれに書いていきますので、これからもよろしくお願いします!

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