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第99話

 秋も後半に差し掛かり冬が近づいて来たとある日、珍しいお客さんがやってきていた。

「ドクトル殿よくぞいらっしゃいました」

「ヴリトラ様、歓迎感謝いたします」

 今年あったばかりだが魔王国の方針なのか敵対するつもりは無いらしく取引をしたり比較的仲良くしてくれている国なのでこちらとしても友好的でいたいと思っている。

「今日はどのような用件で?」

「はい、実はですね。保存のきく食料を購入、もしくは交換、取引をしていただきたく」

「魔王国は食料不足なんですか?」

「いえ、そうではないのですが……」

 なんか言い難そうだけどなんかあったのかな?

「魔王国は今、戦争準備中なんですよ。なので穀物や干し肉系の長持ちする物がいいと思いますよ」

 話しているとルーフェが舞い降りた。そういえば周辺の国同士仲が悪いんだったかな、まぁ魔王を倒して世界平和をとかなんとか。ゲームではよくある設定だし異世界ならあってもおかしくないのかな?

「なるほどね。ルーフェ、悪いんだけどカエデを呼んでもらっていい?」

「はい、ご主人様」

 ルーフェはカエデを呼びに行ってくれた。備蓄などの管理はカエデに任せてしまっているのでこういう時は彼女が居ないと始まらないのだ。

「魔王国は大丈夫そうですか?」

「まだ何とも言えませんね……なにせ二国との戦線を考慮しなければいけないので」

「シャジャルとアレクロンですか?」

「そうですね。両国とも一時期は国力が低下して大人しくなっていたのですが勇者召喚をおこない戦力を回復、進行を画策しているという情報が入りこちらも備えなければいけなくなっております」

 なんというか人間対他種族という感じで多種族国家の魔王国は貧乏くじを引いてるような感じがした。普通に仲良くできる人間も居るのは間違いないが、極端な差別意識があるのはなぜなのかホントわからないなぁ。

「主様、ただいま参りました」

「カエデ、ルーフェから話は聞いてると思うけど大丈夫そう?」

「はい、今年は豊作ですし秋の収穫もまだ残っています。現段階でも十分融通できると思いますよ、お肉に関しましてもギガマウスの燻製などがたくさんありますので」

「肉まであるのですか!」

「ここのとこ夏になると向こうから飛び込んでくるんですよ」

 今年の夏は睦に居て俺は知らなかったが毎晩お約束のようにあのカエル共はやってきてたらしい。おかげで食べ切れずに倉で溢れているらしい。

「一応こちらから提供できる量はこの位ですかね」

 カエデは紙に提供できる物一覧を書き込みドクトルへ渡した。彼はそれを一つ一つ確認していく。

「大丈夫そうですか?」

「はい、食料だけでなく武具もよろしいのですか?」

「戦争準備なら必要でしょ? ここにあってもあまり使う需要が無いのでどうぞ」

「それで、こちらが出せる物なのですが……」

 ちょっと申し訳なさそうにドクトルも紙を見せてきた。

「あ、金銭はあまり気にしないでいいですよ。軍備で必要でしょうしここではあまり使う機会無いので」

 紙を読んでいるとカエデとルーフェが一緒になって覗き込んできた。

「そうですね、こちらとしては錬金薬やスパイスなどの方が需要があります」

「ありがとうございます。スパイスなどでしたら融通できます」

「この急成長薬ってなんでしょうか?」

「そちらは我が国の錬金術師が完成させた薬で、成長に時間のかかる植物を急速に成長させることができる薬ですね」

 あれ? それならリンゴとかの実をつける木を大量成長させれば食料事情解決できない?

「ですがこの薬には欠点がありまして……」

 まぁ問題がないならそもそもここに食料を分けて欲しいなんて来ないもんなぁ。

「問題とは?」

「はい、この薬。実の採取ができるくらいまですぐに成長するのは良いのですが、収穫数の減少、味の劣化を招く欠点がございまして。一応時間をかければどちらも通常の物と遜色ない位にはなるのですが結局普通に育てたものと同じくらいの時間が必要になってしまいます」

 つまりすぐに実を採取できるくらいまで成長させることはできるができる実は少なく味も劣悪、この感じだと食べれるレベルじゃないんだろうなぁ。確かに貧困など本当に食料に困ってる時、木材が必要な時は有効だろうけど味が悪いと士気が下がる。戦う兵士にとってはあまりよくないのだろう。やっぱ食事は大事なのだ!

「この問題、ユグドラシルの加護とご主人様の活性の力があれば解決できるのでは?」

「そうなの?」

 説明を聞いていたルーフェが呟く。

「はい、さすがに普段のような豊作とまではいかないでしょうけど、味と量を一般的な標準程度まで引き上げることは可能かと」

「なら試してみるのはありだね。ドクトル殿、スパイス系とこの急成長薬を希望したいのだが数はどのくらい用意できますか?」

「それでしたら期待して量産した在庫が大量に余っております。ホントにそれでよろしいのですか?」

 なんだろ? 彼らにとっては失敗作と交換でホントにいいのか? って雰囲気だけど実用性がある、これが上手くいけばこの前睦から買ってきたカカオなどの量産がすぐにできるということだもちろん今後増やす作物を木ごと引っこ抜いてくる必要もなくなる。十分取引する価値があるのだ。

「カエデ、悪いんだけど数とかはまかせていい?」

「はい、お任せください。それではドクトル様、こちらで詳しい取引内容を決定いたしましょう」

「よろしくお願いします」

 カエデとドクトルは客人が来た時用に用意していた建物に入って行った。ここには応接室や集会場などがある、なら最初からここで話せとか突っ込みは無しでお願いしたい。

「ご主人様、これで今日は特にやることないですよね?」

「ん? まぁ暇と言えば暇かな」

「じゃあ一緒に温泉行きましょ! お背中お流しいたします~」

「お前、絶対それだけじゃすまないだろ……」

「細かいことは気にしないです!」

 こうして一仕事終わった俺はルーフェに引きずられて温泉に連れていかれたのだった。

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