第97話
「しばらく前の事です。この町に行商人がやってきたのですが、その者が私に料金もいらない。むしろ自分が支払うからこれを引き取って欲しいと言ってきまして……仕方なく引き取ったのですが」
俺達はお義父さんの屋敷の地下に連れてこられた。その引き取って欲しいと言われたアイテムがここに保管、てか封印されているらしく扉が鎖でガチガチにロックされてた。
「お父様、こんなに危険な物なのですか?」
「あぁ……」
そう言いながら封印を外して扉を開ける。その部屋は薄暗く奥に何かがこれまた鎖でガチガチに拘束されているようだ、たぶん一本の剣だ。錆びているのかと事どころ茶色だがイカツイ見た目に禍々しい雰囲気を放つ確かに嫌な感じの剣だ。
「こいつは?」
「魔剣の一種だと思うのですが……詳しいことは一切不明。ただその剣は間違いなく持ち主を選ぶとだけ……」
話を聞くにお義父さんの達も一応この剣を調べようとしたらしいのだが、一人は剣を振ることすらできず、また一人は精神を破壊され死亡、他にも握った者の腕が吹き飛ぶなど様々な異常事態が起きたとのことだった。
「一応持ち運ぶだけであれば問題ないのですが、武器としてこの剣を使おうとすると……」
変な武器だなぁ。人を食う魔剣って感じかな? まぁそんなの置いておきたくないよなぁ普通に。
「わかった。とりあえず持ち帰ってマリーやガンプ達と調べてみよう」
お義父さんの願いで剣を持ち帰ろうと柄を握ったその時だった。拘束していた鎖が弾け、剣が異様な光を放ちだした。
「何だこれ!?」
「タカト!?」
「ヴリトラ様!?」
これが精神汚染というやつ? 違う、何だろう……握った場所から血管が伸びてこの剣と結びついていくような、体の一部として融合してきている? なんとも言えない感覚に襲われる。
「なんだこれっ融合してきてっ……」
あ、わかった。たぶんこれ剣から結ばれてくるこの感覚に負けると精神が飲み込まれて消滅するんだ……凡人ならあっという間に飲み込まれてどうしようもないんだろうけど俺はドラゴンだ。魔力だろうが精神だろうがこんな剣一本に負けるほど弱くはない!!
「……大人しくしろ!」
結びつき、俺の中に侵食しようとする剣の力を飲み込み逆に剣を支配する。精神力がだいぶ持っていかれる気がするが俺の敵じゃない!
「アズハ、離れて!」
剣のすべてを掌握したその時刀身が光、急に弾け爆発したのだ。
「タカト、大丈夫!?」
「大丈夫……」
地下室は爆煙に包まれていたがアズハは無事らしい。よかった! そして次第に煙が晴れてくるとアズハが駆け寄ってきた。
「ホントに大丈夫? なんともない!?」
「ありがと、大丈夫だよ」
駆け寄ってきたアズハは抱き着き俺の体に何もないか触り回って確認している。こんなに心配してくれるなんてちょっと不謹慎かもだけど嬉しくて顔が緩んでしまう、愛されてるって幸せ。
「タカト、その腕……」
「腕?」
右腕を見ると今までなかった黒い刺青のようなものが刻まれている、なんだこれ? 言われるまで全く気にならなかったし元々あったかのような変な感覚だ。
「ヴリトラ様、大丈夫ですか?」
「あぁ、問題ないみたいだ」
「それは良かった。ところで、あの剣は……?」
さっきまでその場にあった剣の姿はなかった、だがどこにあるかはっきりとわかっている。
「あぁ、ここにあるよ」
俺が手を振ると刺青が光、黒い大剣が姿を現した。錆びが消え、形も少し変わった気がするが漆黒に金という厨二心を擽る一品へと姿を変えていた。
「どうなってるの?」
「わからないんだけど、俺と融合しちゃった? みたい……」
「タカト大丈夫なの? 何か異常ない?」
「大丈夫、そうだね。とりあえずこのまま剣は持って行こうと思うけどよろしいか?」
「えぇ、こちらとしては是非お願いしたいくらいです」
俺が剣を消すイメージをすると再び刺青のような模様へと姿を変えて右腕に刻まれた。出し入れは自由にできるようだけど名前すらわからない黒い剣、とりあえず帰ってから調べてみるかなぁ。
「じゃあアズハ、いつもの貰ったら帰ろうか」
「うん……ホントに大丈夫なんだよね?」
「大丈夫だよ」
手を握ってくるアズハを抱きしめて頭を撫でながらそう呟く、確かに不思議な剣だったがなんとなくもう体を侵食したり蝕む類ではないと感じていたのだ。
「それじゃあお父様、また来ますね!」
「あぁ、アズハも元気でな」
「何かあったらガーゴイルで呼ぶといい。使い方はわかっているな?」
「はい、ヴリトラ様のご加護に感謝を」
お義父さんはそういうとお辞儀をして見送ってくれた。ちょっとしたおまけもあったけど俺達は越冬の準備をするために必要な物資を貰い家へと帰って行くのであった。




