第89話
家に帰ってきて数日、すっかり秋になっていた。一つの季節を丸々留守にしてしまった結果区画整理が完了してだいぶ快適に様変わりしていた、セナ達には感謝しかない。
「穀物系の量が多いですね、これなら現段階でも冬を余裕で越えれそうですね」
「秋にも収穫できる見込みですからまだまだ増えますよ」
米や小麦、豆など穀物系を集めた倉でカエデとマオが話しているのが聞こえた。カエデは商業系の勉強をしていたらしくうちでは数少ない計算のできる人材であり、ここでの食料管理などを一括で引き受けてくれた。いままでだいたいのなんとなくでやっていたので数字としてしっかり管理できるのは大変助かる。マオも畑など作物の育成管理を仕切るようになっていてすっかりリーダー的な役割になっている。
「主様が新しい種や苗も入手してきてくださったのでこれからもっと楽しくなりますよ!」
「そのためにも旦那様には土地をもっと増やしていただかないといけませんね」
そう言うと二人の視線が向けられた。期待の眼差しが……俺はドラゴンの姿で今日も木を引っこ抜き爪で土を耕して畑を広げていく。最近俺の扱いが重機のようになってきた気もする、魔竜ヴリトラも形無しだ……慣れって怖い。
「ピィー!」
「ん? クロエか、結構飛べるようになったね」
仕事をしていると頭の上にポンとグリフォン一家の長女クロエが飛んできた。この子達も一歳を過ぎてシラユキやヨゾラと空を飛び回るようになってきた、元々ヨゾラが翼を広げて動かし方などを教えている光景は目にしていたがいつの間にかここを好きに飛び回れるようになっていたのだ。しかし体長はまだあまり大きくないかな? レトリーバー系の犬と同じくらいだと思う、どうやらグリフォンは成長が遅いらしい。まぁセッカの子供達も最初大きくなるのは割と早いのだがある程度大きくなると急に成長速度が遅くなる感じがするし地球と同じような感覚でないのは間違いないと思う。
「危ないからあんまここから離れちゃダメだよ」
「ピィー!!」
わかったのかどうかはさておき元気よく鳴くとクロエはまた空を飛んで行った、上空でレイトとハヤテも待っていたようで三匹仲良く遊んでいるようだ。
「主様、肥料持ってきましたよ~」
「エマ、それにロニアも。ありがと」
「はい!」
銀髪白馬のエマとブロンドに光る髪と下半身を持つロニア二人とも働き者でとってもいい娘なケンタウロスだ。最近はサラが積極的だったが帰ってきてから二人も負けないくらい積極的になってしまったのは想定外だったけどね。
「このまま新しく耕した場所に撒いて行けばいいんですよね? 二人でやっちゃいます!」
「お願いしていい?」
「お任せください!」
そう言うと二人は穴をあけた袋を腰に巻き付けて勢いよく走りだす、流石の走力で肥料が新しい土地にばら撒かれて行った。ここの土地はユグドラシルの加護と肥料のおかげで異常なくらい作物が育つ、育ち過ぎるくらいなのだがそのおかげでここの生活は成り立っているところがある。そうでもなければ大食いの家族とたくさんの家畜達を養えない、それは幸運だったと言えるだろう。食糧と言えば今年もイチカ達のお陰で大量のカエルが朝になると山積みになっている。
「主様~」
「トト、どうしたの?」
「焼き芋できましたよ~休憩しましょ!」
「こっちも終わりましたぁ!」
そう言いながらエマ達が手を振っている、丁度いいタイミングかな?
「じゃあ行こうか」
「はい!」
焼き芋とは言うが地球で食べてたサツマイモとはちょっと違う。一つが超デカいのだ、そのせいで焼くのも大変なのだがそこは魔法とガレオンの腕のおかげで美味しく焼きあがる。皆で分けて食べるからなおさら美味しいしね!
「熱いから気を付けるのだぞ」
「ガレオンさん魔法使えたんですね」
「ぬ? 我はこれでも魔法は得意なのだぞ?」
「とは言っても使えるのは炎だけですけどね」
「いつも料理に火力は大事だぁ~ってうるさいしね」
「見かけによらず繊細で器用なんですよね」
彼女達はガレオンの下で料理を教わったり食堂のウェイトレスをしてくれている娘達で猫耳がシャオ、ウサ耳がメリッサ、ケンタウロスがクレアだ。
「そういえばそば粉も作ってもらってしまってよかったのか?」
「ん? 大丈夫だよ、ガレオンの作れる料理が広がれば俺らも美味しいからね!」
「がっはっは! それなら期待には全力で応えなければな!」
「師匠うるさい~」
今日もこんな感じで賑やかな一日を過ごした。皆でのんびり楽しく過ごす、これが一番幸せかもしれないね。




