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第85話

 睦が独立を宣言してからしばらく経った、ここで生活を始めてだいぶ経った気がする。皆すっかり馴染んでしまったようだ。

「にに、何やるの?」

「見ててみ。まずこのお鍋にバターを落として溶かす、次にこの乾燥した硬いコーンを入れて塩をかける。そしてしばらく転がして満遍なく熱を通す、すると!」

「わっ!?」

 コーンが弾けて白いフワフワしたような物に変化した。それを見たアーシラは驚いていた、想像通りの反応をしてくれてこっちも嬉しくなる。ちなみに、アーシラも家でずっとお留守番も寂しいだろうと連れてきた。

「はじけだしたら蓋をして鍋を左右に振る! 焦げないように振る!」

「ふりふり~!」

 最近俺のこともににと呼ぶようになってくれて嬉しい限りだ。誰でも可愛い妹には憧れるものだ!

「はじける音が聞こえなくなったらポップコーンの完成!」

「かんせー!」

 そう、ここで家畜の餌として売られていた硬いトウモロコシあれは間違いなくポップコーンの品種だった。ならば作らない理由は無いのだ!

「おいしー!」

「でしょ!」

「主様、よくこんな食べ物知ってましたね」

「ふふふ! ドラゴンなのは伊達じゃないのだ」

 フラムにアイナ、アーシラは美味しそうにポップコーンを食べている。一応ここの住人にもこれを教えてあげたところあのトウモロコシの需要が上がり値段が上がってしまった……たぶん次回からもっと量が増えて高く売られるんだろうなぁ。大量に買っておいてよかった。

「これ今回は塩だけどチーズとかも合うんだよ」

 あ、すごく食べたそうな顔してる……

「今度ね?」

「はい!」

「あい!」

 この港はいろいろな食材が手に入る。ホント手に入って嬉しい場所だ、しかもここを得たことで東西南北全方向にガーゴイルを設置できた。これがあれば家に進行する前に敵を排除できる、まったく便利な魔法があったものだね。

「ヴリトラ様、お茶が入りました」

「カエデさんありがとう」

 彼女はカエデ、リョウゾウのおっちゃんの娘で長女とのことだ。家に皆してお世話になっていてる都合上話す機会も多いのだが特にこのカエデさんにはいろいろと面倒を見てもらっている。しかも他種族に差別的な意識も全く無いので安心してアーシラを任せられるお姉さんだ。

「お父様は独立の為に大忙しですからね、その分皆様の事は私にお任せください」

「感謝してますよ」

「カエデ、手伝うよ」

「アズハ、ありがとう。助かるわ」

 そして何よりアズハと仲が良くすっかり親友のような関係になっているのだ。こういう良好な関係が広がっていくのは良いことだ、守るものが増えるのは大変だけどね。

「ご主人様~」

「ルーフェ、おかえり。で、向こうはどうだった?」

「区画整理が進んで綺麗になりましたよ。収穫の方も順調で倉庫を増やすことになりそうですよ」

「順調でよかった。そろそろ秋も近いしね」

 なんだかんだ夏をここで過ごしてしまった。なんだかんだ買った荷物の輸送などで行ったり来たりしていたがそろそろ帰らないとなぁ……

「ちなみに、三笠の国ですが現在、帝に意見して辺境へ追放されていた文官や貴族を連れ戻し四方将軍を中心に立て直しが始まっているらしいですよ」

「へぇ~。やっぱ優秀な人材は残ってたのね」

「そうみたいです」

 明らかに好き勝手していた帝とその甘い汁を吸っていた貴族共。明らかに問題のある奴らを全て吹き飛ばしたのだ、これをチャンスとして国を作り替えるか、諦めて滅びるか。それは国民次第だ、俺は知らん。三笠は上手く利用したみたいだ。

「四方将軍が優秀のようですね、国の頭が無くなって大混乱にならないよう将軍達で基盤を再構成。新たなる国家として着々と準備を進めています。しかしながらここのように独立した領地も少なくなく、いろいろと大変なのは変わりないですけどね」

「そういえば、ここへの移住希望者も結構着てるんだよね?」

「え、あ、はい。それも相まってお父様は毎日朝から晩まで走り回っていますね」

 睦は魔竜領域、ヴリトラの庇護を受けたと早々に宣言した。そのせいか周辺の村々から庇護を求めて集まってきてしまったのだ。おっちゃんが新たに掲げた船に大きく翼を広げた黒竜の旗を掲げた影響か黒い竜翼は自由の象徴として詩になり一種のブームを巻き起こしてしまったらしく。そういうアクセサリーなども作られるようになってしまった。すっかり有名人だ……

「私のお父さんのとこも藁束を抱える黒い竜を旗に掲げているんですよ?」

「我らはヴリトラ様の庇護下であるという証明になりますからね。ちなみにリザードマンの里もドワーフの村も同じようなご主人様モチーフの旗印を掲げておりましたよ?」

 あれ? てことは俺の領土としてすごく拡大してない? あの森だけでいいやって思ってたのに周辺丸のみに拡大してしまった……想定外です。

「まいったなぁ……」

「最強最悪の大魔竜はどうしても目立ってしまいますからね」

 先が思いやられる……もうちょっとスローライフを満喫させてくれ~。

「もどったぞ~」

「あ、お父様。おかえりなさい」

「おぉ、カエデ、それにヴリトラ殿。少しよろしいですか? お話がございます」

「ん? なに?」

「あれですね、わかってます」

 なんだ? 親子で把握しているようだけど……ちょっとヤな予感がしてきた気がする。

「そろそろ帰るだろ?」

「まぁ、ちょっと長く楽しみすぎたからね」

「そこでだ、俺の娘。カエデを一緒に連れて行って欲しいのです」

「はい!?」

「我が娘ながら優秀だと、必ずお役に立ちますので是非に!」

「私からもお願い申し上げます。必ずや期待にお応えいたしますので!!」

 おおぅ……これはつまり人質ってかこことの関係をより強固なものにする方法として有名だけど……チラっとアズハ、ルーフェの方に助けを求めてみる……

「私は良いと思うよ? カエデなら書類をまとめたりする作業ができるから助かると思うし」

「私も今更一人増えても気にしません。もちろんそちらがそれでもよろしければなんですが」

「構いません! ですが目的は必ず果たします!」

「なら私も歓迎いたしますよ」

 あれぇ? なんか話がもう決まっちゃった感じに……しかもアズハが嬉しそうだしカエデさんの意思も堅そう、もう断れないじゃん……

「わかったよ、ではカエデさん。帰るまでに荷物など身支度は済ませておいてくれ」

「勿論です。不束者ですがどうか末永く、よろしくお願いいたします」

「あ~……とりあえず、ポップコーン食べる?」

 そうお辞儀された。この感じ、つまりはそういうことなんだろうなぁ……嫌な予感に襲われながらも今は新しい家族を歓迎することにしよう。

「ライバルがまた増えちゃいますけど負けませんよ!」

「必ずお世継ぎを生んで見せましょう!」

 ホロンさんサラさん何を言ってるんですかね? この先さらにいろいろ大変になりそうだけどまぁ頑張ろう。自分でまいた種みたいなもんだしなぁ……

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