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第84話

 ルーフェの一撃はまさに太陽という感じだった。宮殿のあった敷地が円形に綺麗に繰り抜かれてクレーターとなっていたのだ、超高熱で地面ごと綺麗に焼き尽くしたのだ。文字通り灰すら、燃え残りの瓦礫すら残すことなく。

「すごいな、こんな綺麗に消滅してるのに町には全く影響がない」

「ご命令通り、豚の家畜小屋のみを吹き飛ばすよう調整いたしましたから」

 心なしかルーフェはスッキリしたような顔をしていた。てか帝国最強と呼ばれていたのは伊達ではない、魔法のコントロールも流石超一流なのだ。

「ご主人様が力を貸してくださったお陰で今までできなかった最高火力でした! 愛の共同作業ですね!」

 嬉しそうにそう言うが愛の共同作業にしては物騒過ぎるよなぁ。

「ここまでの火力で焼くと地面が焼けてガラスになるんだなぁ」

 エリアの地面に砂の層があったのかはしらないけど部分的に繰り抜かれた地表に所々ガラスができて鈍く光っていた。燃やすというより高熱で溶かしてくりぬいたという表現の方が正しいかな? 怒ると怖いルーフェさんだ。

「じゃあ帰ろうか。目的の馬鹿は居なくなったし」

「はい! 騒ぎになってますけどあれはどうします?」

「ほっておこう。むしろ癌を取り除いたんだ、この機会を生かすも殺すも民次第、頑張ってねってさ」

「承知いたしました」

 俺とルーフェはこうして睦へと帰還した。あれだけ私腹を肥やしていたんだ、税も辛かっただろうし今後あの国を仕切るものがいい奴に変わればいくらかマシになるだろう。まぁ後付けの言い訳なんだけどね、俺はドラゴン。気に入らないから吹き飛ばした、ただそれだけだったのだから。

「おっちゃんただいま~」

「お、おかえりなさいませ……」

 睦に帰ったらおっちゃんが不安そうな顔をしていた。まぁ自分が所属していた国がどうなったか気になるよね。

「三笠だっけ? あの国の宮殿を吹き飛ばした」

「ふきっ!? じゃあ帝は?」

「消し飛びました!」

「マジかよ……」

「マジです。今後の事は悪いけど丸投げするよ、俺国なんかいらないし。他人の面倒見るつもりはないからね」

 俺が助けるのは友達の家族、それに連なる一部のみ。この手を広げて届く範囲を守ることが精一杯、これはドラゴンだろうが人間だろうが関係ない。同じことなんだと俺は思う。

「そんな勝手な理由で国の主を殺してしちまうなんて……」

「俺は理不尽な魔竜だからね」

 おっちゃんに悪そうに笑ってみせた。実際俺の存在は理不尽その物、その出来事を上手く使うかどうかは残った住民次第。俺は天災みたいなものと思ってもらおう。

「で、おっちゃんはどおする? 三笠の傘下として今まで通りに暮らしてもいいし」

「独立してもいい……と?」

「おっちゃんはいい領主だしね」

「天下のヴリトラ様にそう言われるのは幸いだが……」

 まぁ独立した場合の三笠との関係やその他の国との関係も不安だろうしね。

「黒竜の武具を纏った兵士って結構な圧力になると思わない?」

「ここに来てそれを言うのか?」

 おっちゃんは前にヴリトラメタル製の武具を欲しがった。間違いなくそれを使えば兵の戦力も生存力も上がるからだ。そして、このタイミングでこれを話す理由におっちゃんも察している。

「独立したら後ろ盾になってもらえると?」

「魔竜領域傘下と言ってくれて構わないし俺の名前や力が活かせるなら上手く使うといい。ただしこのまま三笠につくのならこの話は無し、なかったことにしてもらう」

 おっちゃんは考える。まぁ利益の天秤、リスクの天秤様々な天秤を考えて答えを出さなきゃいけないのだから。彼も少なからず民を持つ者、それなりの責任がついて回るのだ。俺はそれが大の苦手なんだけどね。

「もし、もしも俺の町が他国に襲われた際。どうやって貴方は助けてくれるつもりですか? そもそも襲われていることにどうやって気づく? 兵を走らせてもとても間に合うとは思えない……」

 もちろんこの世界に電話やネットみたいな便利な通信機器など存在していないしその不安は最もだ。

「ルーフェ」

「はい、ご主人様」

 彼女はおっちゃんの目の前に黒い六角形の大きな宝石を置いて見せた。

「こいつは?」

「モニタリングガーゴイルって魔法の触媒だ。何かあった際こいつを使って作った像に魔力を込めて念じれば俺の意識に直接届くらしい、これを使えばすぐに飛んできてやれるしもちろんこの触媒も無償で提供する」

 まぁこれはグルグナハに乗り込んだ際に貰った賠償品の中にあった書物に書かれていた魔法でマリー達が発見、使用可能な状態にまでしてくれたのだ。ちなみに、すでにお義父さんの領地やドワーフの村、リザードマンの集落には渡してあり。立派な俺をイメージした象が町や村のど真ん中に建造されているのだ。

「よし、俺は三笠を離脱する! 睦は魔竜領域に所属する海の町となるぞ!」

 おっちゃんはそう言うとニッと笑って見せてくれた。こういう豪快なおっちゃんは嫌いじゃない、むしろ好きなくらいだ。

「それじゃあヴリトラ様! 何かあった際はよろしく頼みますぜ!」

「あぁ、おっちゃん達は今まで通り交易や漁業。町の拡張とかもすべて任せるよ」

「丸投げですかい?」

「もちろん。任せたよ!」

 俺とおっちゃんは握手を交わして笑ってみせた、なんだかんだで俺は港町を手に入れてしまったのだった。今までのカチコミで一番いい物を手に入れたと思う!

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