第83話
黒竜は突然上空に現れ城を踏み潰す。ルーフェに聞いたのだがそんな噂話が広がっているらしい、実際俺はミラーハイドで姿を隠しちょっかいを出してきた国の城に近づいて一瞬で蹴り飛ばしていたからそんな噂が広がったんだと思う。見張りが居ても気付いたころには後の祭り、そうとう厄介なんだと思う。
「ご主人様見えてきましたよ、あれが東の大国。三笠です」
「山に囲われてるんだな」
「天然の要塞ですね。山の上にある城は立派ですがあくまでも防衛拠点にすぎません、本陣というより帝の宮殿は町の中央。あのデカい敷地ですね」
俺達は東の国、三笠に向かっていた。そこは四方を山に囲まれた天然の要塞に守られた巨大な街だった、畑や田園などは山の内側を削りだして土地を確保しているみたいだ。町の中央も宮殿というだけあってめっちゃデカい、無駄に広すぎると思う。
「あそこが目的地ね」
「はい」
「じゃあいつも通りにっ!」
俺は宮殿上空でミラーハイドを解除して中央の一番デカい建物を踏み壊した。
「な、なんだ!?」
「広間が吹き飛んだぞ!?」
「こっ……黒竜だっ!」
ここで働いている者や暮らしている者がどんどん集まってくる。兵士も武器を構えて囲んでくるのだが、その顔は可哀想なほど真っ青だ。
「おぉ、これが例の黒竜か」
なんだ? オレンジっぽい赤のド派手な衣装を着たデブ、色合い的に達磨かな? そしていかにも偉そうな奴がのっそのっそ歩いてくる。
「殿下、危険です。お下がりください!」
「何を馬鹿なことを申す? こやつはわらわの所有物なのであろ?」
「確かに使者を送り受け渡すよう命じましたが。こやつは広間を破壊したのですよ?」
「そのくらいまた作らせればよいだろう? それよりもわらわはこやつに乗りたい! おい、頭を下げよ!」
なんだこいつ? 頭の中お花畑にもほどがあるだろ……
「どうした? はよ頭を下げ、わらわを乗せるのじゃ」
そう達磨が言い放った瞬間だった。達磨の真横に何かが飛来し地面にめり込んだ。
「なっ……なんじゃ!?」
「な、何をしている! 殿下をお守りしろ!」
兵士達が達磨を守るように囲む。
「こ、こやつは。睦に送った使者でございます!?」
達磨の側近みたいなのが騒いでいる。地面に飛来した物体、それはほかならぬおっちゃんと偉そうに話してた使者なのだ……使者だった物、かな? そしてそれを投げつけたのはルーフェさんであった。
「この豚が……ご主人様に向かってさっきから偉そうに……一瞬で殺すなど生ぬるい。体の端から切り刻んで消し炭にしてやろう……」
ルーフェさんブチギレでございます……すごい殺気を溢れさせ黒い二振りの剣を握りしめ、漆黒の翼を大きく広げている。
「だ、堕天使風情がわらわに物申すか!? 者ども、打ち取れ!」
兵士達が弓を構え、一斉に放つ。しかしルーフェには届かない、すべて目前で消し炭になってしまうのだ。帝国に居た頃は白亜の終炎とか呼ばれてたんだっけ? 矢が一瞬で燃え尽きるほどの熱を放出してるんだろうなぁ、こわいこわい。
「そうじゃ、おい黒竜! あ奴を殺せ! 命令じゃ!! 早くやるのじゃ!!」
兵士達が唖然としている中達磨が喚きだした。ん? これ俺に言ってるのか……ちょっとイラっとする!
「ふぎゃぁ!? わらわの腕がっ腕がぁ!!」
「殿下っ!?」
側近共がバタバタ駆け寄っている。右手をぶんぶん振り回して鬱陶しかったので風の刃を作り吹き飛ばして差し上げた。
「うるせぇな達磨」
「貴様、わらわを誰だとっ!」
腕が吹き飛んでいるのにプライドだけは無駄に高いようで偉そうな態度は変わらないらしい。
「ぎゃぁぁぁぁ!?」
次は左足。
「うるさいと言っている」
「貴様! 殿下にこんなことをしてタダで済むとっ……」
達磨の横で吠えていた人には退場願った、やっぱ頭を飛ばすと一瞬で静かになるね。周りもその光景を目の当たりにして唖然としながらフリーズしてしまった。
「なんだ、話す気がないならさっさと終わらせようか。会話する気があると思ったから少し待とうと思ったけど……話にならないとはこのことだな」
「お前は、わらわの物じゃないのかっ……」
「誰が達磨の物だって? ふざけるのも大概にしろよ? 臭い肉の塊の言うことを聞くドラゴンが居るわけないだろ」
やっと状況を理解したのかな? さっきまでの偉そうな顔が恐怖に歪み、残った手足で必死にこの場を逃げようとしている。人間って窮地に追いつめられるとすごいね、日本のドラマなら余裕で死んでる怪我なのにまだ生きようと蠢いてる、必死なんだね。
「このまま俺が掃除してもルーフェの気が収まらないよね」
「……」
ルーフェさんすごい顔してますよ、怖いです……
「俺の力をルーフェに流し込む、好きにしな」
「ありがとうございます、ご主人様」
「ただしこの宮殿の範囲のみだ。平民に罪はない」
実際ここに来る途中チラっと見たが中央から離れれば離れる程辛そうな顔をしている人が多かった。どういう国家運営をしてたか知らないけど、そうとう苦労してたんだろう。まぁここの丸々太った奴らを見るにだいたい予想はできるけどね。
「承知しました、では!」
俺はルーフェへ魔力を送る、彼女自身十分なほどの力を持っているがそれじゃ俺がつまらない。せっかくなんだから合体技と行こうじゃない!
「すべてを焼却する禁じられし劫火をお見せいたしましょう……骨すらも、灰すらも残ると思うなっ!」
ルーフェの怒号が響き振り上げた剣の更に上空に小さな太陽のような物体が現れた。めっちゃ暑い……俺は飛び上がりルーフェの後ろについた、ここなら大丈夫でしょ!
「フォービドゥン・ヘルファイヤァァァ!!」
ルーフェは小さな太陽を達磨達目掛けて投げつける。轟音が響き熱が暴風となり噴き上げ巻き上がる、宮殿の敷地は文字通り太陽に包まれ真っ赤に光り輝いたのだった。




