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第8話

 冬が近づいてきていることもあって食料の確保や生活環境の改善がハイペースで進んでいく。まずセナ達の家、俺とアズハの家、クーネリアの作業場、セッカ一家のお家に馬小屋(忘れてたわけじゃない)が完成し今まで生活していた洞窟が本格的な倉庫になった。そして森で採取した巨大作物の量産計画、まず土地を確保するために更に周囲の木を引っこ抜き焼き畑をしてと生活範囲がどんどん拡張していった。

「ワン!」

 そしてまた住人が増えた。今回セッカが連れてきたのは獣人! 獣六割人四割くらい? とよくファンタジー作品に出てくる耳と尻尾がついただけな獣人より獣成分多めだが普通にかわいい系の女性が三人と、小柄な狼が直立に立ったような姿の物が十人? 十匹? やってきた。かわいい娘達がハイコボルトで他の者がコボルトとのことだった。

「はじめ、まして……」

 その後いつも通り一通り挨拶自己紹介、住人挨拶などなどを済ませた。(蜘蛛さんズを見て女の子三人は気絶仕掛けていたが慣れてもらおう)彼女達の話を聞くと生活していた場所が突然崩落を起こし生き残れたのが偶然外に居たハイコボルト三人と入り口付近で作業していたコボルトだけだったらしい。どうしようか考えていたところ、これまたセッカがここに導き連れて来たとのことだった。

「じゃあまず家から作ろうか」

「家、ですか?」

 セナ達とコボルト一家の家をどうするか話していると当の本人たちが疑問符を浮かべていた。聞くと彼女らは洞窟を掘り、採掘しながら暮らしていて家らしい家に住んだことが無いらしい。あと知能にも差があるらしくハイコボルトの三人は普通に意思疎通もできるし会話も問題ないが、コボルト達は意思の理解などは問題ないが言葉が片言でありちょっと会話に難がある感じでどちらかというと人より獣に近い種族らしい。

「とりあえず、種族的にも違いますし三人用のお家立てましょうか」

「じゃあそれで、必要になったらコボルト達の分も作ろうか」

 ということで、とりあえずハイコボルト達の家を作ろうと言うことになりセナ達は作業に取り掛かる。ハイコボルト達だが彼女らは三姉妹らしく白いの毛並みにグレーのロングヘアーな娘が長女でアル、灰色の毛並みにボサボサの髪が次女のイル、黒い毛並みに白っぽいロングが三女のウルとのことでコボルトズは特に名前は無いらしい。

「すごい、こんな道具見たことないです!!」

 早速アル達も得意な能力を活かして仕事を始めてくれた。彼女達は早い話が炭鉱夫が生業の種族であり元お家の倉庫横に新たに穴を掘り地下採掘を始めてくれるとのことだったので鱗のピッケルやシャベルを提供したら大喜びで作業を開始した。その技術は流石のモノで一日でこんなに掘れる!? というくらい掘り進み、木材を分けて欲しいと打診を受けた。これはエルフ達の受け売りらしいが木材を使い坑道の耐久性を補強するということだった、これで崩落の危険は大幅に低くなるとの事だし木材は森が枯れない限りドラゴンパワーで無制限に採取できるのでいくらでも使っていいということにした。ちなみにセナ達もたまに坑道に行きやり方を教えているようだった。

「採取した素材はどこに置けばいいでしょうか?」

「とりあえず外に積んでおいて必要な者が使用するって感じでいいよ、足りなくなったら考えよう」

 アル達がやってきてから使える資材が増えた。まず彼女達は家の他に屋根のある作業場を坑道の入り口付近に希望し、立ててもらった。最初は柱と屋根だけのエリアだったが次第に石窯、溶鉱炉と作業道具が増えていきついに鍛冶場のようなエリアが完成した。これにより採取した石材、銅、鉄、石炭などがそれなりに入手できるようになった。この辺は開拓が全く進んでいないため大量の鉱物が眠っていて取りたい放題らしい。

「主様! 釘の生産が安定してきました」

 彼女達が来たお陰でついに鉄製品が解放され家の強度、建築の幅が大幅に広がっていった。ちなみに食事は肉がメインらしいが野菜なども問題なく食べれるらしい。アル達の身長は百五十センチ位でコボルト達は百二十あるかないかくらいの小柄だが俺達に配慮して坑道は広めに掘ってくれているため視察や別の作業の為に入ることができる。そして洞窟の環境のお陰で作れる食材が増えた、キノコだ! コボルト達も非常食として生産していたらしく知識があったが動画パワーで更に効率的に量産を開始した。

「溜池を作ります!」

 そしていろいろ安定したきたこの頃、アズハやセナ達と場所と広さを話し合いで決めてずっと放置してた溜池を作ることにした。これは今後の為に必須だと考えてのことだ、数日かかったが決めた範囲をドラゴンパワーで逆ピラミッドのように掘り、石材を敷いて池を作る。その後は魔法で水を一気にためて池自体は完成となった、今後川と繋げる予定だがとりあえず後回し。溜池を作った理由は大きく分けて二つ、魚の養殖と今後作るであろう田園のためである。

「溜池は少し放置して生物が生活できる環境を作るとして、飲み水の安定化も視野に入れたいね」

 現状、容器にアクアブレスで溜めた水を煮沸して食用水として使ってきたがそろそろブレス無しでもどうにかできるようにしていきたい。てかアクアブレスが農業で万能すぎる。ついでにもう一つ判明したことがあるドラゴンの鱗についてだ。鱗はとてつもない強度を誇りしかもめっちゃ軽い最高級素材とのことだったがマナの吸収率も異常に高いらしく対魔法防具として最強らしい、ここで注目したのがマナの吸収率だ! この世界は土にもマナが影響し、更にそれが植物にも影響を与えて育ちがめっちゃ早いしある程度の気候を無視して大成長をする。この影響で山菜など野生の植物がデカかったみたい、つまり何が言いたいかというと。鱗をすり潰して粉にしたら最高の肥料になるんじゃない? ってことだ。

「その発想は誰も考えませんでした……」

「そもそも鱗を粉にできるんですか?」

 と疑問が出たが問題はない、鱗は同じ強度、つまり鱗で鱗はすり潰せる! 実際は鱗にカンナ状に加工した鱗工具で表面からピーっと薄く削りだしてそれを擦って粉にするという過程でやってみた。結果的に試したら急にニンジンの成長速度が上がり大きくなった。しかも土が無限に栽培できるほど元気で痩せる気配も全くない、最強の肥料が完成した瞬間だった。

「正直、世界最高級の素材を肥料にとか言う考えがぶっ飛んでて誰も考えません」

「正気を疑うレベルの異常なこと」

「数百年生きててその発想は世界初だと思う」

 などアズハやセナ達からめっちゃ言われたが、ちょっと体が痒いなとか思っててきとうに掻くとボロボロ落ちるしすぐ新しいのが生えてくる。ゴミのようにでる鱗を有効活用しようというのだ理想的じゃないか! ちなみに俺レベルの竜は滅多に居ないしそれが農業して一緒に暮らしているのは異常性がとんでもないらしい。異端上等、面白ければ何でもあり! と言ったら今までの生活や考えがバカらしくなったらしく皆大笑いしていた。

「家の建築は一通り終わったしセナ達と蜘蛛さんズは収穫の方手伝ってもらっていい?」

「わかりました!」

 蜘蛛たちも足をあげて了解! と合図してくれる、正直意思相通できるとめっちゃ愛着がわく。結構かわいい!

「じゃあ俺らも行こうか」

「はい、よろしくお願いします!」

 俺はいつもの籠を背負い採取の準備をしてセリィを乗せる。今回の採取のお供はセリィさんです! 理由はエルフの知識を借りること。食べられる食物を探してもらうのだ、これには長生きで尚且つ森での生活が長いエルフが適任。しかもセリィさんは活発で話しやすいのもポイントである。俺をドラゴン様と呼ぶけどそれ以外は友達感覚で話しかけてくれて嬉しい!

「出発! なんか見つけたら言ってね」

「お任せを!」

 俺達はそうして今日の採取に飛び立った。

「ドラゴン様、あそこの沼良さそうです」

 背中に乗るセリィの指差す場所は森の外れにある沼だ。そういえばこっちの方は全然来てなかったし新しい食材に巡り合えるかも!

「わかった!」

 俺達は沼の畔に着陸、セリィを降ろし籠を置く。早速探索開始であるが今回はそれだけではないのだ、蜘蛛さんズお手製の投網! コボルト達のお陰で鉛も手に入ったので端に結び付けて作ってみた。とりあえず実験と人間モードで沼に向かってぶん投げてみる。網は見事に広がって沼の中に沈んでいった。こういう沼にはナマズやブラックバスみたいな生命力が強い魚が居そうと期待している、前の世界の日本では厄介な外来種だったが確か列記とした食用のはずだし繁殖量産できれば食糧自給も安定すると思う。期待してるから何かはいれぇ!

「おもっ!?」

 投げた網をゆっくりと手繰り寄せると次第に重さを感じてくるし時よりビクッと動いている。間違いなく何か入ってる!! 何が入ってるか楽しみに網を引き揚げた、すると中にはバスっぽい魚とナマズが数匹絡まってビチビチ言っていた。予想通りで嬉しかったけど、やっぱりデカい。地球だと大騒ぎになるレベルの巨大さだと思う。予め持ってきていた貯水槽に沼の水を張って網から魚を外してそこに投げ込んでいく、死んだら今日のご飯で生きてたら溜池で繁殖実験。もう何匹か欲しいなと思って数回網をぶん投げるのであった。

「ドラゴン様、これ見てください」

 魚をぶん投げてるとセリィが何かを持って戻ってきた。めっちゃ太い竹みたいな感じだけど違う、あれは確か……

「甘枝です、これをこうして齧ると甘い汁が出てきて美味しいんです!」

 彼女はその竹みたいな植物の一部を切りつけ中の繊維みたいなものを取り出して齧っていた。試しに俺も同じようにして齧ってみたが間違いない、これはサトウキビだ! しかもめっちゃ甘いしデカい。

「これ、繁殖できたらよさそうだね、いくらか持って帰ろう」

「確かこの植物は地面にこの節あたりでいくつかに切って置いておけば根を生やして育つはずです」

 流石エルフ、森に生きてるだけあって植物にも詳しい! そしてもう一つ、あらかじめ動画を見て調べてセリィにも説明して探していた植物をもう一つ発見できた。アブラナである! これまたデカい。これがあれば植物性の油が種から入手できる、つまり揚げ物ができるようになるのだ!(抽出方法は後で調べよう)

「サトウキビ、アブラナ、魚も大量! 大収穫だ、セリィもありがと!」

「ドラゴン様、あともう一つよろしいですか? 少し離れた場所にあったのですが……」

 なんだろうと思いながら魚とサトウキビとアブラナを取れるだけ取って籠に突っ込んだらドラゴンモードになってセリィについて行く。

「これなんですけど……」

 セリィが指差したのは一本の木でありまだ緑色だが何か実を付けている。あれは、柿だ! 渋か甘かわからないけど柿だと思う!!

「熟したら食べれそうじゃないですか?」

「だね、持って帰ろう!」

「ドラゴン様、どうやって?」

 背中に乗るセリィはもうまんぱんの籠を見て首を傾げている。

「こうやって!」

 俺は地面を掘り起こし実のなる柿の木を文字通り根っこごと引き抜いた。いつも雑に木を引っこ抜くが今回は実のなる木、慎重に綺麗に抜いてみたのだ。

「流石ドラゴン様!」

 セリィは木ごと持ち帰るなんて思ってなかったらしく驚いている。ここに来てから皆やることにいちいち驚いてくれて面白い。

「じゃあ帰ろうか」

「はい!」

 木一本に籠いっぱいの食材。今日も大量に収穫に満足しながらお家に帰るのであった。

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