第78話
今日は朝早くから準備をして家から飛び立った。もうすっかり暑くなり夏に突入してしまったわけだが、前々から約束していた港町への買い付けのようなものだ。
「ご主人様、その港町って結構距離があるんですよね?」
「あぁ、うちの森を囲む山脈を超えるのもあるけど更に山を越えていく感じだね」
「タカト、東方港町睦だよムツずっと港町って言ってたし名前忘れてたでしょ」
「ははは、そう睦! ここら辺でただ一つの港町らしいし?」
確かにいろいろ教えてもらったけど酔っぱらってたからなぁ……あそこのお酒は度数が高いみたいでだいぶ酔ってた。
「すごいです、主様に乗せてもらったのは初めてですけどすごくわくわくします!」
「結構速度だしてるしアイナ、気を付けてね? 落ちたら危ないしね」
「大丈夫です今回は私が居ますから落ちても拾って差し上げますよ」
「がはは! それは安心だな!」
「ガレオンさんは重そうなので絶対落ちないでくださいね!」
「むぅ」
「主様、わがまま言ってしまって申し訳ございません。連れてきていただき感謝しております」
「いいさ、せっかくの港まで行ける機会だ。それに家族の願いは叶えるべきだし背中を押してやるべきだと思うよ」
「主様……」
「私も居ますからね!」
今回のメンバーは俺、アズハ、ルーフェ、ガレオン、アイナにサラそしてスーラだ。マリーも連れて行こうと思ったのだがやっぱ人が多いとこは苦手と断られてしまった。
「薬草や東方の薬、交易も盛んらしいから珍しい物は遠慮なく手に入れちゃおう。皆もね!」
「おぅ!」
「はい!」
「今回の見積もりだと何でも買えちゃうくらいには稼げる予定だしね。だから遠慮は無用! 思う存分我が家の繁栄の為に各々の知識を全力で振るってくれ!」
「前より大世帯になっちゃいましたけどね」
アイナは約束してたしアズハは嫁だしルーフェは連れて行かないと拗ねる。ガレオンとスーラはその知識を更に深めて家を更に豊かにして欲しい、サラを連れてきたのは申し訳ないが荷物運びのお手伝いだ。ケンタウロスのパワーとその体系のお陰で大荷物を運ぶことができる、単独行動の多くなるだろうガレオンとスーラの手助けをしてもらうのが狙いだったりする。もちろん後でお礼もするつもり!
「ご主人様、突然行ってしまってよろしいんですか? 仮にも世界を蹴り飛ばす大魔竜様が襲来したらパニックですよ?」
「元々行くと伝えてあるし。港に俺専用の着陸エリアも作ってくれるらしいから問題ないでしょ、一目でわかるようにしておくって行ってたし~」
てか世界を蹴り飛ばす大魔竜ってなんやねん! 確かに二国ほどお城蹴り飛ばしたけど……
「ご主人様って結構有名なんですよ? 黒き守護竜の歌、国を変えた革命竜の歌、戦神ヴリトラの歌などなど」
「え? まって? 初耳なんだけど?」
「吟遊詩人が歌ってますよ。特に王都郊外の村などですごく人気がありますね」
「ちなみに私やガレオンもヴリトラ賛歌を聞いてあの町に行きました、ちなみに賛歌も有名ですけど同じくらいその恐怖を象徴した歌も有名ですね。平民の間ではどれも大人気でしたね」
俺、この世界に来て三年目の新参者なんだけどなぁ……ちょっとやりたい放題し過ぎた? まぁやらなきゃ後悔するだろうしその結果というならしょうがないかぁ。そういえば山の村でも歓迎ムードだったもんなぁ。
「まぁ、気が向いたら聞いてみるよ」
そうしてしばらく飛んでいくと港町睦が見えてきた、一応来たことを示すために町の上空を旋回して様子を窺う。すると港の方に明らかにここに降りてくださいという雰囲気の大きな的のような絵が描かれた広場が作られていた。しかもそのあたりに人が集まってきているし、そこに降りろということなんだろうなぁ。
「降りるよ、しっかり掴まってて」
「はい!」
「うん!」
ヘリポートならぬドラゴンポートへ着陸すると沢山の人達がお出迎えしてくれていた。
「リョウゾウのおっちゃん元気そうだね」
「これはヴリトラ殿、よくいらっしゃいました! 約束通り我が港は息を吹き返しましたぞ!」
確かに漁船がたくさん出入りしているし明らかにデカい豪華な船もいくつか見えている。漁業以外にも貿易も盛んなんだったけかな? 珍しい物に期待できそうだ。
「おっちゃん、今日はこっちも商品も持ってきた。よかったら見てくれるかい?」
「商品ですか、どのような物でしょうか?」
「アイナ、お願い」
「はい、今回お持ちした品物ですがこちらになります」
アイナはコンテナから先端が漆黒の銛をリョウゾウに渡した。
「これは……一目でわかる。こいつならどんな獲物も貫ける自信がある……ヴリトラ様、これはいったい?」
「漁業が盛んな町と聞いていたからな俺の鱗を混ぜ込んだ金属を加工した銛を作らせていただいた。気に入っていただけたかな?」
「えぇ、これがあれば俺達はどんな大物だって捕ってみせるぜ」
「試作品ではあるが五十本ほど用意がある。買う?」
「是非に、ですが他の物も見せていただきたいのですが」
流石領主という感じかな? 持ってきた物がこれだけではないことにすぐに気づいた。目くばせを送るとアイナとサラ、アズハが品物を次々と並べて行ってくれた。
「アラクネの編んだ大網、銛と同じ素材を使ったナイフ、そして補修やそちらでも作りたい物ができるだろうということで鱗を混ぜた金属インゴット、そうだな、仮称だがヴリトラメタルで行こうか。ヴリトラメタルにアラクネの糸束漁業に役立つであろう物を提供しようと思っている」
「正直喉から手が出る程の品物、ですが値段が張るのではないですかな?」
すごく欲しいという意思は感じる。周りでこの話を聞いてる人達の中にも物凄く欲しそうな顔をしている奴らがちらほら見えている。名乗り出ないのは俺の姿にビビってるからだろうけどね。
「今回、俺達はここの特産品や独自の食品や薬品を見に来ている。ここでの買い物を融通して欲しい。それでも足りないと感じたらその分だけ金銭としていただく、これでいかがかな?」
「正気ですか?」
まぁそう言うよね、これは早い話がこれをやるからここでいろいろ見せてあわよくば技術などを見せて欲しいということなのだ。普通なら断るような意味不明な無茶だが、この商品は通常まず手に入らない素材や道具しかも竜の鱗が使われている国が騒ぐような一品だ、取引の天秤を考えても破格の提供と言ってもいいと思う。ドラゴンや最上級の魔物や獣人の素材、国家規模の希少品らしいから全力で利用させてもらおう。
「まったく、貴方様は人が悪い、いえ悪いドラゴンというべきですかな……是非その条件でこちらの商品すべてを買わせていただきます。代わりにヴリトラ様ご一党のこの町で使う金銭を全て建て替えさせていただきます」
「さすがおっちゃん、話の分かる人は好ましいよ。是非これからも仲良くして欲しいものだね」
「それはこっちのセリフだ。歓迎いたしますヴリトラ殿!」
そして俺達は睦で好き放題できる権利を手に入れてしまった。もちろんルールは守るし迷惑も極力かけないのは大前提、元地球、日本の社会人ですそこら辺はわきまえておりますとも。言わないけどね!
「ガレオン、スーラ。この者達が食事と薬学についての知識を求めている、協力してもらってもいいかい?」
「それなら俺の側近を貸しますので連れて行ってください様々な便宜が図れるかと」
「感謝する」
そして側近と顔合わせを終わらせた二人すっ飛ぶように街に消えて行った。すごいスピードだった……まぁ俺達も貿易品や良さそうな物を見て回りながら楽しませてもらおうかな。




