第74話
「で、お前さんはあの厄介者を本当に排除できるのか?」
漁師のおっちゃんは俺達を港を仕切る親方的な人の居る場所へと案内してくれた。俺達は今取引をしているのだ。
「報酬次第だけどね」
「見たところお前さん達は冒険者だろ? ギルドに討伐依頼を出している。それを受ければいいじゃないか」
「おっさんは、普通の冒険者にあんな化け物が本当に倒せると思ってるの? それとも勇者みたいな奴らが退治に来てくれると?」
「リョウゾウだ、おっさんじゃない……」
リョウゾウと名乗ったおっさんはそれだけ言うと黙ってしまった。ギルドに依頼を出している、だが誰も受けないのはわかっているようなものだ。冒険者は確かに一般人より戦いになれているし兵士などより遥かに強くなる者も出てくる。しかしどうしても限界はあるしああいう巨大生物となると大規模な討伐軍の編成など大騒ぎになるのだ。まぁ、それでも倒せない、移動させるのがやっとなど魔法があってもどうしようもないし被害もすごいですのだ。
「そこで相談なんですよ。報酬次第で俺があのタコを捌いてこの問題を解決してあげる」
「冒険者のお前さんに、本当にそんなことができるのか?」
まぁ、科学技術が発達している現代地球の怪獣映画を見ても想像できると思うけどああいう巨大生物は戦車や戦闘機があっても被害が出る、どんな条件でも理不尽な存在なのだ。
「冒険者の俺には無理だ、だからこうして直接話に来てるんだよ」
そう、冒険者としての、凡人のフリをしている俺にはあんなデカ物相手にできるわけがない。まぁ皆はこの意味を察して笑っていたが、リョウゾウ達は困惑していた。ちょっと言葉遊びが過ぎたかな?
「何が目的だ?」
「海鮮物、魚やエビ、カニはもちろん昆布や寒天、わかめなどの海藻を分けて欲しいのと今後も格安で取引して欲しいということ」
「それでいいのか?」
ホントにそれでいいのか? という顔をされた、正直家族として暮らしている俺達にとって金銭とか財宝、武器とか渡されても扱いに困る。
「あとは醤油と味噌がたくさん欲しいかな」
「それなら俺らで手配できる、問題ない」
「親方はこの町の領主でもあるからな」
最初にいろいろ教えてくれたおっちゃんが話してくれた。てか、領主なのに漁師なのね……
「今は漁業以外に影響は出ていないが、いずれ限界が来る。むしろもうギリギリだ……どうにか商業区や一般の民に影響が出ないようにはしていたが主流の漁業が潰されてはもう……」
「つまり?」
「あれをどうにかしてくれるなら何でもする……本当に倒せるならどうかっどうか頼む、助けてくれ!」
リョウゾウは頭を下げてきた。ホントに限界が近いんだろうなぁ、こっちもいい隣人になってくれそうだし文句はない。
「なら、決まりだ。早速はじめようか」
「そんなに、簡単に?」
驚いてるなぁ、まぁ無理もないかな?
「アズハ、悪いんだけど細かい取引は任せていい?」
「うん、トトちゃんとサラさんも手伝ってくださいね」
「勿論です!」
「がんばります!」
そうして俺達は改めて港にやってきた。こっちを舐めてるのだろうか? あのタコは我が物顔で近海を泳いでいる、海上に姿を見せて警戒するそぶりもない。今から狩られるなんて思いもしないんだろうね、笑っちゃう。
「なんだなんだ?」
「あのタコを狩るんだってよ!」
「ホントにそんなことできるのかよ!?」
なんだかんだ漁師達が集まってきてしまった。まぁ仕事ができなくて暇だったんだろうなぁ、すごい数だ。
「じゃあ行こうか、ちょっと待っててね」
「お前、一人で行くのか?」
「勿論、家族を危ない目にあわせるわけないでしょ?」
「でもお前、冒険者の一党なんだよな?」
「そう見えるようにしてたのは確かだけど……」
俺はそう言いかけたところで変身! ドラゴンモードへと姿を変えた。
「な、なんだ!?」
「黒い、竜!?」
「……」
姿を見た漁師はほぼ全員が驚いたり唖然としたり腰を抜かしたりと想像通りの反応をしてくれた。
「言っただろ? 冒険者としての俺じゃ倒せないと、行ってくる」
そう言って俺は飛び立つ。さぁドラゴンVS巨大タコ、怪獣大決戦と行こうじゃないか!
「あれは、いったい……」
「ヴリトラ様って聞いたこと無いですか?」
「あぁ、いろいろ噂は聞いてたが、まさかっ!?」
「彼がヴリトラ、私の旦那様です」
アズハの笑顔にリョウゾウ達はすごく面白い顔をしていた。
「さぁてと、火はまだ使い時じゃないよな。肉弾戦といきますかね!」
俺は上空からタコ目掛けて思い切り急降下し踏みつけた。この体格だと割と浅い場所まで出てきていたから水中戦になるほどではなさそうな感じだ。
「驚いてるねぇ、でも待ってあげないよ」
俺は爪と牙を駆使してタコの足を一本、また一本と切り落とし投げ飛ばしていく。混乱してジタバタしているうちに戦力を削ぎ落してしまおう。
「ビタビタ気持ち悪い!」
流石に状況を理解したらしく足を絡めて応戦し始めてくる。伸縮性が高いから格闘戦はめんどくさい!
「ウィンディエッジ!」
爪に風の刃を纏わせる魔法で足を切断しながら本体も斬りつけていく。やっぱこういう敵は切り刻むのが一番手っ取り早い。
「キシュァァァ!!!!」
悲鳴のような雄叫びをあげてタコが飛び掛かり絡みついてくる。しかしこっちには魔法がある! イメージは俺の体に纏う風の刃!
「リアクティブウィンド!」
絡みつこうとした足がズバズバと切り落とされていく。めっちゃ気持ちいい切れ方で楽しくなってきちゃう。
「そろそろ終わりにしようかな、いい暇つぶしだったよ」
俺はズタズタに傷ついたタコを掴んで上空へと飛び上がり、更に高く放り投げた。怪獣映画といえば仕上げはやっぱり大技のブレスだよね!
「吹き飛べ! バスターストリーム!!」
俺はタコ目掛け、大量の魔力を注ぎ込み大規模風属性ブレスを浴びせる。タコはその威力に耐え切れず肉片をばら撒きながら爆散した、前にマンティコアに撃った時より大量に魔力を注ぎ込み威力を大幅にあげてみたが。ちょっとやり過ぎたかな? まぁ俺の好きな怪獣映画なら最高のクライマックスだったでしょう!
「あの足、食えるかな?」
俺は引き千切って投げ捨てていた海に浮かぶタコの巨大な足を眺めながらふと思ってしまった。まぁ詳しくは領主様とお話してからかな。俺はそう考えながら港で今の光景を眺めていたアズハ達の元へと帰っていくのであった。




