第73話
しばらく飛んで行き、山を一つ越えると青く広がる海が見えてきた。すごく綺麗だ、てか東の方は山脈が結構多いらしく移動が大変そうだ。空が飛べて良かった……飛べなかったら海に着くまで何カ月かかるんだろう? てかあの村の人よくこっちに海があるって知ってたよね、結構遠いよ?
「タカト、今回は近くに降りて人の姿で行かない? 結構大きい町だし大騒ぎになっちゃうかも」
「そうだね、じゃあ近くの森に箱を降ろして冒険者風で行こうか」
「うん」
確かに毎回ドラゴンの姿で飛来してたらその気が無くても敵対されてしまうかもしれない、無駄なリスクは避けるべきだよね。
「一応誰でも冒険者セット持ってきておいてよかった」
「ガンプさん達いろいろ作ってくれたもんね」
一応遠出した時何があるかわからないということで、このコンテナに冒険者っぽく見せるための装備などが積まれているのだ。まぁそれでも今回は人間二人にケンタウロス、ウェアキャットのちょっと変わったパーティではあるのだけど。
「荷物運びならお任せください!」
「女の子にあんま持たせるのも申し訳ないんだけどね」
「そんな、照れてしまいます!」
サラはなんだか嬉しそうにクネクネしている。実際馬のパワーがあるサラは荷物を載せて運ぶのに最適ではあるんだけど、ちょっと複雑な気持ち。
「それじゃあ行こうか」
「はい!」
しばらく歩いていくと町の大門が見えてきた。思った以上に大きい町みたいだ。
「止まれ、お前たちは……冒険者か?」
「はい、四人で旅をしております」
この前冒険者登録しておいてよかった、登録票がこういう時に役に立ってくれる。
「珍しい編成だな」
「ははは、よく言われます」
「通行料は四人分で構わないぞ」
やっぱお金かかるのね……
「グルグナハの通貨で大丈夫ですか?」
「南から来たのか、大丈夫だ使えるぞ」
「ありがとうございます!」
通行料を払って俺達は町へと入って行く、正面は大通り。馬車や荷車が行きかう石造りの道が広がっていた。しばらく行くと商業区らしくいろんなものが売っていてちょっとわくわくする!
「お金に関しては余裕あるし欲しいのあったら買っちゃっていいよ」
「え、でも……」
「悪いですよ……」
トトもサラも遠慮している。
「こういう時くらいしかお金使わないし大丈夫だよ」
「それに買い付けのお手伝いしてくれてるんだから問題ないよ」
「でしたらお言葉に甘えて!」
「やったー!」
さっきの遠慮はどこえやら、出店に興味津々という感じで目をキラキラさせている。こういう姿が見れるのは嬉しいなぁ。
「主様、これ美味しいですよ!」
トトが何かを持ってやってきた。餅のような物に茶色の何かを塗って焼いた美味しそうないい匂いをしている、というかこの匂いを俺は知っている……トトに渡された餅串を一口頬張る。この味は間違いない、味噌だ!! こんなところにあったぁ!
「味噌だ、東の方では使われてたんだ……」
くそぅ、知っていればファウに無茶言って研究させなくて済んだのに……味噌があるということは多分醤油もあるよな、海鮮も欲しかったけどこっちも入手せねば。お手本があればファウは絶対に量産してくれる! そこは彼女の力を信頼しているし問題ない!
「これが作りたかった調味料の一つだよ」
「そうだったんですね、美味しいです!」
「これがあればいろいろ作れるよ、是非手に入れたいね」
「はい!」
しばらく可愛いアクセサリーと買ったり美味しそうな食べ物を買い食いしたりと四人でたくさん楽しんだ。収穫としてはいろいろあるけどやっぱ味噌がデカい! 聞くと専門の店があるらしいからそこで買い付けようと思う。醤油に関しては海の幸と相性がいいということで港の方に出回っているらしい。行動方針は決まった、後は動くのみ!
「港、だよね?」
「そのはずですけど……」
港の方へとやってきたのはいいがさっきまでの賑わいはどこへ行ったのか、寂れた町のように人が居ない。というか空気が重い……
「あのぉ……」
「なんじゃ嬢ちゃん?」
「ここは漁が盛んって聞いてたんですけど……」
アズハが近くに居た網を直している漁師の男性に話しかけていた。漁具を直してる辺り間違いなく漁師だと思うんだけど、活気が全くない。思っていた漁師のイメージと全然違う。
「あぁ、だが今は……無理だな」
「どうかしたんですか?」
「港付近に、帝王ダコが現れちまってな。漁に出れなくなっちまったんだ……町の方は取引や交流で問題ないが俺達漁業を生業にしてる奴らにゃ致命傷だ……」
帝王ダコ? タコだろうけどそんなにヤバい奴なのかな?
「帝王ダコって?」
「船を簡単にへし折る大ダコだ、あいつが港付近に住みついたせいで俺達は海に出れねぇ……」
どのくらいデカいんだろ? 船が壊されるってことは相当デカいのかな?
「ほら、出て来たぜ」
漁師の男が海の方を見る、その方向を一緒に見ると海面ににゅっと触手と頭が現れて周囲を物色しているようだった。てか、マジでデカいわ……あれは海に出れない。
「想像以上にデカいですね」
「だろ、あんな奴ここら辺にゃ居なかったんだがなぁ……」
「討伐は出来ないの?」
「無理だな、一応ギルドに依頼も出したがあんなの倒せる冒険者なんざそうそういねぇし兵士も足りねぇ。お手上げだ……」
「なるほど……」
「主様?」
「なぁおっちゃん」
「なんだ?」
「ここの代表と話しできる?」
「あのタコのせいでこっちは何もできねぇ、暇してるし会えると思うぜ?」
「じゃあ、合わせてくれない?」
「何する気だ?」
これはチャンスだと思う。上手くいけばそうとうな利益が出るし恩も売れる、俺はニヤッと笑みを浮かべて更に語る。
「条件次第だけど、俺があのタコ捌いてあげる」




